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第199話 両親

「ご無沙汰しています」

翔太は、柊翔太の父と母に挨拶をした。


仙台のロケ地では撮影が始まっており、翔太の仕事はなかったため、柊翔太の実家に来ていた。


「蒼から近況は聞いているけど、元気でやっているの?」

昌子は心配そうに翔太に尋ねた。


「はい、仕事は多忙ですが、充実しています」


翔太は昨日ではなく、今日訪れてよかったと感じた。

昨日の疲労困憊した状況では、目の前の二人を心配させることになっていただろう。


「今日は泊まっていかないの?」

「はい、映画の制作会社が手配しているホテルに宿泊しています」

「ああ、仙台(こっち)でも話題になっているよ」


蒼も関わっていることもあり、翔平は映画についてよく知っているようだ。


「その……前の仕事を辞めたのは、何か問題があったのか?」

翔平は気遣うような表情で翔太に尋ねた。


「いえ、小さな会社ですが、今のほうがやり甲斐を感じているからです」


翔太の発言に、翔平と昌子はほっと胸をなでおろしていた。

アクシススタッフを辞める際に問題がなかったわけではなかったが、転職した理由自体は前向きなものだった。

翔太は両親に心配をかけない言い方を心掛けた。


「とにかく、家に来てくれて嬉しいわ」

昌子は急須でお茶を注ぎながら、微笑んでいた。


「就職してから、翔太はちっとも家に寄り付かなかったからなあ」

翔平はお茶をちびちびと飲みながら言った。


「その……仕事が忙しくて」


翔太の発言は半分は本音だが、残りの半分は柊翔太の両親にどう接すればよいかわからなかったためだった。

翔太の言動が、あまりにも柊翔太と食い違いが出た場合、不審に思われることを避けたかった。


柊翔太の姉である蒼とは、手探りながらもコミュニケーションを取ってきた。

蒼からは、「その敬語はなんとかならないの?」と言われていたが、()で接してしまうと別人であることが際立ちそうに思え、できるだけ丁寧に接した。

それでも、蒼とは仕事でつながりができたため、打ち解けられるようになってきた。


(それに……この二人は記憶を思い出してほしくないフシがあるように見えるんだよな……)

仮に柊翔太が思い出したくもないような記憶を抱えていた場合、それを想起させるような言動をしないほうがよいと考えていた。

翔太の勝手な想像であるが、柊家にとって柊翔太の記憶がアンタッチャブルな領域であるという空気を感じ取っていた。


翔太はこれまで、このデリケートな領域には触れずにいた。

しかし、今後のことを考えると、柊翔太が抱えているリスクを把握しておくことが必要であるように思えてきた。

多少、気まずい思いをしながらも、今ここで両親と対峙してるのは、これに踏み込むためであった。


「あの、私が知らない過去のことをお伺いしたいのですが」

翔平と昌子が僅かながらもぴくりと反応した。

できるだけ、感情を表に出さないように気をつけていることが感じ取れる。


これから切り出すことは、柊家にとって思い出したくない過去を掘り返すことになるかもしれない。

または、全くの見当外れであるかもしれない、むしろ、そのほうが懸念が一つ減ることになる。


「過去の私は、芸能界に関わっていませんでしたか?」

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