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第198話 朝チュン?

「何事!?」


目を覚ました翔太は自分が置かれている状況がまったくわからなかった。

ベッドに寝ている翔太に何者かが密着しており、顔が近すぎて相手が識別できなかった。


(えっと……昨晩は……うええぇっ!!)


記憶を手繰り寄せた翔太は、ようやく極至近距離にいる人物に心当たりがついた。


「梨花さん?」


翔太は神代から距離を取ろうと試みたが、神代は腕で翔太を完全にロックしていた。

柔道の心得がある翔太は寝技から逃れる要領で抜けるつもりであったが、この場合、彼女の色々なところに当たってしまうため、非常によろしくない状況だ。

神代から感じる柔らかさと、漂ってくる匂いが翔太の思考力を奪っていた。


「え、えっと……」


翔太は自分がやましいことをしていないか、必死に思い出した。

(たしか、梨花さんに押し倒されたけど、疲れて寝てしまって……)


衣服の乱れもないことから、一見すると翔太からは何かをした形跡もなければ、神代から何かをされた形跡もなかった。


(だ、大丈夫だ……この作品に「R18」のセルフレイティングは付いていないはずだ……)


「梨花さん、起きて」


身動きができない翔太は、神代が自主的に起きてもらう以外の選択肢はなかった。

翔太の主観では被害者であるが、自分が動いた途端に加害者に反転する危険性を孕んでいる。


「あ、あれ? ……」


神代は数多のファンが誰一人として見ることのできないであろう、愛くるしい仕草をしながら、その黒曜石の瞳に翔太の顔を映し出した。


「おはよ」

翔太の挨拶に、神代は目をぱちくりとしばたたいた。


「あ……あっ……ああああっ!!」

湯気でも出そうなくらいに真っ赤になった神代は、翔太のもとを飛び退き、正座した。


「ご、ごごごごごご……ごめんなさい、私……」

「えっと、疲れて寝ちゃったってことでいいかな?」

「う、うん、それで合っている」


神代は水飲み鳥のように、首をカックンカックンと上下に動かしている。

(はぁー、よかったぁ……)

翔太は最悪の事態は避けられたようで、安堵した。


「あの、私が悪いのは重々承知なんだけど、何かしたりされたりは?」

「完全にロックされていたからね。少なくとも俺の意識がある間は何もできなかったよ」

「そっか……私、寝るときに抱きグセがあるほうではなかったんだけど……」

「この状況になった原因は俺にはわからないけど、お互い様ってことで手打ちにしない?」


神代に悪意がないことはわかっているため、翔太はお互いの妥協点として、これ以上掘り下げないということにした。


「う、うん、そうしてくれると」


神代はほっとしたような表情を見せたため、これで正解なのだろうと翔太は判断した。


「さすがにお泊まりの許可は橘さんからはもらっていないよね?」

「そ、そうね……」


神代がこの部屋から無事に脱出するためのミッションが始まった。

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