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第197話 同衾

「それで、飯盛教授はその話を信じてくれたの?」

神代は翔太に詰め寄るように顔を近づけて尋ねてきた。

(ち、近い……)


仙台のホテルの一室で、神代は翔太の部屋を訪ねていた。

本格的な撮影は明日からで、今日は撮影所の下見や脚本の調整などが行われた。

撮影の最終日には慰労会が行われるため、映画関係者は同じホテルに宿泊しており、それぞれ個室で宿泊している。


「あ、あの……イマサラなんだけど、マズイんじゃ?」


翔太は自分の部屋に神代と二人きりでいることに危機感を感じていた。

(いゃ、貞操がどうとかじゃなくて、スキャンダル的な意味なんだけど……)


翔太は自分が原因で神代のキャリアに傷がつくことを恐れていた。


「なんで? 誰にも見つかっていないよ?」

神代は平然と言ってのけた。


「いゃ、危ないと思わないの?」

「何が?」

「わかってて聞いているだろ……若い女性が男と二人で云云かんぬんだよ」

「ここにいるのが、柊さん以外の男性なら危ないと思うし、私も近寄ったりしないし」

「信用していただいてなによりだよ……」


神代が迂闊なことをするとは思えないが、今の状況を除けばである。


「それとも、何かしてくれるの?」

(ぐはっ!)


神代は挑戦的な目つきで翔太を見つめてきた。

演技とわかってはいるものの、相手は超一流の演技ができる女優だ。

ころっと騙されても文句は言われないだろう。


「橘さんの許可は取ったの?」

「『見つからないようにしなさいよ』って」

「うそん……」


橘に信用されたことに関しては喜ばしいが、何をどこまで信用されているかは不明だ。


「だってー……柊さんのことが心配だったんだもん」

「そんなに顔に出てた?」


ここ一週間の翔太は激務の連続であったが、表情には出さないように気をつけていたつもりだった。


「私にはわかるの! 特に柊さんのことは!」


神代は職業上、人間観察が得意だ。

彼女の前で取り繕うことは相当難易度が高いだろう。


「ちょっと横になったほうがいいんじゃない? ほらっ」

「ちょっ!」


神代は翔太をいとも簡単にベッドに押し倒した。

傷害事件をきっかけに、グレイスビルにあるジムで体を鍛え始めた翔太であったが、神代の腕力はその上をいっていた。

(この柔らかい体の一体どこに……ん? 柔らかい?)


「「……」」


神代の艷やかな髪が翔太の頬や首筋をくすぐり、彼女から漂ってくるいい匂いが翔太の理性をゴリゴリに削った。


「私、飲み物取ってくるね」

顔を赤くした神代はさっと翔太の元を離れていった。


***


「――ありゃ、柊さん寝ちゃった?」

神代は柊の頬を人差し指でつんつんと突き刺した。


「本当に寝ているね……布団かけないと風邪引いちゃうよ?」

神代はそう言いながら、柊に布団をかける手を途中で止め、逡巡した。


「……ちょっとだけ……ちょっとだけだから……」

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 ちょっとだけ、は……大抵「ちょっと」では済まない。
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