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第194話 見知らぬ、母校

「「最初はグー!」」

東北自動車道のサービスエリアで、神代と美園は再びじゃんけんをしていた。


「しゃあ!」「ぐぬぬ……」

どうやら美園が勝利したようだ。

(何もそんなに喜ばんでも……)


***


「コラボ企画に協力してもらってありがとう」

橘の運転する車中で、翔太は美園に改めて礼を言った。


元はと言えば、石動が映画にダンスを入れてほしいと頼まれたことがきっかけだった。

当然のことながら、作中に踊るシーンは存在しないため、どこに入れるかを検討した結果、エンディングにダンスを入れることになった。


翔太は「インド映画みたいですね」と、作風に影響が出る可能性があることをやんわりと指摘したつもりだった。

監督の風間は「ダイナミックな演出が入ったことでギャップが生まれ、観客を驚かせるんだよ」と、翔太にはよくわからない表現で熱弁していた。

翔太は演出に関しては素人であるため、風間の判断に従うしかなかった。


「効果はあったの?」

「おかげさまで、すごい再生数なんだよ」


『沢木のダンス教室』は映画『ユニコーン』のコラボレーションで実現された講座だ。

映画のエンディングで披露されるダンスを踊るために、美園が講師となり、生徒役として神代が出演している。

(踊ってみた動画が流行っていた時代なら、すごいことになっていただろうな……)


「特に、二人が入れ替わるタイミングが繰り返し再生されているみたい」

「そんなことまでわかるの!?」

「特に長い動画だと、視聴している人がどこで離脱したかを分析するのが大事なんだ」

「へぇ、中の人は大変なのね……私も業界をかじったつもりだったけど、まだまだね」


美園はしきりに感心していた。


「美園さんは映画が終わったら、IT業界から離れるの?」


神代ほどではないにせよ、美園もサイバーバトルに挑戦するなど、役作りのためにIT業界の知識を深めていた。

翔太はこの映画のためだけに、技術的なことを学ぶのはもったいないと思えた。

(とは言え、役者が役作りのためにやったことを全部活かすことは無理だろうな……)


翔太の知る限りでは、神代は役作りのためにピアノを演奏したりしていた。

次の役では、前の役作りで身に付けたことが役に立つことはほとんどないであろう。

IT業界で学んだことはほかでも応用が効いたり、問題可決能力が上がったりするため、この業界では学習意欲が高い者が多い。

翔太は役者という職業は、努力に対して見返りが得難いと感じた。


「プライベートでは続けていきたいわね。何かないかしら?」

「動画配信サービスが本格的に始まったら、動画編集技術を身に付けておくのはよいかもね」

「それって、いつ頃から始まるの?」

「うーん……」


翔太は動画配信を普及させるために、通信インフラを整備する施策を考え始めた。

(場合によっては、政治的に働きかける必要があるかもしれないな……)


***


飯盛(いいもり)先生、ご無沙汰しています」

東北先端科学大学に到着し、翔太は自分の恩師に挨拶した。


「柊くん、立派になったね」

飯盛は破顔しながら、翔太と握手した。


(さて、()()()()()()にどう立ち回るか……)

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