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第190話 観藤会3

「失礼、ちょっと席を外させてもらう」

そう言って、基人は離席した。


翔太の話を目を細めながら、一切口を挟まずに聞いていた尊人が口を開いた。


「ふむ、君の話は、まるで見てきたかのようだな」

(はい、見てきました)


石動も、翔太が言ったことをすでに経験していると理解しているはずだ。

したがって、石動の表情にも動揺した様子は一切なく、このことが翔太の話に信憑性をもたせていた。


「これが事実なら大変なことになりますね」

法善寺は神妙な顔でつぶやいた。


「柊くんが言う『ショック』とやらは、いつごろに起こると思っているかな?」

「数年以内には起こると思います」


詮人の問いに翔太は断言した。

金融危機の発端は、大手投資銀行グループが破綻したことがきっかけだ。

当時は石動景隆として投資を行っていたため、日付まで鮮明に記憶している。


「「……」」


料亭の個室に静寂が訪れた。

仮に、翔太の話が真実であった場合、白鳥グループのどのセグメントにおいても多大な影響をうけることになる。

企業のトップの立場からは無視できない状況だろう。


「大変失礼した」

基人が深刻な表情をしながら戻ってきた。


「柊くんが懸念していることを、最も優秀な部下に調べさせてみた」

(休日なのに、部下の人も大変だな……)


「彼はサブプライムローンの概要は把握していたが、柊くんが指摘していたリスクを私も指摘したところ、答えに窮していたよ」

「その部下というのは?」

法善寺はこの金融商品の仕組みが気になっているようだ。


「ああ、当行の中でも、金融工学のスペシャリストだ」

「そんな優秀な人員でもリスクを把握しきれていない金融商品がこれから売り出されていくんですね」


基人と法善寺の中では、翔太の話が真実に近いと感じ取っているようだ。


「すまない、柊くん、石動くん」

「はい?」「はぁ?」


基人が突然謝ったことに対して、二人は心当たりがまったくなかった。


「観藤会のゲストは白鳥グループにとって、重要な人物が招かれるんだ。

詮人が君たちを呼んだのは、綾華の恩人という理由だと思っていた」


翔太は基人の見解と同じであったため、彼が何を言わんとしているのか、今ひとつわからなかった。


「先程の君の話は、白鳥グループの今後の命運を分けると言っても過言ではない。

過去の観藤会のゲストの中でも、君たちは最も重要な部類に入るだろう」

「過大評価じゃないでしょうか。実際に起こるかどうかわかりませんし」


翔太は金融ショックが起こることは免れないと知っているが、基人にとっては不確実な情報だ。


「もちろん、これから情報は精査する。

そして、この話が真実性が高いと判断された場合、我々は最も重要な情報を得たことになる」


基人の発言に一同は頷いた。

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