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第183話 ドキュメンタリー

「ドキュメンタリー番組ですか」

グレイスビルの会議室で、翔太は企画書を眺めていた。


「ええ、元は映画のメイキング番組を企画していたようですが、これがスピンオフしてできた企画のようです」

会議室では橘が説明をしていた。


企画書のタイトルは『女優、IT業界への挑戦』と記載されていた。

橘の説明によると、昨今のIT業界内の神代の活躍を受けて、このような企画が立ち上がったとのことだった。

先日行われたWeb Tech Expoにも撮影が入っており、この番組に使われるようだ。


「内容的には神代さんへの取材ってことですかね」

翔太は業界の注目が高まるのは悪いことではないなと考えていた。


「――それが、企画書の後半部分をご覧ください」

「うげっ!」


半ば部外者を決め込んでいた翔太であったが、見逃せない情報が入っていた。


「対談があるんですか……」

「はい、梨花がこの業界に関わった企業としてこの二社の名前が上がっています」


企画書には、サイバーフュージョンと翔動の名前が記載されていた。


「上村社長は出演を承諾しています」

「早っ!」


上村が多忙であることは想像に難くないが、この番組に出演する意義があると考えているのだろう。

神代は縋るような目で翔太を眺めていた。


「上村さんが出てくるとなると、翔動(うち)は石動を出す必要がありますね」

「うーっ……私をこの業界に引っ張り上げたのは柊さんなのにぃ」


神代はがっかりしたような、不満そうな、どちらとも言えないような表情をしていた。


「柊さんが露出することはありませんので、ご安心ください」

「助かります」


橘はいつも翔太の味方になってくれることに、心から感謝していた。


「石動さんはいかがでしょうか?」


翔太と異なり、石動は身分を隠す理由はないはずだ。

橘の質問の意図は、石動がこのような番組に出ることについて、抵抗がないかを確認しているのだろう。

本来であれば石動本人に聞く内容であるが、翔太の過去の状況を振り返ることで、自ずと石動の心境が把握できる。


「ホント、こういうとき柊さんと石動さんは便利だよねぇ」

「たしかに便利なときもあるけど、嫌なときもあるよ」


翔太は過去の自分の恥ずかしい体験を思い出して悶えそうになることがあるが、石動を見ているとこれをリアルタイムで追体験させられるのだ。

石動は石動で翔太の反応がわかるため、お互いがダメージを負う結果となる。


翔太は石動になったつもりで思考した。

あまり乗り気ではないことが想定されるが、ビジネス上の観点からはふいにできない案件だ。

(今後もこのようなことがあるだろうから、慣れてもらう必要があるな)


「わかりました。石動を説得します」

翔太は石動(自分)を売ることにした。

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