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第18話 ブログ

「ブログって何ですか?」

神代の質問はもっともだ。

ブログはこの時代において、まだ知られていない。

SNSの概念が認知されるのは、もっと後になる。


おなじみになってきた、グレイスビルの一階の会議室で、翔太が神代に説明する。

同席している橘には予算の都合上、事前にある程度のことは説明済みだ。


「ブログとは、ウェブログの略で、日記などの記事をインターネット上に簡単に公開する仕組みです。

記事の内容は時事ネタや近況など、文章と画像で表現できる情報なら何でも構いません」


「へー、ホームページとは違うんですか?」

「キリプロさんにもウェブサイトがありますが、あれはソースコードを編集してサーバーにアップロードする手順が必要になります。

ある程度の専門的な知識がないと公開できませんが、ブログであれば、文章を書いてポチっとボタンを押せばウェブサイトを公開し、更新できる仕組みになっています。

海外では少し広まり始めていますが、国内でやっている人はほとんどいません」


翔太はさらにブログの仕組みについて、順序立てて説明した。

ブログを書く分には必要の無い知識だが、オーディション対策として専門知識を身につけるためである。

翔太が作成したプロトタイプのブログをプロジェクターに投影し、操作方法を説明する。


「へぇ、ケータイからも投稿できるんですね」

神代がブログに次々と記事を投稿している。相変わらず、飲み込みが早い。


「梨花さんにブログをやっていただく狙いは三つあります」

翔太によるプレゼンが始まった。


「一つ目は神代さんにインターネットに関連する知識を身に着けていただくことです。

CF社はインターネットプロバイダから始まった会社なので、この知識を身につけることが上村さんに対して有利に働くと思います。

ウェブサーバーをキリプロさんの経費で調達したので、梨花さんにはこのサーバーの運用をある程度やっていただきます」


橘は神代を見て頷いた。

予算の承認をしたのは橘なので、事前にある程度の情報を伝えているのだろう。


「二つ目は、オーディションで使うプレゼン内容として、このブログのシステム自体を売り込みます。

国内では先進性のあるサービスなので、上村さんがこれに食いつく可能性は高いと思います」

「あ、なるほど!一石二鳥ですね!」


「フィクションではなく、現実世界でCF社がこのサービスを採用することになれば、梨花さんの心象が良くなると期待できます。

仮に、オーディションで期待した結果にならなくとも、CMのオファーが来るかもしれません」


「CFは現在も急成長している会社なので、うちとしてもパイプは持っておきたいのよ」

橘が補足した。


「三つ目はリスクヘッジです」

「リスクヘッジ?」


「もし、オーディションがダメになった場合、私への報酬なども含めて、キリプロさんが投資した金額が無駄になってしまいます。

しかし、このブログをキリプロさんが広報活動の一環として使い続ければ無駄になりません」

「一石三鳥ですね!」


「芸能人が発信する情報は注目を集めやすいコンテンツなので、かなりアクセス数が稼げると思います」

「梨花だけでなく、当事務所に所属しているタレントにも活用してもらいます。

マスコミが発信する情報は、虚偽や歪曲も多いから、こちらから情報をコントロールできる利点も大きいのよ」

橘が補足した。


(さすがというか、なんというか)

翔太は未知のサービスに対して、橘がかなり理解していることに感心した。


「はあ、良く考えられたプランですねー」

神代は感心している。


「三つ目の目的は達成できると思っています。残りの二つは賭けの要素があります」

「私は負けるつもりは全くありませんよ。お二人がいれば無敵です」


神代から向けられる全幅の信頼で、翔太は胸が熱くなった。

(こんなに誰かのために頑張りたいと思ったのは初めてかもしれないな)

翔太は契約期間がオーディションまでなことを残念に思った。


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― 新着の感想 ―
なるほど。 最初に前置きで「この時代では」と強調して前置きしていたのと、「もっと荒唐無稽」と思考面で記載していたのは“逆行転生”を匂わせるための布石ですか…巧いですね。
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