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第160話 影響力

「そもそも柊さんは、誰のものでもありませんよ?」

諭すように言った橘に、神代は「あっ!」と言いつつ、顔を赤くした。


「橘さんは私が柊さんをほしいと思った理由がわかるんじゃないの?」

「そうですね……」


橘は顎に指を当てて考え込んでいた。

翔太は橘がその理由を推察できたと感じた。それは神代も同様であろう。


「神代さんは自分の演技に磨きがかかったように思わない?」

「それは……そうね」

神代は思い当たる節があるようだ。


「柊さんはまったく感じないの?」

「俺はそもそも、神代さんを知らなかったから」

「えええええええええぇっ!!」


雫石の声量に翔太の耳はキーンと鳴った。


「そんな……くまりーを……国民的女優のくまりーの存在を……しらなかったの?」

「俺はテレビを持っていないんだよ」

「テレビなんてどうでもいいわ! くまりーをしらないなんて、非国民よ!」

「お前、神代さんが絡むとIQがダダ下がりだな……」


普段の雫石は異常なくらいに大人びているため、翔太はこのくらいで丁度良いかもしれないと思い始めた。


「ふふっ。初対面で私のことを『かみしろさん』って言ったのよ」

神代はなぜか自分の宝物を扱うような表情で言った。


「死刑!」

「なんでだよ!」


この場にいる雫石は、撮影所にいるときより活き活きとしているように見えた。

(演技しなくていい時間が貴重なんだろうな……)


「それで、柊さんがいることが演技力の向上になると思い至ったのですか?」

「そうね」

「俺が神代さんに教えたのはIT関連の知識だけだぞ」

「プレゼンのコツとか、資金調達の知識とかも教わったよ?」

「ほらー!」

「いゃ、演技関係ないだろ……」


翔太には、雫石が導き出している推察が短絡的に思えた。


「それに、男の人がいたときのぎこちなさがなくなってきたの。私にはわかる!」

雫石の言葉に、橘が一瞬ピクッと反応しかけたが、すぐに平常時に戻った。


「神代さんが異性を苦手にしているのは聞いているけど、別に雫石は男嫌いとかじゃないんだろ?」

「正直、どうでもいい存在ね」

「男性ファンが減るぞ」

「そんな態度を私が表に出すわけないでしょ」

「たしかに」

「最近はどうでもいい……とも思わなくなってきたけど……やっぱなし!」

「むむむっ」


神代はやや不機嫌とも言えるような複雑な表情をしていた。

そして、雫石は突拍子もないことを言い放った。


「決めた! 私、霧島プロダクションに移籍する!」

「はあぁっ?」「ええええっ!?」


翔太は開いた口が塞がらなかった。

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