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第155話 ワンテイク

「オッケイ! これ以上ないくらい完璧だ」

風間の声がオペレーションルームに響き渡った。


「……」

撮影現場は一瞬、静寂に包まれた。


「「ったー」」

神代と美園はハイタッチした後、抱き合って喜んでいた。

本番時のイケメンモードから一変し、女子高生と思われてもおかしくないほどのはしゃぎようだった。


「パチパチパチパチパチパチ」

スタッフや、見学ルームにいる関係者や見学者らが一斉に拍手した。


「二人とも、よくがんばったな」

「はい!」「ありがとうございます!」


風間のねぎらいに、神代と美園は満面の笑顔だった。


***


「よかった! 本当に感動した!」

見学ルームで見守っていた加古川は感極まっていた。

さらに「これは社内でも宣伝しないとな」と言っている。

グループ会社も含めた従業員数を鑑みると、かなりの動員数が期待できそうだ。


「本当に信じられない……」

翔太の隣にいる少女は感動して泣いていた。

(コイツもこんな感情見せるんだな……まさか演技じゃないだろうな?)


「はぁあああーーー、無事に終わってよかったわぁ。翔太もおつかれさま」


蒼は安堵した表情で言った。

シーン125はプロモーションビデオで使う予定であり、この撮影が失敗したら広報活動に大きく影響が出る。

関係者の中で、蒼が一番心配していた人物だと言ってもいいだろう。


「テイク1で無事に終わってよかったですね」

「本当にどうなるかと思ったよ……神代さんたちの演技はどうだった?」

「俺は目の前のオペレーションでいっぱいいっぱいだったので……後でモニターで確認します」

「そっか、そうだよね」


翔太は二人の演技が生で観られなかったことを残念に思った。


「柊くん、おつかれさま」

「あ、山本さん、来ていたんですね。雪代さんも」

「プロモーションにも使われる大切なシーンだからね」

「撮影の環境ですが――」

「あぁ、わかっているよ。夢幻(うち)で保管しておいて、Web Tech Expoのブースで展示するよ。それに……」


山本はこう言いながら、少女を見た。


***


「美園、最高だったわ」

「はあぁーっ、緊張したわ」


美園は緊張の糸が切れたのか、マネージャーの川口に撓垂(しなだ)れ掛かっていた。

そして、目の前に現れた人物に驚いた。


「雅代さん……」


***


「柊さん!」

翔太を見つけた神代が駆け寄ってきた。


(あれ、マズいかも?)

神代は高揚した状態だ。

万が一にでも、衆目の前でスキンシップをとられでもしたらスキャンダルになる。

翔太が橘の姿を探していると――


「神代さん! 最高でした!」

少女がガバッと神代に抱きついた。


「雫石、ほどほどにしろよ」

翔太は内心でほっとしながらもその少女に向かって言った。


「ひかりちゃん?……どうしてここに?」

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