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第149話 分岐点

「で、どうするよ?」

マンスリーマンションの一室に戻ってきた石動は翔太に意見を求めた。


船井の提案はかなり魅力的であった。

翔動がエッジスフィアの資本を受け、傘下に入る提案であった。


「今回はお前が決めるんだ」

翔太の答えは決めていたが、今回は石動に判断を任せることにした。


「柊は答えが決まっているんだな」

「もちろんだ、でも俺の考えと反対の結論を出してもそれに従うぞ。お前の会社だからな」


石動は社長であると同時に筆頭株主だ。

経営に関して最終的な決定権を持っている。


「まずは現状を整理するぞ」

「おう」

「まずは資本だな。これからのビジネスで何をやるにしても金がいる。エクイティで調達できるのは大きな利点だ」


エクイティは株主資本を指す。返済義務と利息が発生しないため、デット(借入)による資金調達よりもリスクが少ない。


「しかも、上場を全面的に支援すると言われている。俺……お前も含めた個人で持っている資産が増えるのも大きい」


翔動の株式は石動と翔太で専有している。

上場時に持ち株を手放せば、不労働で余生を過ごすこともできる。所謂、アーリーリタイアだ。


「そして、経営難に陥ったときに、助けてくれる場合もあるだろう」


親会社が出資した企業に経営的な問題があれば、会社の資産が毀損する。

したがって、子会社は資本注入や業務提携などで救済される場合もある。


「以上を踏まえると、船井さんが提示してきた条件は破格と言える。ここまでの理解は合っているか?」

「あぁ、合っているぞ」


翔太の言葉で石動は安堵しているようだ。


「問題はエッジスフィアが将来性があるかどうかだ。別な言い方をすれば船井さんの経営手腕が重要だ。

ここがダメなら泥舟に乗ることになるからな」

「まぁ、そうだな」


「柊は、この先のエッジスフィアの行方を知っているんだろ?」

「あぁ、知っているぞ。今のところ、前の人生と大きな変化は見られない」

「それを知っているうえで、俺が判断しろということだな」

「そうだ」


翔太はエッジスフィアが大きな騒動を起こすことを知っているが、これを石動には共有していない。

また、このまま翔動のビジネスを進めると、エッジスフィアと競合する可能性もある。

石動はしばし考えた後、決断した。


「決めた! 断ることにする」


石動は意を決して言い放った。


「わかった」

「えらい、あっさりだな……」

「まぁ、予想はしていた」

「マジか……」


石動は張り詰めていた気持ちが途切れたのか、糸が切れたあやつり人形のようにくたっとなった。


「じゃあ、理由を聞いてやんよ」

「なんで上から目線なんだ……まぁいいか。

俺たちは世界を取りに行くんだ。誰かの下に付いているようじゃ、そんなことは夢のまた夢だ」

「そうだな」

「そして、今の翔動のスタッフはかなり優秀だと思う。

時間をかければ……いゃ、お前の知識があれば近いうちにエッジスフィアに追いつけるだろう。

そうなると、エッジスフィアの下に付く理由はどこにもない!」

「わかった。それで行こう」


翔太は石動の志が途絶えていないことに安堵した。


「ふー、この決断に柊が点数を付けるとしたら?」

「80点かな」

「うー、ちょっと待って。自分で残りの20点を考える……決断まで時間がかかったってことか」

「一流の経営者なら即断できるな。知らんけど」

「くそー」


石動は本気で悔しがっているようだ。


「そういえば、もう一個決めないといけないことがある。これはお前の判断が必要だ」

「なんだ?」

「鷹山が翔動(うち)で働きたいらしい」

「げっ!」


翔太に対して、この日一番の難題が降り掛かった。

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― 新着の感想 ―
エッジスフィアのモデルはLDなのかな。だとしたら、組まないのは正解になるのだろうけど。 一人の天才だけ、では世界を変えられはしないだろうから。その天才を支える層をどこまで厚くできるか、ですねえ。
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