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第144話 贖罪

「ふむ、Web Tech Expoか」

サイバーフュージョンの社長室で、上村はWeb Tech Expoのウェブサイトを眺めながら言った。


サイバーフュージョンは大規模な事業者であるためか、コミュニティ主体のイベントであるWeb Tech Expoの参加経験はなかった。

過去の登壇者に社員がいた可能性があるが、上村は把握していない。


「ユニコーンの製作委員会がダイヤモンドスポンサーになることを決めました」

「なんと!」


「この映画はITエンジニアの注目度が高くなると思われます。公開前のプロモーション活動の一環です」


翔太が提案した背景として、姫路への援護射撃の意味合いもあったが、これについては言う必要はない。


「映画のメインスポンサーであるうちに、わざわざ連絡してきてくれたってことかい?」

「弊社もWeb Tech Expoのゴールドスポンサーになります。色々と交渉して、製作委員会の隣のブースが取れそうです」

「ほう、確か、翔動も映画のスポンサーになっていたね」


これまでWeb Tech Expoにあまり関心を示していなかった上村が、少し前のめりになった。


「弊社はできたての会社ですから、こういったイベントのスポンサーになるのはコストパフォーマンスがいいんですよ」

「確かに広告を大々的に打つよりは、ずっと安いな」


上村はウェブサイトのスポンサー募集要項を確認していた。


「そして、()()()()()()()が登壇する予定です」

「本当かっ!!」


上村はガタッと立ち上がった。

あまりの勢いに高そうな椅子が倒れそうなくらいであった。


(オーディションのときも思ったけど、リアクション大王だな……)

神代が基調講演することについては公開されていない内部情報のため、伏せている。


「柊くんがわざわざ教えに来た理由がやっとわかったよ……」


Web Tech Expoは数万人規模が来場するイベントであるが、上村はサイバーフュージョンにとって意義のあるイベントとは思っていなかった。

しかし、神代が参加するとなれば話は別だ。

大きな話題になり、メディアに取り上げられる可能性は非常に高い。


映画のメインスポンサーであるサイバーフュージョンがこの機を逃したのであれば、株主などのステークホルダーに追求される可能性までありそうだ。


「製作委員会のスポンサーブースですが、E15です。それで弊社はE14を取る予定です」

「E13か……」


上村はイベント会場のフロア図を眺めていた。E15の両隣にE13とE14がある。


「ちなみに()()の裏にいるのが柊くんってことなんだよね?」

「ご明察です。()()は霧島プロダクション所属という立ち位置で登壇します」

「ということは、ブログのことを話す可能性が高いな……うちにめちゃくちゃ関係あるじゃないか!」

「NDAの範囲でお話できないこともありますが、それ以外のことであればお話できますよ」


上村は想定外の展開に目を白黒させていた。


「非常にありがたい情報だが、柊くんにとって利益はあるのかい?」

「同じ映画のスポンサーどうしで連携してできることがありそうです。

それに……御社の優秀な人材を引き抜いた形となってしまったので、お詫びの意味合いもあります」

「あぁ、新田くんか」


上村は新田の価値を正しく理解していなかった。

彼は四桁の従業員を抱える企業のトップであるため、このことは仕方がないと言える。

それでも翔太は道義上の借りを返しておきたかった。


映画のスポンサーとして、アストラルテレコムも大きな出資をしているが、この企業はコミュニティ活動に熱意を持つような文化とは程遠かった。

したがって、翔太は上村にだけこの話をしている。


「製作委員会のブースでは――が行われます。弊社では――」


社長室で翔太と上村は、映画と会社のプロモーションを最大限に行うために話し合っていた。

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