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第126話 葛藤

「技術カンファレンス?」

映画制作会社、夢幻の会議室には翔太の呼びかけによって関係者が集まっていた。


「はい、最新の技術やトレンドに関する情報を共有し、業界の専門家や企業が集まるWeb Tech Expoというイベントです。

映画のプロモーションとして、このイベントに参加したいと考えています」


「どんなイベントなんだい?」

プロデューサーの山本の疑問に、翔太は順を追って説明することにした。


「ウェブアプリケーションの技術に関連したイベントです。

参加者は講演を聞いたり、スポンサー企業のブースを見て回ったりできます。

イベント後にはネットワーキングを目的としたパーティが開催されます」


「我々製作委員会がスポンサーになって、ブースを出すってことかい?」

「そうですね、ひとつはそれです」

「ちょっと待って、フィクションに登場する技術を実際にあるかのように見せるのはマズいんじゃないか?」

「作中で使われているのはリアルで実現可能な技術です」

「むむむっ、そう考えるとアリなのか?」


IT業界に知見のない山本は考え込んだ。


「シーン125に使う演出用アプリケーションがありますよね? あれを実際のシステムとして模擬的に作り、来場者に体験してもらうのはどうでしょうか?」

「そんなことができるのか!」


シーン125は映画のハイライトで、神代と美園がサイバー攻撃を撃退する場面だ。

演出用アプリケーションは翔動が業務委託として受けており、新田が実装している。


「目的は映画の宣伝ですが、小道具の中身も本気で作っていることをアピールできるかと」

「なるほど……ハリウッドのSF映画も実際に撮影で使った模型などを展示したりするからなぁ」


山本は納得したのか、しきりに感心していた。


「加えて、ブースの来場者に何らかの抽選を行って、当選者には映画の前売り券を配るのはどうでしょう」

「それいいですね! その場でしか入手できないノベルティも配れば話題になると思います」


業者に伝手がある蒼がブローシャーやノベルティを用意すると申し出た。


「柊さんは()()()()と仰っていましたが、ほかに何をするのでしょうか?」

橘は翔太の言っていたことをしっかりと記憶していた。


「このイベントのメインは技術に関連したトークです。

トークは事前に提出されたプロポーザルの中から選ばれた人が登壇できます」

「そのプロポーザルを出す資格は何でしょうか?」

「一般公募なので、誰でも出せます。したがって、神代さんに登壇していただきたいと考えています」

「えええええっ!? 私が?」


翔太の提案に神代は驚いた。


「で、でもでもっ……私、何を話せばいいかさっぱりわからないよ?」

「ウェブアプリケーションに関連していればどんな内容でも構わないんだ。

なので、霧島プロダクションがどうやって国内初とも言えるブログサービスを始められたかを話すと、みんな興味を示すんじゃないかな」

「確かに話題にはなるでしょうね。梨々花の演技にも説得力がでると思います」

「サイバーバトルでも神代さんの技術力はアピールできましたが、あれは小規模なイベントで、今回はより大きな効果が見込まれます」


Web Tech Expoは国内最大級の技術カンファレンスだ。

万単位の来客が見込まれているため、宣伝効果は大きいと推察できる。


「ううぅっ、ブログは柊さんが作っていたのに……」

神代は手柄を横取りするのではないかと思い悩んでいるようだ。


「トークでの宣伝行為は過度なものでなければ禁止されていないから、映画の宣伝をするという意味では神代さん以上の適役はいないんだ」

「それはそうだろうけど……」

神代は葛藤していた。


(実現したら大変なことになるだろうけどな)

実際に神代が登壇することになった場合、相当な注目や関心を呼ぶだろうと思われる。

芸能人が技術カンファレンスに登壇した事例は、翔太の知る限りでは一度もない。


「それに、俺は表に出られない()()があるし」

「ずるい、それを言われると私は断れないじゃない……わかりました。やります!」


神代は覚悟を決めたように言った。

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