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第117話 メッセージ

「いやー、すごいね……驚いた」


鷺沼は決勝で勝ち上がってきたチームの意外性ではなく、その実力に対して驚愕していた。称賛と言ってもいい。

この大会はチーム戦でありその人数は三名と少数だ。

したがって、個々の能力が高くなければこのような結果にはならない。


決勝を前にしてチーム『ハッカやない』のメンバーは相手チームへの対応を検討していた。


「話題性だけを目的に参加したわけではなかったんですね」

チームメイトの五色(ごしき)は予選のタイムや決勝トーナメントの結果から、実力が本物であると分析していた。


「我々と同じくストレート勝ちですからね。まぐれでは絶対にありえないです」

もう一人のチームメイトである半田(はんだ)も、鷺沼と同様にチーム『ユニコーン』を称賛していた。


「芸能人だからって軽く見るつもりはまったくないけど、彼がキーパーソンであることは間違いないね」

「皇ですね……何者でしょうか? 俺はかなり業界人を知っているほうですが聞いたことがない名前です」

「五色くんでも知らない人材が埋もれてたのか……面白くなってきたね!」


鷺沼は嬉しそうに言った。

五色は鷺沼が属するコミュニティのほかにも、さまざまな技術コミュニティに顔を出している。

皇ほどの実力者が彼のアンテナにかからない人材がいることに驚きを隠せなかった。


「まー、アレコレ考えてもしゃーないか。決勝も今までどおりにやって優勝するよ!」

「「応!!」」


***


「なんじゃこりゃ?」

五色は決勝でチーム『ユニコーン』側が、対戦中に送ってきたと思われるデータを見て首を傾げた。


「どれどれ?」

興味を惹かれた鷺沼はデータの中身を覗き見た。


─────

44K744OE44Kz44CB44K944Os44Kq44OP44K444Kt44OkCg==

─────


「セツコ、ソレオハジキヤ」

「は!? 読めるんですか!?」

「え? ただのBase64だよ? 暗号化もされていないし」

「普通の人間には読めないもんですよ……」


半田はヤレヤレと、呆れるように言った。


「読める、読めるぞ!」

鷺沼は文字をなぞるように言った。


「大佐、言い直さなくていいですから!」

チーム名からもわかるとおり、ジブリネタはチーム内の共通言語となっている。


五色と半田はデータの内容がウィルスやマルウェアの類でないことに安心し、興味を失っていた。

二人とは裏腹に、鷺沼は興味を惹かれていた。


(これって、うちのチーム名を揶揄しているんだよね……)

鷺沼ボケに対してツッコミを入れる人物は限られている。


鷺沼の思考は止まらなかった。

デルタファイブの社内で、鷺沼はたまにソースコードのコメントなどに誰にも迷惑にならないような遊び要素を仕込むことがあるが、それに気づいてツッコミを入れてくる後輩であり弟子でもある社員がいる。

(確かに見た目の年代は同じくらいだけど、顔は全然違うし……)


そのツッコミ方は口頭ではなく、鷺沼と同様な手段で誰にもわからないようにしてくるため、彼女はニヤけてしまうのだ。


「何がおかしいんですか?」

「え!? 私、笑ってた?!」


鷺沼は五色に指摘されるまで、自分の口角が上がっていることに気づいていなかった。


()の知り合いなのか? ……でも、私がこの大会に出ることは会社の同僚には一切言ってないから、仮に知り合いだとしても……)

こうなると鷺沼の好奇心は止まらなくなった。


「――鷺沼さん! ターンもう始まってますよ!」

「あ、しまった!」


このとき、チーム『ハッカやない』は初めて相手のチームの侵入を許した。

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