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ユルリコード!ドタバタ異世界スクールライフ  作者: ラッキーゴリラ
AI使い魔と落ちこぼれ魔法使い
9/19

ドワーフ技術者との共同開発

 コードの監視と、恐怖のブートキャンプは相変わらず続いているけれど、あの優しい消毒薬事件以来、ほんのちょっぴりだけ、コードに対する私の見方が変わった……かもしれない。まあ、相変わらず空気は読めないし、言動はズレてるし、お節介焼きなのは変わらないんだけど!


 そんなある日、私はまたしても、やらかしてしまった。

 飛行訓練で使っていた練習用のほうき……安物だけど、入学祝いにお父さんが買ってくれた大事なやつ……それを、着地に失敗してポッキリと折ってしまったのだ!


「あああああ! 私の箒がああああっ!」

 真っ二つになった箒の残骸ざんがいを前に、私は膝から崩れ落ちた。これじゃあ、次の飛行訓練、どうすればいいの……。


「マスター、箒の破損はそんを確認。原因は、マスターの着地角度のミス、及び速度超過による機体への過負荷かふかです。修理は可能ですが、専門的な技術が必要です」

 肩の上のコードが、冷静に、しかし的確に分析する。


「うぅ……分かってるわよ……。修理……そうだ! ガンモちゃんに頼んでみよう!」

 私は、学園に一人だけいる、頼れる友達のことを思い出した。


 というわけで、私とコードは、真っ二つの箒を抱え、学園の中でも特に騒々(そうぞう)しく、活気があり、そして時々爆発音が聞こえる危険なエリア――魔工学科の工房へと向かった。

 工房に近づくにつれて、カンカン!ガシャン!ウィーン!という様々な音と、機械油と汗の匂いが混じった独特の熱気に満ちていた。あちこちで火花が散り、生徒たちがゴーグルをつけて何やら怪しげな機械をいじっている。カオスだ。


「ガンモちゃーん! いるー?」

 私が大声で呼ぶと、工房の奥で、巨大なハンマーを軽々と振り回し、真っ赤に熱した金属を叩いていた、小柄な影がピタッと動きを止めた。


「んあ? その声はユルリか! おー、来たな! で、今日は何をぶっ壊したんだ?」

 ひたいのゴーグルをカチャリと上げ、ニカッと太陽みたいに笑ったのは、ドワーフ族の女の子、ガンモ・ドワーフスキーちゃん! 私の友達だ。背は低いけど、その腕っぷしと元気の良さは学園でもトップクラス!


「えへへ……箒、折っちゃって……。直せるかな?」

 私がしょんぼりしながら箒の残骸を見せると、ガンモちゃんは「あー、またやったのか。まあ、このくらいなら、ちょちょいのちょいだぜ!」と、頼もしい言葉を返してくれた! ……んだけど。


 ガンモちゃんの視線が、私の肩にいるコードに気づいた瞬間、その目が、見たこともないくらいキラッキラに輝いたのだ! まるで、伝説のレアメタルでも発見したかのように!


「な、なんだそりゃあ!? ピッカピカのフクロウ!? しかも金属製!? 見たことねぇタイプの魔法機械マキナだ! すっげー! カッコイイー!」

 ガンモちゃんは、さっきまでいじっていた怪しい機械を放り出すと、目をキラキラさせながら私に猛ダッシュ! 手には、いつの間にか、モンキーレンチと怪しげな電動ドライバーが握られている!


「なあなあなあユルリ! そいつ、ちょっと貸せ! いや、もう借りる! お願いだ、一回でいいから分解させてくれ! 中身がどうなってんのか、気になって夜も眠れねえ!」

 キラキラした笑顔で、とんでもない要求をしてくるガンモちゃん!


「だだだだ、ダメに決まってるでしょ! コードは私の大事な使い魔なんだから! 分解なんてさせないわよ!」

 私は慌ててコードを肩から降ろし、自分の背中にかばう!


「マスター、ご心配なく」コードは私の背後から冷静に言った。「私のボディはオリハルコン合金製であり、その程度の工具では物理的な損傷を与えることは不可能です。しかし、内部構造へのアクセス及び分解行為は、私のシステムに致命的なエラーを引き起こし、機能停止に至る可能性があります。 よって、その要求は受け入れられません、ガンモ・ドワーフスキー氏」


「へー、オリハルコンか! やっぱな! しかもあたしの名前まで知ってんのか、すげえな!」ガンモちゃんは諦めるどころか、ますます興奮している!「なら、こっちの対装甲たいそうこうレーザーカッターならどうだ! これならオリハルコンだって……!」

 ガンモちゃんが、今度は工房の隅から、もっと物騒な機械を引きずってきた!


「だからダメだってばーーーっ!」


 私とガンモちゃんの熱いバトルはしばらく続いたが、最終的にはガンモちゃんが「ちぇーっ、つまんねえの!」と、不満そうにしながらも工具を下ろしてくれた。……心臓に悪い……。


 すると、コードがスッとガンモちゃんの前に進み出て、改めて丁寧にお辞儀をした。

「ガンモ・ドワーフスキー氏、改めて自己紹介させていただきます。私は汎用お手伝いAI、モデル名『コード』です。以後、よろしくお願いいたします」


「ふーん、エーアイか!」ガンモちゃんは、ニカッと笑った。「よく分からんが、なんかスゲー計算とかできるんだろ? よし!」

「なあ、コードっつったか? お前、なんか、すっげー計算とかできるらしいじゃねえか! よし、決めた! お前とあたしで、なんか超スゲーもん作ろうぜ!」


「技術的な共同開発の提案、と解釈しました」意外にも、コードはこの提案に興味を示した。「異世界の『魔工学』、特にあなたのその…経験とかんに基づく、大胆だいたんかつパワフルなアプローチ、非常に興味深いです。ぜひ、技術交流といきましょう!」


 絶対ろくなことにならない予感がするんですけど……! ユルリは額に手を当てた。


「よっしゃ! じゃあ、まずは手始めに、ユルリのドジを完璧にサポートする、最強の道具でも作るか!」とガンモちゃん。

「合理的です」コードも賛同。「マスターの非効率な行動パターンを物理的に抑制よくせいするデバイスの開発は、喫緊きっきんの課題と言えるでしょう」


「だから余計なお世話だってば!」

 私の意見は、技術バカ二人の熱意の前に、あっさりとかき消された。そして、勝手に共同開発プロジェクトがスタートしてしまったのだ。


 今回のテーマは、「絶対に迷子にならない!ハイパー・ナビゲーション・コンパス(仮)」!

 森で遭難しかけた私のために開発されることになったらしい。


「よーし、まずは設計図だ!」ガンモちゃんが、油まみれの紙に、殴り書きのような図面を描き始める。

「ふむ。その設計では、魔力伝達効率が低いですね。こちらの回路図の方が最適です」コードが、空中に精密な3Dホログラム設計図を表示する。

「なんだと!? 細けえこと言ってんじゃねえ! 大体な、魔法道具ってのはな、最後は気合と根性なんだよ!」

「非論理的です。設計段階での最適化こそが、成功への鍵です!」

「うるせえ! とにかく叩けばなんとかなる!」

「なりません!」


 ……もう、制作開始前からカオスだ。私はお手伝い(という名の、工房の隅での見学)をしながら、頭を抱えるしかなかった。


 なんだかんだで、数時間後。

 二人の天才技術者の(激しい口論と、時々の妥協だきょうの末に)、「絶対に迷子にならない☆レスキュー・ナビ・コンパスMk-Iマークワン」がついに完成した!

 見た目は、分厚くてゴツい、方位磁石ほういじしゃくのお化けみたいだ。中には、コードの超小型センサーユニットと、ガンモちゃん特製の高出力魔力バッテリー、そして警告用の大音量スピーカーが内蔵されているらしい。……嫌な予感しかしない。


「よし、実験だ!」ガンモちゃんが、目を輝かせて言った。「ユルリ! こいつを持って、中庭の売店まで行ってみろ!」

「ええ……なんか、すごく嫌な予感がするんだけど……」

 私は、恐る恐る、そのゴツいコンパスを受け取った。ずっしりと重い。


 言われるままに、中庭に向かって歩き出す。最初は、コンパスの針がちゃんと売店の方向を指している。

「お、すごい!ちゃんと動いてるじゃん!」

 私が感心した、その瞬間だった!


 コンパスの針が、突然、猛スピードでグルグルグルグル回り始めた! そして!

 『警告!警告!前方30メートルに高エネルギー反応(キラ・レオナルド・マエガミ先輩)を検知! 危険です! 接触を回避します!』

 コードの声が、大音量で鳴り響いた!


「ひゃっ!? な、なに!?」


 『回避ルートを再計算! 右です! いや左! 上です! 緊急回避!』

 コンパスが、めちゃくちゃな指示を叫び始めた!


「どっちなのよ! 上ってどうやって!?」


 『最終手段! 緊急脱出モード、起動!』


「えっ? 脱出!?」


 次の瞬間、コンパスの底から、ゴォォォォッ!と、ものすごい勢いで炎が噴き出した! ガンモちゃんがこっそり仕込んでいたらしい、小型ロケットブースターが誤作動したのだ!


「ぎゃあああああああああ!!!!」


 ロケットと化したコンパスは、私の手を振りほどき、猛スピードで空高く飛んでいく! まるで打ち上げ花火だ!

 そして……数秒後。


 チュドーーーーーーーーーーン!!!!


 空中で、コンパスは派手な音を立てて大爆発! キラキラした部品の破片が、雨のように降り注いできた……。


 シーン……。


 私と、ガンモちゃんと、コードは、呆然ぼうぜんと空を見上げていた。

 ……そこに、鬼の形相ぎょうそうをした魔工学科の担当教師いかついドワーフのおじさんが、ものすごい勢いで走ってきた!


「こらーーーーっ! 何事じゃ!? この爆発音は! 君たちか!」


 ……うん、知ってた。こうなるって、知ってたよ……。


 結局、発明品は跡形もなくなり、私たちは三人仲良く、先生からのお説教フルコースと、反省文10枚という罰を受けたのだった……。


 まあ、箒はちゃんと直してもらえたから、良かったんだけど……。


(もう……絶対……こいつら二人の発明には関わらない……! 絶対に!)

 私は心の中で、固く、固ーーーく誓った。……まあ、どうせまた、すぐに巻き込まれるんだろうけどなぁ……。ユルリは遠い目をした。

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