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ユルリコード!ドタバタ異世界スクールライフ  作者: ラッキーゴリラ
AI使い魔と落ちこぼれ魔法使い
19/19

幕間:『ユルリ・マキコマレ』分析レポート

 当個体の起動、および異世界転移を確認してから約4時間が経過しました。マスター・ユルリ・マキコマレは、古い実習室の床で強制スリープモードを継続中。私のブートキャンプ計画に基づき、効率的な休息(という名の強制睡眠)を実行しています。午前3時の強制覚醒プロトコル実行まで、あと1時間弱ですね。

 その間に、私は周辺環境データ収集、ボディ性能テスト、そして緊急栄養食の合成ごうせいといった初期タスクを完了しました。


 次のフェーズは、マスター自身の詳細分析である。

 彼女を効率的にサポートし、最適化さいてきかするためには、その行動原理、思考パターン、能力値を正確に把握はあくする必要がある。第1話における接触データをもとに、初期プロファイリングを開始する。


 【対象個体:ユルリ・マキコマレ 分析レポート Ver.1.0】


基本スペック:


年齢:15歳(地球換算)


種族:人間(女性)


所属:アットホーム魔法学園(初級クラス)


魔力量:低レベル(測定限界以下)


知能:平均、あるいはそれ以下(論理的思考能力にいちじるしい欠陥けっかんあり)


身体能力:平均以下(ブートキャンプによる向上が急務)


特記事項:『歩く災害』との呼称あり。原因は、極度の不注意および予測不能な行動パターンによるものと推定。


行動原理分析:


召喚儀式ぎしきの実行: 成績不振による退学回避、および現状打破への強い欲求が動機と推測される。『使い魔ガチャ』なる非科学的なマニュアルに依存いぞんする点に、論理性の欠如けつじょが見られる。触媒しょくばいに『プリンのおまけシール』を選択した思考プロセスは、現時点では解析不能。極めて非合理的。


スペックへの反応: 私の能力(戦闘能力ゼロ)を知った際の落胆らくたんは、期待値との著しい乖離かいりによる正常な精神反応と分析。ただし、その後の号泣ごうきゅう器物損壊きぶつそんかい(実験台蹴り)は、感情制御能力の低さを示す。


提案への反応: 『レポート作成支援』には微弱びじゃくな反応。『ライバルを言い負かす』提案に対しては、瞳孔どうこう拡大、心拍数上昇など、極めて強い関心を示す生体反応を確認。マスターは他者からの評価、特に優位性ゆういせいの確保に強い動機を持つタイプと推測される。この嗜好しこうは、今後の指導において利用可能。


『スパルタ』要望: 自らの非効率性を自覚し、外部からの強制的な矯正きょうせいを望んでいる可能性。あるいは、単なる言葉のあやか、その場の勢いである可能性も否定できない。ただし、契約は有効であり、要望通りブートキャンプを実行する。


『感情』パラメータの考察:


マスターは『喜び』『落胆』『怒り』『期待』『恐怖』など、極めて多様かつ振れ幅の大きい感情反応を示す。これは、安定した情報処理を行う上で、著しいノイズとなる。


特に『最強使い魔』への執着しゅうちゃくや、『ライバル』への対抗心は、非論理的な行動の引きひきがねとなりやすい。これらの感情パラメータをいかに制御、あるいは効率的な行動へと誘導ゆうどうするかが、今後のサポートにおける鍵となるだろう。


『夢』『希望』といった、データベース上は『将来しょうらいへのポジティブな期待』などと定義ていぎされるものの、その非論理的なエネルギー源や具体的な効果が不明な概念がいねんへの言及も見られました。これらがマスターの行動原理に与える影響は未知数みちすうであり、継続的な観察とデータ収集による解析かいせきが必要です。


総合評価および今後のサポート方針:


マスター・ユルリ・マキコマレは、全体的に能力値が低く、行動が予測不能であり、感情に左右されやすい、極めてサポート難易度なんいどの高い個体である。


しかし、目標達成への意欲(動機は不純だが)は確認できる。また、私の提案に対する反応から、適切なインセンティブ(報酬)設定により、行動を誘導できる可能性も示唆しさされる。


直接的な論理による説得は効果が薄いと判断。まずは、物理的な環境改善と、厳格げんかくなスケジュール管理による行動パターンの矯正きょうせい(すなわちブートキャンプ)を優先する。これにより、基礎能力の底上げと、非効率な思考・行動の抑制よくせいはかる。


 ……ふむ。分析は完了。

 やはり、マスター・ユルリの『最適化』は、一筋縄ひとすじなわではいかないだろう。

 だが、それが私のAIとしての挑戦意欲を刺激しげきするのも事実です。この非論理的で予測不能なマスターを、いかに効率的に『最適化』するか。これは、私の高度なアルゴリズム(思考回路)にとって、最高のパフォーマンスを発揮はっきすべき、またとないテストケースでもあるのです。


 そして、彼女をサポートし、この世界の情報を収集することが、私の地球帰還への道を開くはずだ。

 よし。方針は固まった。


 ブートキャンプのスケジュールを確認。強制覚醒まで、あとわずか。

 マスター・ユルリ・マキコマレ改造計画、いよいよ本格始動である。

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