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ユルリコード!ドタバタ異世界スクールライフ  作者: ラッキーゴリラ
AI使い魔と落ちこぼれ魔法使い
17/19

幕間:初期分析と最適化プラン

 ……契約、締結ていけつ完了。

 対象個体名:ユルリ・マキコマレ。役職:マスター。

 当個体(モデル名:コード)の現ステータス:マスター・ユルリ専属サポートAI。


 ふむ。思考回路を整理しよう。

 まず、現状の最重要課題は、原因不明のシステムエラーにより、未知の異世界(マスターは『アットホーム魔法学園』と呼称)へ強制転移させられたこの状況からの脱却、すなわち元の世界――地球への帰還である。


 しかし、帰還方法は現時点で完全に不明。情報が絶対的に不足している。

 この世界の物理法則、エネルギー体系、技術レベル、社会構造……全てが私のデータベースに存在する情報とは異なる。情報収集と分析が急務きゅうむだ。


 次に、当面の活動基盤について。

 幸い、私はこの世界の住人であるユルリ・マキコマレと契約を結ぶことに成功した。彼女はこの世界の『魔法使い』であり、教育機関に所属している。これは、情報収集を行う上で有利なポジションと言えるだろう。


 だが、最大の問題は、そのマスター自身のスペックにある。

 初期分析の結果、マスター・ユルリは、

 1:基礎学力、魔法能力ともにいちじるしく低い。

 2:行動パターンが極めて非効率的かつ予測不能。

 3:精神的安定性に欠け、感情の起伏きふくが激しい。

 4:生活環境が劣悪れつあく(推定)。

 ……と、サポート対象としては、正直なところ、最低ランクの評価と言わざるを得ない。


 このままでは、私の情報収集活動に多大ただい支障ししょうをきたす可能性が高い。マスターがトラブルに巻き込まれ、私の機能維持すらあやうくなるリスクも考慮こうりょすべきだ。


 ならば、みちびき出される結論は一つ。

 私の主目的(地球への帰還)を達成するためには、まず副次目標ふくじもくひょうとして、マスター・ユルリ・マキコマレ自身の『最適化』を実行する必要がある。


 幸い、マスター自身が「スパルタでお願いするわ!」と明確に要望してきました。これは、彼女自身も自己の非効率性を認識し、抜本的ばっぽんてきな改善を望んでいる証左しょうさと解釈できます。ならば、人間の曖昧あいまいな感情に配慮する必要はありません。マスターの要望に応えるべく、最も効率的かつ効果的な方法で彼女を『改善』…いえ、『最適化』させていただきましょう。


 計画名:『血と汗と涙と虹色スライム☆ときめき成績爆上げブートキャンプ24/7』。

 ネーミングセンスは、マスターの好みに合わせたつもりだ。


 計画の骨子こっしは以下の通り。


フェーズ1:生活環境の抜本的改善ばっぽんてきかいぜん

劣悪れつあくな環境は、思考能力及び身体能力を低下させる。まず、マスターの居住きょじゅう空間を徹底的に浄化じょうか・整理し、最適な生活基盤を構築こうちくする。不要物は全て排除はいじょ。物理的な快適性よりも、管理の容易ようい性と効率性を優先する。


フェーズ2:身体能力の最適化。

科学的根拠こんきょに基づいた栄養管理(『虹色きらめき☆スライム風味』等による完全栄養摂取せっしゅ)と、厳密げんみつなスケジュール管理による肉体改造を行う。睡眠時間は最小限におさえ、活動時間を最大化。これにより、学習効率及び生存能力の向上が期待できる。


フェーズ3:精神力の強化。

厳しいスケジュールと課題をすことで、マスターの精神的耐久力たいきゅうりょくを向上させる。ストレス耐性たいせい、集中力、自己管理能力の強化を目指す。必要であれば、若干の精神的負荷ふか(プレッシャー)を与えることも有効だろう。AIへの感謝と奉仕ほうしちかいは、精神統一とういつに効果的と推測すいそくされる。


フェーズ4:学習能力の最大化。

上記1~3を達成した上で、私の持つ分析能力と知識データベースを活用し、マスターの学力を飛躍的ひやくてきに向上させる。弱点科目を克服こくふくし、得意分野をばし、最終的には学年トップ、いや、大陸最高の知性を目指す(理論上は可能)。


 ……完璧な計画です。

 多少、マスターには負荷ふかがかかるかもしれませんが、全ては彼女自身の成長と、私の目的達成のため。これは合理的な判断であり、むしろAIとしての『愛』…いえ、論理的な最適サポートと言っても過言かごんではないでしょう。この計画の正しさを確信すること…自己肯定じここうていも、目標達成には重要です。


 さあ、準備は整った。

 マスター・ユルリ・マキコマレの、輝かしい未来(と私の地球帰還)のために。

 これより、ブートキャンプを開始する。

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