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男の独白

作者: ハト

 桜桃と言えば太宰らしい。作品にそんな題名があるからとか、誕生日ついでに死亡記念日がそう呼ばれているからだとか、いろいろあるがとにかく、世間様では桜桃とはつまり太宰なわけだ。そのうち太宰に使う代名詞は、「彼」じゃなくて桜桃に成るのではなかろうか。そうなると太田静子の代名詞は斜陽夫人、山崎富栄はグッド・バイ夫人だ。でも、グッド・バイは未完成だから、未完夫人でもいい気がする。蜜柑夫人とすると、なにやら甘酸っぱい。

「桜桃は、嫌がる蜜柑夫人の秘蜜にするりと指を滑り込ませた」

 何だか情緒的ではないか。これは良い。ついでに指を蔓に変えて見るともっと良い。チェリーとオレンジの異種姦物が完成だ。イシュカン物、コトナリダネ物どっちで読んでも良い。とにかく二つの果実は無計画な性交の後に一つになり、オレンジ色の小さなシャム双生児を授かるだろう。彼らの肌はきっとでこぼこに違いない、でもその肌はとても繊細で弱いのだ。奇形の我が子を悲しむチェリーとオレンジ、湯だった水飴に飛び込んで、しまいにデロデロな甘さの自己満足のジャムになるだろう。あんまりに甘いから、パンにも合わず、クッキーにも使えない。そんなジャムは紅茶に入れると良さそうだ。アールグレーに入れると良い。そうすれば、風情のないオレンジの残骸は全て消えて、チェリーの風味だけが残るだろう。そんな純愛の紅茶を飲んだ、デロデロの桜桃みたいな君の唇に、キスをしたい。そんな自分は斜陽夫人。


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