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たこ焼きで焼きそばパンで『あかずの間』 その四

「このビルの一階はパン屋でな。さっき食った焼きそばパンに使ったコッペパンも、そこで分けてもらったもんだよ。そのパン屋のパン工房はビルの地下にあるんだが、これまた年代物の焼き窯を使ってるんだよ。ガスや電気なんか使ってない、薪を燃やしてパンを焼く、昔ながらのパン焼き窯だ」

「地下のパン工房に、パン焼き窯……電気やガスのオーブンでなく、薪を使った窯を使っているかい。だとすれば、換気はどうしているんだい?」

 鋭い指摘で、核心をついてくるウラ。

「お前の言う通り、薪を燃やせば当然出るものがある。元々は煙突を一階の壁から外に出す予定だったらしいんだが、想定より随分と大量に煙が出たらしくてな。商店街からこんなに煙が出るのは困るって苦情が来たらしい」

 地下から伸びた煙突の先は、レンガ造りの壁の中を通り、誰にも文句が言われないように、より高いところへ上っていったのだ。

「それで結局、このビルの屋上、そこまで煙突の先っぽを伸ばして、そこから煙を排出することにしたんだ」

「屋上から煙を排出するつもりで先を伸ばして……この部屋の壁にも煙突を通したというわけだね?」

 ウラの予想に、俺は頷いた。

「ご明察。そして今になって老朽化した煙突から漏れた煙が、屋上へ逃げるより先にこの部屋に漏れてきちまったんだと」

 煙突も、ビルの壁も、あちこちもガタが来ているのだ。

「この煙が、この『空かずの間』に、誰も入れられない理由だよ」

 元々が空き部屋だったので、いつからこんな状態になってしまったのか、正確な時期は誰も把握していないらしいが……

 現在、『アカナスビルヂング』四階のこの空き部屋では、屋上から立ち上るはずのパン焼き窯の煙が漏れ出して、充満しているのである

「アイシー、アイシー、ナルホドね。見た感じ、ワタシならこの部屋の煙、なんとか出来そうだね」

 ウラにあっさりと言われて、俺は疑わしげに視線を向けた。

「なんとか出来るぅ?」

 この部屋いっぱい……このビルの四階の半分を占めている大量の煙を何とか出来る?

「アンタ、実は建築関係に強かったりするのか?」

「いいや。家を建てた経験は、大量購入したビスケットやチョコレートで、お菓子の家を組み立てたことしかないかな」

「楽しそうなことしてんな……じゃあ煙関係のトラブルの対処に慣れているとか?」

「いいや。燻製作りもやったことがないねえ。ニシンの燻製はグランマが得意だったんで、よくブレックファーストに食べていたけれども」

「全部食べ物絡みで返事をしなきゃいけない縛りプレイとかしている人?」

 救世主というか、単なる食いしん坊じゃねえか。

「あのなぁ、この部屋の煙漏れは、専門業者でも直すことどころか、煙漏れの場所を特定することすら出来なかったんだぞ? これほどの量の煙なら、相当大きな亀裂が煙突や壁に出来ているはずなのにも関わらず、だ」

 そう。この部屋がこんな状態で放置されている、大きな理由の一つがそれだ。

 業者が煙の中をいくら調べても、煙が漏れている箇所を見つけることが出来なかったのだ。それでは修繕のしようがない。

 肉眼では確認できないような部分から煙が漏れてきているのではなかろうか、もしかしたら老朽化による小さなヒビが複数あってそれが原因かもしれない、という頼りない意見が業者の見解だった。

 そんなことになっているとしたら、相当大がかりな補修工事が必要になるだろう。たとえ煙が何とかなったとしても、莫大な費用や時間がかかる。

 地下のパン焼き窯を最新のものに新調する、なんて意見も出たが、本格的な新品の窯を導入すると数百万とかかかるらしく、パン屋の懐事情だと厳しいらしい。

 なので、どうせ四階の奥は元々誰も使っていなかった空き部屋なのだし、とりあえず『煙』に使わせておいてもいいじゃないか。

 それがこのビルの住人一同が出した、結論だった。一言で言うと『先延ばし』だ。

「ほう……ジャパンのプロフェショナル業者でも『原因を見つけられなかった』か」

 何故かウラは自信に満ちた声で、ニヤリと不敵に笑った。

「アイシー、アイシー、ナルホドね。それならば、この仕事は確かにワタシの『得意分野』だ」

「アンタなら修理できるっていうのか?」

「ハハッハー。修理できるかどうかまでは約束できないが、そもそもどこから煙が漏れている箇所を特定できなかった……見つけられなかったというのなら、このワタシがそれを見つけてみせよう!」

 ウラは目元に手を当てて変なポーズを決めながら、声高らかに宣言する。

「ワタシの名前はウラ・メシヤ! 海の向こうからやって来た、救世主ウラ・メシヤ! この部屋の煙漏れの場所すらも見破って、困っている住人を救ってみせるとも!」

 やっぱ決め台詞なんだな、それ。

「それで救世主様はどうやってその場所を見つけるおつもりで?」

「言っただろう? ワタシのポリシーは『seeing is believing』。百聞は一見に如かず。現場を観察してから、解決策を考えるのがワタシの仕事のやり方なのだよ」

 ウラはくるりと一回転して俺に背を向け、雲の壁のような煙の塊と向き合った。

「ところでヤマツチ、一つ確認しておきたいのだけれど」

「なんだよ」

「ジャパンには、部屋に入る前に『ここではきものをおぬぎください』って言うルールがあるんだろ?」

 黒いスーツのボタンを外しながら、そんなことを聞いてくるウラ。

「その『キモノ』って上着だけでいいのかな? それとも服を全部脱いだほうがいいかい?」

「着物じゃねえよ、履き物だよ履き物。靴だけ脱いでから部屋に入れって意味だ」

「あ、なーんだ。アイシーアイシー、ナルホドね。それじゃあ、失礼して」

 その場で黒いローファーを、ぽいぽいっと脱ぎ捨てたウラは……

「エクスキューズミー、お邪魔します」

 

 『空かずの間』を埋め尽くしている白の中に踏み込んでいった。


「は?」

 白い煙の中に消えていく背中を止める暇もなく、俺は間の抜けた声をあげることしか出来なかった。

 数秒遅れてウラの行動を理解した頃、頭の先からゆっくりと血の気が引いていく。

「おいおいおいおい……何してんだよ、冗談はよしてくれよアイツ……」

 煙って普通、体に毒だったよな?

 火事でも、火に焼かれるより煙に巻かれて死ぬことが多いみたいな話を聞いたことがある。

 こんな煙の中に、ガスマスクどころかハンカチもなしに入ったりしたら……

「おい、アンタ! ウラ! ウラ・メシヤ!」

 呼びかけても、煙の向こうから返事はない。最悪の事態が、脳裏をよぎった。

 どうする?

 業者なり消防なりを呼ぶにしても、どうしたってタイムロスがある。

 ウラが煙の中でぶっ倒れているのだとすれば、その間にアウトになる可能性のほうが高い。

「あぁもう! チクショウ!」

 大きく息を吸い込んだ俺は、意を決して煙が充満する部屋の中に飛び込んだ。



 小学生のときに避難訓練だったか火災体験だったかで、吸っても人体への影響がほぼない煙でいっぱいになったテントのようなものに入ったことがある。

 俺の視界はあのときと同じように、真っ白なもやで覆い尽くされており、自分の足元どころ胸元すらろくに確認できない状態だった。

 黒かろうが白かろうが、視界を奪われてしまってはまともに動くことなど出来ない。

 『一寸先は闇』ならぬ、『一寸先は煙』だ。

 不幸中の幸いだと言えなくもない要素は、この空き部屋は真下にある三階の部屋……つまり、俺の部屋と同じ間取りをしているってことだ。

 勝手知ったるなんとやらのおかげで、視界がゼロでも記憶頼りでなんとか先へ進むことが出来た。

 あとはどこかにいるはず……倒れているはずのウラを探り当てて、煙の外まで引っ張り出せれば……

 廊下をすり足で進み、人がいそうなスペースを虱潰しにしていく。ウラがいた場合は蹴っ飛ばすことになるが、這いつくばってのんびり探している時間的余裕はないだろう。手探りならぬ足探りだ。

 しかしさほど長くない廊下をいくらすり足で動き回っても、ウラを見つけられないまま、リビング(として俺が使っているスペース)まで出てきてしまった。

 この煙の中を、一体どこまで進んでいったんだアイツ?

「うっ……」

 やべぇな。ずっと息を止めてきたから、俺もそろそろ限界が近い。意識が朦朧としてきた。

 一旦玄関のほうに戻るか。いや、ここからならベランダに向かって、一度外へ顔を出して呼吸すべきか。

 酸素の足りない頭で、何とか考えをまとめようとしていると……

「おんや、ヤマツチ。キミも来たのかい?」

 緊迫感とはまるで無縁な、呑気すぎる声が聞こえてきた。

 分厚すぎる煙に阻まれ人影すらも見えないが、間違えようもなくウラの声だった。

「……!」

 咄嗟に、俺は声の聞こえてきたほうに手を伸ばした。

「ソーリー、ソーリー。少し集中していたんで今気づいたよ。悪かったね」

 だが距離感が把握できず、腕はスカスカと宙を……いや、煙を掴むばかり。

「……! ……!」

 声を頼りに何度かトライするものの上手くいかず、焦りのみが募っていく。

「それにしても、さっきから何を面白い動きをしているんだい? 顔色も真っ赤だよ」

 白い煙の向こうにいるにも関わらず、ウラはまるでこちらの姿が見えているかのように話しかけ続けて来る。

「ところでキミ、さっきから何で返事しないのさ?」

「……!」

「ヤマツチってば」

「だぁぁぁぁぁ! 息止めてるんだから、話かけんじゃねえぇぇぇぇぇ!」

 あ。

 慌てて両手で口を抑えたものの、もう遅い。

 思い切り叫び、そして煙を吸い込んでしまった。

 これで俺も酸欠に……

「……?」

 けれど、予想に反して、これといった体調の変化は訪れなかった。

 酸欠で失神することもなければ、煙でむせたり咳込んだりすることもない。

 恐る恐る両手を口から離して、そのまま周囲に漂う煙ごと、息を吸ってみた。

 酸っぱいような苦いような独特の味と匂いが口内に広がるが、それで頭が痛くなるなんてことはなかった。

「これは、一体……」

「どうだい、ヤマツチ? これでもう、君にも分かっただろ」

 普通に呼吸が出来ることに戸惑う俺に、ウラが声をかけてくる。とはいえ、煙の……もとい『煙に見える白い何か』の向こうにいるため、相変わらず姿はまるで見えない。

「……全然分かんねえよ。何がどうなってるかさっぱりだ。どういうことなのか説明してくれ」

「うーん。何と言ったらいいかな。つまりね……この煙は、ヤマツチが知っているような煙じゃないんだよ」

 しっくりくる言葉が見つからないのか、ウラにしては歯切れの悪い口調だった。

「偽物の煙ってことか?」

「いわゆる何かを燃やしたときに出る煙を、『本物の煙』だと定義するのなら、違うという意味ではそうだね」

 なんだそりゃ。

 相変わらず白一色の煙の中、どうやら目の前にいるらしいウラはのんびりと説明を続ける。

「大体ねえ、キミ。ちょっと考えれば、この煙が変だって分かりそうなものじゃあないか」

「そうは言っても、こんな煙の中に入ろうなんて思ったことなかったしよ」

「わざわざ部屋の中に足を踏み入れるまでもなく、だよ。さっきこの『空かずの間』のドアを開けたとき、なんか変だと思わなかったのかい?」

「変って……煙だらけの部屋がか? それに関しては別に……煙が充満していること自体は元から知ってたからな、俺は」

「だとしても、おかしいだろ。普通に煙が充満していただけなら、ドアを開けたら廊下にまでそれが拡散されるはずでしょうが!」

 言われて俺は、ドアを開けた時に見えていた煙の様子を思い出す。

 確かに部屋の煙は、廊下のほうへは流れ出してくることなく、部屋の内側に留まり続けていた。

「部屋に残り続けている時点で、これはもうただの煙じゃないに決まっているじゃあないか!」

「う!」

 そう言われてみると確かにそうだ。何で今まで気が付かなかったんだ?

「それでワタシはこの煙がただの煙でないと判断して、部屋の中を調べていたというわけだ。変な匂いや独特の味はするものの、こうして息も出来ることも分かったから、ちょっとあちこち視て回ってみたよ。おかげで大体この煙が出て来た理由は分かったよ」

「分かったってマジで?」

 あっさりと言うウラに、俺は思わず聞き返した。

 ただの煙でないことが分かった今ですら視界は白一色なのに、ウラはこの短時間で何をどうやって調べたというのだ。

「うん。ジャパンで言うところの、イチモクリョウゼンってやつだね」

「一目瞭然も何もなんも見えないじゃねえか……パン焼き窯の煙じゃなさそうなのは分かったけど、結局なんなんだよこの煙」

「だから視れば分かるって……あっ、そうか。キミには視えていないのか」

 困惑する俺の言葉に、ちょっと戸惑ったような返事が返ってくる。

「アイシーアイシー、ナルホドね。それじゃあ分かりやすいように、ヤマツチにも視せてあげるとしよう」

「見せるって……」

 俺の頭を、誰かの両手……ウラの両手に決まっているのだが……が伸びてきてガッチリとホールドした。

 急に背筋を伸ばして、顔をぐっと近づけて来た。白くてモヤモヤした『謎の煙』を突き抜けて、顔がハッキリ分かるほど近い距離まで、俺とウラの顔が近づく。

 いやまつ毛長っ!

 じゃなくて近い近い近い!

 俺のすぐ目の前にまで、ウラのルビーのように真っ赤な瞳が迫って来て……

 ……ん? 赤い瞳?

 コイツの目って青だったはずでは……

 そんな疑問が頭をかすめ、俺の注意が逸れた一瞬の隙をつくかのように……

「ハハッハー。『seeing is believing』、百聞は一見に如かず、ってね!」

 ゴッチン!

「いでぇ!」

 突然目の前で火花が炸裂したかのような衝撃を受け、俺は目元を抑えてうずくまった。

 コイツ、何をするかと思ったらヘッドバット……頭突きをかましてきやがった。

「なんのつもりだよ……」

「こうするのが一番手っ取り早くってね。さて、どうかな? これでヤマツチにも分かりやすくなったはずなんだけど」

 俺の呻き声に、わけのわからん返事をするウラ。

「こんなんで何が分かるようになると……」

 ようやく目元から手を離せた俺は顔を上げ、ニヤリと笑うエルを睨みつけた。

 ……ん? 睨みつけた?

 さっきまでと違い、目の前に立つウラの姿が、はっきりと視えるようになっていた。

 と言っても相変わらず謎の煙は体にまとわりつくように存在しているし、部屋中に充満しているのが分かる……それも視えている。

 だがその煙を通した上で、ちゃんとウラの姿、それだけでなく壁や天井の存在、電気のスイッチまでもがはっきりと視える。

 ズレたピントのカメラ越しで見ていた景色が、急にピントが合ったみたいに、ぼやけていた世界が今はハッキリと視えるようになっていた。

 煙に変化がないとすると……変わったのは、俺の目?

「ハハッハー。その反応を見ると、どうやらキミにも視えるようになったらしいね」

 そう言うウラの瞳は……俺の目が視ているものが正しいとするならば……やはりルビーのような赤い瞳だった。

「お前……なんかしたのか?」

「うん。私が視えているものがヤマツチにも視えるように、ちょっと目の能力をオスソワケさせてもらったんだよ」

「目の能力の……お裾分け?」

「ワタシにも理屈はよく分からないんだけどね。なんかワタシの目が纏っているオーラみたいなやつを他の人の目にうつすと、その人もワタシと同じように普段視えていないモノが視えるようになるらしいんだ。よく分からないんだけど」

「よく分からないって二回も言うような行為をいきなり他人にやるなよ!」

「まあ結膜炎がうつるみたいなものだとでも思ってくれたまえ」

「例えが悪すぎる」

 しかし、普段視えていないモノが視える……?

「つまり、この煙が透けて見えているような、不思議な視界は……アンタがいつも見ている視界と同じってことか?」

「その通り!」

 真っ赤に輝く目元にピンと伸ばした指を当て、ウラは朗々と宣言する。

「この目の力こそが、ワタシの特殊能力! 普通の人には『視えないモノ』を視ることが出来る目だよ!」

「そんな能力があるなら事前に言え!」

 俺のツッコミに、ウラがぷくっと頬を膨らますのが、煙の中でもハッキリと視えた。

「だって『ワタシは普通の人が視えないモノが視えます』って説明すると、怪しすぎて誰も信じてくれないんだもの」

「それは、まあ、確かに……」

 俺も自分で体験する前にそんなことを言われていたら、まず信じてはいなかったろう。

「だからこうして現場を自分で確認して、まず間違いなく『普通は視えないモノ』が原因であると分かってから能力を明かすことにしているんだ。言葉が足りずにすまなかったね」

 サッパリとした感じのウラの謝罪に、これ以上責めるようなことでもないかと気を取り直し、俺は立ち上がる。

 何しろその説明されても到底信じられないような現象を、俺は今実際に視ている。

 まさに『百聞は一見に如かず』ってやつだ。

「とりあえず納得はしたよ。で『視えないモノ』が原因って、この煙がか?」

「ああ。普通の人には『視えないモノ』……ゴーストやフェアリー……あと、ごく稀にモンスターとかデビルとか、ジャパンで言うところの『オバケ』が原因だねえ。この煙」

「オバケ……」

 あっさりと言われて、ホラーが特別に苦手というわけでもない俺でも、背筋に冷たいものを感じた。

 ずっと暮らしていたこのアカナスビルヂング。

 パン焼き窯の煙が漏れているだけだと思っていた『空かずの間』の煙の原因が、心霊現象……?

「しかしビルの一室をずっと煙で充満させるって、一体どんなオバケなんだ?」

「それはもちろん、そこにいる『彼女』の仕業だと思うけど」

 俺の言葉に、ウラは振り返り気味にあっさりと自分の背後……リビングの一角を示した。

 そこは俺の視界に入っていなかった位置……煙を見通せるようになった今も、単純にエルの陰に隠れていて見えていなかった場所だ。

 そこに『誰か』が立っていた。

「うおっ! なんだよ! 誰だ!」

 シンプルに知らない誰かがいきなり出てくるという事態に驚き、思わず大声を出してしまった俺だったが話の流れから考えると、その人影こそがこの煙の原因……つまり……

「さて……煙を充満させ、この部屋に人が入れないようにしている犯人は、キミだね?」

「ええ。はい。ご指摘の通りです」

 ウラの言葉に、その人影……俺と同じくらいの長身で、長く艶やかな黒髪のその女性は、静々とメイド服のロングスカートの端を持ち上げた。

「この部屋に満ちた、見せかけの煙は、わたくしの仕業でございます」

 そのオバケ……謎のメイドさんは、俺とウラに向かって、恭しく一礼するのだった。

 いや何でメイドさん?

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