いつも隣の幼馴染み
初投稿です
妄想を形にしてみました
森下陸、高2。これと言った特徴は無い割りとどこにでも居るタイプの男。自分で言うのも難だが。
んで、そんな俺には物心付く前からのお隣さんで、物心付いてからは気が付きゃ隣(物理)にいる幼馴染みがいる。
何しろ家は隣で部屋も窓挟んで隣ときた。
当然ガキの頃から親に連れられたイベントやら何やらで常に顔を合わせるし一緒に行動した。
幼稚園の頃。アイツはどんくさいヤツで、積極的には動かない俺の側にいる事が殆どだった。
小学生の頃。テストがあまり良くなかったからとお互いの家を行ったり来たりで勉強をした。お陰で俺の理解度も多少上がったのは中々嬉しい誤算だ。
高学年になってからは囃し立てたりからかったりするアホが増えたがアイツは微塵も気にした様子は無かった。
その際に放った言葉は今も時々夢に見る。
─お母さんが言ってたの。関係無い人の言葉は雑音で、全部無視しても良いんだって。だから、これからも傍に居てね?
中学生の頃。性的な成長著しいアイツは色んな男から声を掛けられる様になった。
その悉くを鼻で笑いはね除け、見せ付ける様に俺の傍に来るのはどうかと思ったが。
別段付き合ってる訳でもないのにと言えば幼馴染みだからで返されるのが鉄板になった。
後から風の噂で聞いたのだが、声を掛けた連中に教師が混じってたらしい。よくもまぁそのザマで聖職者を名乗れたものだと驚いたものだ。
そして今現在…
「俺と付き合えよ。そこのチビより楽しませてやるぜ?」
「これは驚いた。どこまでも傲慢な上から目線な上に胸から視線が外れない。ここまで失礼なのは…まぁ両の指でも足りないくらいにはいたが私の大事な幼馴染みを無能扱いとは度し難い。最低限の礼儀すら持ち合わせず相手を自分が気持ち良くなる為の道具としか思っていないそのあからさまな態度で何故快諾が貰えると思ったのか一度頭を解剖してやりたい所だ。陸はどう思う?」
「帰っていいか?」
他人の告白現場に付き合わされるという苦行の真っ最中だ。しかも一度や二度じゃねぇ、高校入学してからずっとだ。
コイツは幼馴染みを何だと思ってるのだろうか…未だに理解出来ない。
「全くもって不愉快だねこれだから下半身で物を考える連中は最低だよしかも人をアクセサリーか何かと勘違いしているオマケになんだいあの無駄に溢れた自信はあの程度で本当に女が落ちると思っているならとんだお笑い様だ陸もそう思うだろう?」
「あー…まぁ、うん。そうだな」
夕焼けが街を染める帰り道だがあの手のイベントの後は必ず愚痴の帰り道になる。
口を開けば次から次へと飛び出す罵詈雑言の嵐。
見ろお前の外見に惹かれて寄ってきたのが回れ右して去っていくじゃないか。面倒が減るから助かる。
とは言え下手に溜め込まれても色々危ないのでここは大人しく聞きに徹するとしよう。幼馴染みの経験則というやつだ。
「その点陸はやはり最高だよ。流石私の幼馴染みだ」
「……なぁ空。一つ聞いても良いか?」
「ふむ。一つどころか聞かれた事全てに嘘偽り無く正直に知ってる限りの全てを答えると君の名に誓おう」
「いやそんな大層なモンじゃないんだが…その…だな。何でお前はまだ傍に居るんだ?」
「……それは私が傍に居ると何か不都合でも有るという意味かい?」
「いやそういう訳じゃなくてだな…」
「ああそういうことか。つまり陸は自分に自信が無いのだな?」
「ぐぬ…」
「まあ確かに?背丈は男性にしては小さめ、頭の出来は飛び抜けて良い訳でなく、運動も特筆出来る物は無い。家柄はそこらのごく普通な一般家庭で、人脈はむしろ狭いタイプだ。顔も普通なら気が利くタイプでもない。そんな自分に価値は有るのかと疑心暗鬼になっているのだろう?」
「いやまぁその通りだがもう少し手心というか…」
「そして自分で言うのもアレだが確かに私はモテる。顔は良いし何よりこのスタイルだ。身長は女子にしては多少高めだがこの乳はそれらを補ってあまりあるポイント。殆どの男はコレに釣られてホイホイ近付いてくる。実に鬱陶しい話だ」
そう言いながら数歩前に出、こちらに振り向く幼馴染み。その表情は真剣そのもので、思わず歩みが止まる。
「だが、だがね陸。君だけは違う。いやエロい目で見ているのは重々承知だ。女という生き物は君達男が思っている以上に視線には敏感なのだよ。しかし陸、君は私の幼馴染みだ。それも物心付く前からのだ。文字通り積み上げた時間が違う。そして何よりも、どんくさくふらふらしていた私を、傍に居る事を許してくれた陸を。私から拒絶したり離したりする訳が無い。それだけは、この私青上空が、胸を張って堂々と言い切れる事の一つだと言わせて貰おう」
「だから陸、君は何も気にする事は無い。有象無象がいくら叫ぼうが喚こうが、所詮は雑音。幼馴染みの言葉に勝るモノなど一つとして無いのだから。故にこれからも私を傍に置き、そして私の傍に居てくれ。頼むぞ」
そう言い切って薄くはにかんだ自慢の幼馴染みは、夕焼けよりも綺麗だった。
いつか長編にも挑んでみたいものです
お粗末様でした