髑髏のふたつの顔Sheet3:ブックの保護
川口からの問題が解決されないままの翌日。
お土産にフィナンシェを持った育美が来店した。
「へぇ、そんな事があったんですね」
川口とのすれ違いを惜しむ育美に事のあらましを大まかに伝えた。
「私なんて、そもそもエクセルにロックかけられるのも知りませんでした。簡単に出来るもんなんですか?」
「あーそれくらいなら俺でも出来るよ。教えてあげる」
エルの師匠としてたまには出来るところを見せないと…と、アキラがしゃしゃり出る。
いつの間にか店のノートPCを小脇にかかえ育美の隣に陣取った。
「まず、ここから[ファイル]、[情報] の順に選択します。そして[ブックの保護]、[パスワードを使用して暗号化] の順に選択します」
新規ファイルを作りながら育美にレクチャーする。
「そしたら[パスワード] ボックスにパスワードを入力し[OK] を選択…何かパスワード入れてみて」
「じゃあ"193"で」
「あぁ、"イ・ク・ミ"で"193"ね」
「あの…どういうことです?」
エルは合点がいかないようで胸元で挙手しながら質問する。
いつの間にかアキラと反対側の右隣りに坐っていた。
育美は両手に華でニヤケ顔が隠しきれない。
「あーえーっと、数字の1はイチを縮めてイ、9はクとも読むよな。同様に3は3つのミ。だからイクミ、育美さんの名前を数字で表す事が出来るってわけ。ダジャレとはちょっと違うけど、まぁ言葉遊びだな」
こういう言葉遊びの理解が乏しいところは異世界人らしいとアキラは思った。
まぁ、日本に来たばかりの外国人でもそれは同様に言える事なのだけれど。
「じゃあ、一旦保存して立ち上げるよ。そうするとパスワードを聞いてくる」
「すご~い。ここで193って入れるワケですね」
育美が入力しようとする手をエルが遮る。
「?エルさん…」
「これだわ。ずっと引っ掛かってた違和感の正体が分かったわ!育美さん、ありがとう!」
嬉しさのあまり育美に抱きつくエル。
「何だか分かんないけど、俺も交ぜて〜」
反対側から二人に抱きつくアキラ。
「あぁ〜っ☆♪→¥$€%゜#○*・〒々〆!!」
推しカプに両サイドから抱きしめられて悶絶する育美だった。