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髑髏のふたつの顔Sheet1:オムライス

その店はN市の歓楽街の外れにある。

スナック『エンター』。


性別不詳の店主アキラが営む小さな店。

従業員は自称異世界から転移したエルフのエルただ一人。

エルは耳の形がややユニークなだけで、特段魔法が使えるわけでもない。

客の大半は耳だって特殊メイクで、単なる客寄せの為の話題作りか厨二病をこじらせたキャラ付けだと思っている。

北欧系の顔立ちから不法滞在の外国人じゃないかと勘ぐる客もいる。


お昼の12時を少しまわった頃。

エルは先日常連客のグッさんからもらったタブレット端末(魔道具)を弄っている。


「またやってんのか、好きだね〜」

買い出しから戻ってきたアキラが声をかける。

グッさんにそそのかされた店のホームページ制作してるのだが、文字入力がもどかしい様だ。

「やっぱりキーボードあったほうがいいんじゃない?」

食材を片付けながらアキラが尋ねる。

「そうですね。お給料も溜まってきたし買おうかな、キー…文字入力の補助魔道具」

異世界的な言い回しもだんだん蔑ろになってきたエル。


アキラは店のサイトを作ってるんだから経費で買っても良いと言おうとした。

たが、エルは自分の稼いだ報酬で自分の私物といえる物が欲しいのかも知れないなと思い直した。


「そういや店名の"エンター"はキーボードのEnterキーが由来って言ったっけ?」

「あ、そうなんですね。なんでです?」

「Enterキーってさ、キーボードの数あるキーの中で一番デカイじゃん。存在感あって何かよくない?」

「そうですね。そうかも知れませんね」

エルは何がいいのかさっぱり分からなかったが話を合わせた。

だんだんこの世界の空気を読む術が身についてきた。


「キーボードは飯食った後で買いに行こう。昼飯何食べる?」

「オムライス」即答するエル。

「けっこうリクエストの頻度高いね〜。楽でいいけどさ」

エルがアキラと初めて出会ったあの日。

お腹をすかせたエルに振る舞ってくれた料理がオムライスだった。


アキラの作るオムライス、具材はサラダチキンとミックスベジタブル。ご飯(炊いてない時はパックのやつ)と炒めてケチャップで味付け、溶き卵を焼いて包んで出来上がりだ。


「ほれ、いっちょあがり〜」

「いつものアレが無い」

「ケチャップ?そろそろアレはやんなくて良くない?好きにかけてよ」

「何言ってるんですか。この料理はアレをやらないと意味がないのですよ」

「はぁ…」

「いいですか、感情操作の魔法は己の血液で身体の器官を描き、想いを詠唱する事で発動します。恐らく魔法が廃れたこの世界でもその名残りとして形が残っているのでしょう。血に見立てたケチャップでシンボル化した心臓を描き、想いを唱えるのです。さあ、やってください!」

早口でまくし立てるのは反論の余地を与えないためだ。

「分かった分かった、やるよやりますよ」

最初に冗談でやった事がここまで常態化するとは思ってもみなかった。


アキラは儀式めいた仕草をあしらいつつケチャップでハートを描くとこう唱えた。

「美味しくなあれ、萌え萌えキュン」

エルが満足げに微笑みスプーンを手に取った。

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