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どのルートでも死ぬヒロイン友人に生まれ変わったので、二度と生まれ変わらないよう徳を積みます  作者: なつの


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最終話

グロリアが見舞いに来た時、私はベッドの上で土下座した。

今回のことに巻き込んでしまった事を謝罪したかったから、けれど彼女はそんなに謝らないでくれと笑った。


「顔の火傷は?」

「ギルバート殿下が治してくださいました」

「そう。よかった……」


そこに心底安堵する。

顔に傷がある女はどのような理由であれ蔑まれる。

特に彼女は王子と交際しているのだ、最悪の場合別れる事になるのではないかとヒヤヒヤしていた。


「それと、治療ありがとう。グロリアのおかげで今生きることができている」

「本当は死にたかったって知ってますよ。無理に生かしていいものかとも思いました。でも私はあなたと一緒にまだまだ笑っていたいから頑張りました」

「それについては何って言ったらいいか……」

「何も言わなくていいんです。私がアンジェラさまが生きてるだけで幸せなんですから」


さすがヒロイン。

一点の曇りもない明るさだ。

私より困難な事が多かったからこその明るさなのかもしれないけれど、私はそれに救われてきた。

そして今も救われている。

そういえば、前世の時はこのヒロインの性格が好きなのもあってハマっていたんだよなと思い出す。


「ギルバート様とは仲直りできましたか?」


それにどう答えればいいか分からずとりあえず首を横に降った。


「お互いの思っていることはちゃんと話せたけれど、それをどう受け取って消化するかはまだ時間がかかると思う」

「もしかしてギルバート様いらしてないんですか?」

「目覚めた時にはいたけれど、その後は全く」


あれから2週間ほどになるが見舞いどころか手紙すらこない。

深く傷つけた自覚はあるので私から会いたいなど言えるわけない。

これであの人が離れていくのならば仕方のないことだ。


「お会いしたいですか?」

「お会いできるなら、今度こそ自分の気持を伝えたい」

「わかりました。そこはなんとかします」

「なんとかって?」

「私は王子の恋人ですから、そこのコネはいくらでも使いますよ。それにアンジェラさまは王子のクラスメイトで、王子はアンジェラさまを崇拝しているのですから。なんとでもできます」

「グロリア、強くなったね」

「王子の隣にいたいなら、うじうじしていないでシャンとしなさいって言ったのはどこのどなたでしたっけ?」

「私だ」

「はい、アンジェラさまです。だから私もアンジェラさまに一つよろしいですか?」

「なに?」

「女は度胸!です。私が場を整えます。だから頑張ってください」

「グロリア…」


まだ涙腺が緩い私はその言葉に泣いてしまった。

彼女の前で泣くなんて初めてで、それに動揺したのか心を見せてくれて嬉しいとグロリアも泣き始めて、二人で抱き合った。

そして私はグロリアに背中を押されて、ギルバート殿下に思いを伝えた。

本当は「好きです」や「愛している」と言えたら良かったのだけど、なんだか照れくさくて彼の言葉をそのまま使う形になってしまった。

それでも喜んでくれた彼を見て、あぁ、生きていて良かったと思ったのだ。



それからだんだんと前世の記憶、特に乙女ゲームに関する事が薄れていっていた。

未だにおかしな知識は有しているが、それが前世の記憶であるという認識は曖昧になっている。

きっとこれはまだまだこの知識を使って皆を幸せにし、徳を積めと言うことなのだろう。

もう徳がなんなのか分からなくなってきているが、良いことをすればいいのだ、たぶん。



「アンジェラ?」

「はい」

「どうした、緊張しているのか?」

「いえ、人混みは嫌だなと」

「これでも人数は絞ったんだが、さすがに結婚パーティーを開かないとなると外交に影響が出る。すまないな」

「いえ。お心遣い感謝いたします」


婚約披露パーティーは私のわがままで開催なしにしてもらえたが、さすがに結婚式を終えた後の諸外国に対する結婚披露はしなければならない。

これは王家に連なる者としての義務なのだから。


ギルバート様が起こした事件は、誰も咎められることはなかった。

この事に関して、私は一生王子に頭が上がらない。

目撃者が限られていた事と当事者たちである程度解決されたこと、そして王子を目の敵にしていたギルバート様の態度が軟化し、王子側に回った事もあり王子が内々に処理してくれた。

このパーティーが終われば、彼は次期国王として正式に認められ王太子となる。


「アン、これが終わったらすぐに出発だからな」

「準備は滞りなく」

「期間中、外には出さないつもりだと言うことは頭に入れておけ」

「それも耳にタコができるほど聞きました」


来てくださった方々に挨拶をしている合間に、ギルバート様はそんな事を囁く。

要は「ハネムーン中、ベッドから出すつもりはないから覚悟しておけ」という事だ。

退院した後、リハビリや結婚に向けての準備等で疲れ果てている私を心配した彼は一切手を出してこなかった。

私としてはそうなっても構わなかったのだけど、「ここまで来たらハネムーンまで待つ」と宣言されたのでその心づもりでいた。



ようやく長かったパーティーも終わり、ハネムーンの場所として歴代の王家の方々が使用している離宮へと到着した。

お互いに風呂を済ませ夜着に着替えたのだが、寝室に入った瞬間ベッドに連れて行かれ、優しく寝かされる。


「俺に愛される覚悟は?」

「十分に。あなたこそ私に愛されるお覚悟は?」

「願ってもないことだな」

「それはよかった」

「アン。俺の愛しいアンジェラ。お前が何者でも構わない、俺はお前を愛した。だから悪いが一生手放せないし、愛が返ってこないことに耐えられない。俺がまた過ちを犯したら一緒に死んでくれるか?」

「愛を表現する言葉は数あれど、あなたを満足させる言葉などこの世に有りはしないのでしょう?ひとつ言えることは前世から私はあなたが愛おしくて救いたいと思っていた。だから何度でもあなたを救います。過ちなど犯させません」

「それでも間違うことはあるだろう?」

「他に気が回らないほどに私を愛してくださればいい」

「違いない」



そして静かに私達は口づけを交わし、一晩中愛し、愛された。


……死にたいと願っていた私はもういない。




End

ここまでお読みくださいありがとうございました。

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