ねこホーダイの失敗について考える。~ペット産業の闇とねこホーダイの功罪~
ペット産業そのものを否定するものではありません。
ですが、現状の問題から、みんなで改善策を考えるきっかけになればと思います。
色々と物議を醸したねこホーダイでしたが、結果としてサービスの停止、及び利用者全員への返金措置という完全な失敗で幕を閉じることになりそうですね。
ねこホーダイは、その運用方法に大きな問題を抱えていたことは間違いなく、確かに殺処分される猫を減らしたいという大義があったとしても容認されない部分も多かったためと思います。
それでも、殺処分される猫やペット産業が抱える問題を周知するきっかけとして、ねこホーダイの一件はひとつの契機になったのではと思っています。
本稿では、先ずペット産業が抱える闇についてや、現状の殺処分の状況、保護の実態などを奴隷のわかる範囲で解説させていただいて、ねこホーダイの何が問題で、どうすれば良かったのか。
殺処分される猫を減らすためにどのようなことが必要かを考えてみたいと思います。
1 殺処分の状況
ここ10年ほどで犬、猫の殺処分は減少傾向にあります。
ですが、直近でも犬で年間5,000頭近く、猫に関しては年間24,000頭もの殺処分が執行されています。
犬に比べ年間の処分数が3~5倍と猫の処分数は多い傾向にあります。
2 周辺法の改正
こうした事実の改善の一助としてペットショップやブリーダーへの働きかけとして「改正動物愛護管理法(以下改正法)」が施行されています。
この改正法によって、平成25年には生後56日以下の動物を店頭に置くことが禁止されました。
この他にもブリーダーやペットショップでの管理の頭数制限やケージの大きさに関すること、衛生管理、運動スペースの確保などが後に追加されています。
3 支援団体の拡充や飼育者の意識向上
また、支援団体が増え、野良の去勢避妊支援や保護、飼育者への譲渡支援などが増えておりますし、飼育者の意識や知識の向上がここ最近の処分数の減少に繋がっていると思います。
4 ペット産業の闇
とはいえ、それでも現状でまだまだ殺処分される猫や路地で交通事故死する野良や放し飼いの猫、路地で病死する野良も多くいるのは事実です。
法改正は喜ぶべきことですが、反対に言えば、それだけ劣悪な環境が放置されていたことの証左でもあります。
もちろん、確りとしたブリーダーやショップがあることも事実ですが、ペットたちを「商品」としてしか見ていない関係者がいることも事実です。
こうした事柄を話すさいに奴隷が良く語る事柄を書いていきます。
ア スコティッシュフォールド
スコティッシュフォールドは日本では人気の種ですね。通信サービス大手のcmにも起用されていたと思います。
ですが、スコティッシュフォールドって国によっては品種として認められていなかったり、繁殖を禁止されています。
何故でしょうか。
スコティッシュフォールドはブリティッシュショートヘアの奇形種だからです。
人なつっこく、大人しく、かわいらしいスコですが、特に人気なのは耳のねている折れ耳のスコだと思います。
あの折れ耳の正体は先天性の「骨軟骨異形成症候群」です。
スコは産まれてきたうちの半分以上がこの病気をもっています。
「ただ耳が折れてるくらい」
と思った方はこの病気を甘く見ています。
折れ耳のスコの多くは障碍の度合いの大小はあれど「歩行障碍」を患う可能性があり、酷ければ、走ることはもちろん、歩くことも困難になってしまいます。
膝の軟骨が異形成され、膝蓋骨と癒着、周辺が腫れるために激痛とともに歩行を困難にするんです。
リュウマチで変形してしまった関節を想像していただければ分かりやすいと思います。
スコは大人しいといいますが、ヘタをすると関節の病変で激痛に耐えながら動けなくなっている可能性があるんです。
正しい知識があり、早期に対策してくれ、病変後もしっかりと飼ってくださる方ならいいのですが、歩けなくなったからと捨ててしまう無責任な人もいるのが現実です。
スコが品種として認められていなかったりするのはスコ同士のブリーディングが100%死産になるからでもあります。
スコはスコとブリティッシュショートヘアのブリーディングからしか繁殖出来ないんです。
彼等は人間の欲のために先天性の奇病を持って産まれる可能性が高いことを承知でブリーディングされている奇形種なんですよ。
イ チベタンマスティフ
これは犬の話となりますが、一時、セレブたちのあいだでブームとなった超大型犬種にチベタンマスティフがいます。
分厚い毛皮、大きな体、虎や熊すら倒すと言われるほどの体躯は迫力があり、どこか愛嬌のある顔とのギャップもあり人気がでて仔犬の価格が数千万から一億円くらいまで高騰したんですね。
中国では多くのブリーダーが、劣悪な環境で大量のチベタンマスティフを繁殖させたんですが、チベタンマスティフの人気はあっという間に終わりを迎えます。
大きすぎる体に強すぎる力、飼育するには困難なチベタンマスティフはセレブたちから、飽きられてしまいました。価格は一気に数十万からそれ以下へと下落。中国ではブリーダーたちが飼育を放置したために。大量の仔犬たちが劣悪な環境で餌も与えられずに捨て置かれ、保護団体が発見後も、譲渡先が見つからずに問題となった事件へと発展しました。
ウ 違法取引や違法販売
奴隷にはペット関連で働いていた知り合いがいます。
彼等は違法行為や道義的に問題のある行為に加担したことはありませんが、実際に本人から聞いた話や関係者から聞いた話として、以下に上げるようなことを聞かせてくれました。
爬虫類関連を取り扱っていた知り合いは、爬虫類のバイヤーの方から「違法取引」を持ち掛けられたことがあるそうです。
国際的に移動や飼育が制限、または禁止されている種だとしても、爬虫類は近い種との見分けが困難だそうで、希少種をそれ以外の種として偽装して国内に持ち込み、コレクターに販売するルートがあるそうです。
ニュースになったものでは税関でリスザルなどを不正に国内に持ち込もうとしたペットショップ店主が捕まり、連れて来られたサルたちの半数以上が押し込められた坪の中で死んでいた事件がありましたね。
また、こちらはすでに無くなったショップの話だそうですが、正規のワクチン摂取や必要な健診を受けさせず、「大人しい子のほうが売れる」からと餌を減らしていたショップがあったそうで。
何度もいいますが、確りとしたブリーダーやショップのほうが多いと思いますが、多くの仔たちが劣悪な環境で「商売の道具」にされている現実もあるんです。
ペット産業について話をしていて、奴隷が嫌っている事柄にメディアの安易なミックス紹介があります。
動物番組や朝の情報番組など、ペットブームにのり、ミックスを紹介していることがありました。
たしかに純血種のミックスはとてもかわいらしいと思いますが、そもそも血統を守られた純血種じたいが先天性の病気や免疫力の弱さなどのリスクを持っているんです。
ミックスによってどんなリスクが生じるかは未知数です。最悪は母子ともに死亡する可能性もある。
正直に言えば血統のコントロールで純血種をつくること自体が間違いだと思ってます。品種と呼ばれるものの多くが劣性による「奇形」でしかなかったり、血が濃すぎることで免疫不全に陥っていますから、「種」ではなく、意図的に作られた歪な「亜種」でしかありませんからね。
にも拘わらず異なる純血種どうしをリスクを考慮せず交雑させることを推奨し、ブリーダーやショップにたいして「◯◯と◯◯のミックスが欲しい」なんて要望が簡単に出せるようにしてはならないと思っています。
5 飼育者の意識と保護の実態
保護や支援を行う団体も、そのための費用では大変に苦労されているようです。
団体の方たちも、保護している動物たちも霞を食べてる訳ではありませんから、当然にこうした活動には多くのお金がかかります。
野良を保護し去勢避妊をボランティアで行っている獣医師の先生などは完全な無償労働ですからね。
こうした活動のおかげで殺処分の頭数が減少しているとしても、やはり活動の限界の問題はあると思います。人もお金も足りないが現状だと思います。
保護猫の譲渡では単身者や老人、乳幼児のいる家庭などは弾かれてしまいます。
理由は様々ですが、命を預かる上で不適切だとされるからですね。
勿論、上記のような方でも、ちゃんと飼育計画と環境を整えて飼育されている方もいると思います。
ですが、保護猫の譲渡に引っ掛かる方でもペットショップなら、購入して飼育者になれてしまうんですよ。
現状でペットを購入するための「資格取得」は存在しませんから、猫や犬をペットショップで買うことは無条件で行えます。
仔犬や仔猫に数万円から数十万円を支払って飼育者になろうとするなら、経済的に問題があるとは考えにくいでしょうが、ですが、猫の飼育は医療費がとてもかかります。
「ちょっと高いけど、スコ飼ってみたかったし」
と無理をして購入した方が、あまりにかかる飼育費用に手放すならまだしも、捨ててしまうこともあり得る訳ですね。
「命をビジネスの道具に」
「猫は環境変化に弱い」
「生命を軽んじている」
ねこホーダイに寄せられる批判は猫好きとしては理解できるものです。
そうした批判をする気持ちもとてもわかります。
ですが、ペット産業にかかわる多くの事象はまさしく上記の批判も免れないものです。
今回の件で怒りを覚えた方は、どうかペット産業全体の問題にも深く目を向けて欲しいと思います。
6 ねこホーダイの問題点と殺処分を減らすために
ねこホーダイについては「無条件無審査」を謳ってしまったことが最大の問題でしょう。
月額制とはいえ、¥380では間違いなく赤字です。
サブスクのサービスはあくまでもレンタルのみ、レンタル中ですら医療負担などは運営側ということなら、金額的に赤字なのは目に見えてますから「営利目的」ではなかったでしょう。
ですが、反対にそのことが「責任ある運営」を感じさせることが出来なかったとも思います。
レンタルされていく猫たちが安全でちゃんと飼育されるかの保障もなく、譲渡が増えることで引き受ける保護猫を増やしたとして、その子たちをしっかりと養い、医療を受けさせることが出来るのかが不透明でしたよね。
ですが、譲渡先の拡充で処分される猫を減らそうとしたことは評価されるべきです。
まず「無条件無審査」をやめて、月額の料金も引き上げ、保険会社などと組んで、レンタル中の医療負担などの保険制度を構築する。
独居者や老人の譲渡者には地域の老人支援や独居支援事業者と連携して定期的な訪問を行う。
運営側からもレンタル中の抜き打ち監査をする。
老人ホームや病院などへのアニマルセラピー用のレンタル事業などを併せて展開する。
少し考えてみましたが、このような改善をするだけでも、譲渡拡充のひとつ手段になり得るかと考えます。
ペット購入に関しては「資格制」にする。ブリーダーやショップへのさらなる改正法の施行なども必要だと思います。
保護団体への助成の拡充、寄付の周知、ペット購入を考える方に、まずは保護猫を引き取る選択肢を増やしてもらうことも大切だと思います。
ペット産業で働く人を考えれば早急すぎる改革は難しいと思いますが、ペットを考えたとき、まずは保護猫、保護犬を引き取ることを選ぶ社会、ペットショップなどでも、そうした保護猫、保護犬の譲渡のための仲介事業への参入などが出来ていけばと思います。
勿論、こうしたことは法的なハードルもありますから、事業者だけでは実現しないと思いますが、官民一体で取り組みが進むことを願っています。
いつか、保護される猫や犬がいなくなり、資格取得したブリーダー、ショップ、飼育者により、幸せな生を送る猫ちゃんだけの世界を願っています。
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