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現代×魔導 第一章 第五話 呪詛魔導士事件  作者: マグネシウム・リン
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6

「うん、うん、大丈夫。じゃあ、切るね」

 暑くて、寒くて、面倒な9月の天気/カナは空調は切って窓から吹き込む風にあたっている。

 日が陰ってきて風が冷たい/ぶかぶかのマウンテンパーカーの襟を詰める/ひとつにまとめたポニーテールが首元をくすぐる/スマホから手を離すと魔導で浮遊し、緩慢な動きでオフィスデスクに着地した。

 10月に帰省できそう──ニシの事を考えていたら自分も帰省したくなった/有給が取れる。帰省するのは養子先の神社/2つ目の実家/1つ目の実家にはまだ連絡を入れていない。

 2つ目の両親は相変わらず/光を祀るという不思議な神社/信仰というより古くからある地域の風習/光の天賦をもつカナが養子に行ってからはさらに氏子さんが増えた。

 電話で聞いたこと=雑誌にパワースポットとして紹介され、観光客が増加/非課税の収益が増加/10月の例大祭は盛り上がりそう。

 それなら光の巫女としてひとつ、魔導を披露してあげるのも悪くない。

 カナの細い指先が印を結ぶ/軽やかに流れ出すマナはまるで魔導の四重奏(カルテット)だった。

「龍神!」

 出現した光球が次第に形を変えミニチュアサイズの龍の姿に/いかつい飛龍(ワイバーン)というよりもドラゴンボールに近い/先週のマジカル★ガールで見たモンスターキャラ。

「うーん、ありきたりかしら」

 電話口では2つ目の両親は、どんな魔導でも良いと言ってくれた/しかし聴衆をあっと言わせるような魔導を披露したい。

「光。金色。金色(こんじき)の草原……」

 古いアニメ映画のラストシーン/再現しようと指が印を結ぶ/しかし諦めた=元ネタがバレてしまっては恥ずかしい。

 カナはニコニコ/金色に光る小さい龍を空中に泳がせる。

 2つ目の家族での思い出=光の巫女として頼られ、魔導工学を学んで頼られ、常磐興業で重責を任せられ、ニシもたぶんきっと絶対、私を頼ってくれているはず。

 私=最高の魔導士/最高にイケてる才女。

 それ以前の過去/1つ目の実家=最低だった私。誰からも頼られない/普通じゃないとのけものにされた。

 あの夏の日=ニシとニシが預かっている子どもたちと海へ行った日/子どもたちはかつての私と違っていた/魔導士に誇りを持ち自尊心に満ちていた=きっとニシが一緒にいたから/それなら私もニシと一緒ならもっと輝けるはず。

「じゃーん」

 ノックなし/前兆なし=オフィスの入口のドアが開け放たれる/低身長&赤い左右非対称(アシメ)が揺れている。やや湿ってる髪=シャワーを浴びたばかりのリン。

「──なに?」

「あ、そこ! 面倒くさそうな顔をしないの!」

「作戦報告書なら社内SNS(スカッシュ)で確認したわよ。電子署名(サイン)したでしょ」

「ニヒヒ、そんなつまんないことじゃないんだよな」

 仕事=自分自身の存在証明/価値の実証/仕事はつまらないわけない。

 リンはニタニタ笑いながら歩み寄ってきて、手の内から鍵をブラブラと下げてカナに見せつけた。

「なんでしょう?」

「鍵。古臭い金属の鍵」

「ニシのうちの鍵」

 どきり。鍵? 合鍵? リンが鍵を持っている=そこまで()が進んでいたなんて。


挿絵(By みてみん)


別に(・・)。だからなんだっていうの」

「アハハハっ、デコちゃんはわかりやすいなー。瞳孔と鼻の穴を見たら動揺してるのがまるわかり。あ、ちなみにこれは捕虜に対する事情聴取の古典的な手法」

「ふん、ばかばかしい」

「そうやって体の前で腕を組むのも、嘘をついている証拠。とまあ、デコちゃんをおちょくるのはそこまでにしといて。ニシに頼まれたの。しばらく留守にするから子どもたちの様子を見てきてほしいって。明日と明後日はあたし、非番だし。でもねー子供5人を相手にするのはちょーと気が引けるからデコちゃんに声をかけたってわけ。行きたいでしょ」

「行ってもかまわないけど」

 カナは顎に手を当てて考えてみた=いつもの癖。

 この前、海へ行ったとき子どもたちとは打ち解けることができた/同じ魔導士/同じニシを慕うもの同士。ここでニシのうちに訪れる機会を作っておけば、ニシに近づくための外堀(・・)を埋めることができる。

「ニシの好感度を上げられる、とか思ってないよね」

 リン=いつものニタニタスマイル。

別に(・・)そんな事思ってないんだから。こうみえて、子供受けはいいんです。いいわよ。行ってやろうじゃないの」

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