表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代×魔導 第一章 第五話 呪詛魔導士事件  作者: マグネシウム・リン
2/20

プロローグ

挿絵(By みてみん)


 常磐興業 東京潰瘍監視基地=塀と有刺鉄線とAIが監視するカメラに囲まれた民間の軍事基地兼魔導工学の機器&兵器の実験施設。

 旧大田区/眼前にはかつての東京を覆う漆黒のドーム=潰瘍。その周囲を高さ50mの共振器が抑制フィールドを展開/潰瘍の拡大を抑え込んでいる。

 背後=利根川/その対岸は更地がまだ広がっている。そのさらに向こう=川崎市と横浜市の新市街=魔導機関を搭載したプリントアウト工法で雨後の筍のように半年で摩天楼が出現/いまや新東京と争うように巨大化しつつある。

 カナは自分のオフィスの窓枠に寄りかかった/ここから見えるのは潰瘍だけ。

 両手はぶかぶかのマウンテンパーカーに突っ込む/背中にデカデカと常磐のロゴが入っている。

 魔導で浮遊するかわいい猫ちゃんがプリントされたマグカップ/立ち上る湯気がエアコンの冷風で揺らいでいる/漆黒色の液体=ブラックコーヒー。

 ニシのマネをしてこれを選んでみた=福利厚生の一環/ネスカフェのカートリッジ式の全自動ドリッパー/自分で買うと少々値が張る一品。

 感想=苦い。機械油が間違えて口に入ってしまった時がある=それと同じ。

 濃いコーヒーの香り=朝のニシの香り。バレないように毎日楽しんでいた/朝のルーティーン。

 起動しっぱなしのPCはスリープモードに切り替わった。仕事をする気=ゼロ。

 大学院へ提出する魔導工学の論文=完了。

 本社へ提出する強化外骨格(APS)の月間運用報告書&稟議書(りんぎしょ)=完了。

 差し迫った仕事=新東京で行われる安全保障審議会の資料/PCモニターの(リム)に貼った付箋が締め切りを教えてくれた/広瀬所長ともども出席しないといけない=面倒。

 そんな気だるい朝/ニシの香りの無い朝=苦手なブラックコーヒーを流し込んで忘れることにする。

「やっほー、デコちゃん」

 予兆なしに開け放たれるドア/弾けた元気玉が出現/少女に見えるがアラサー& 左右非対称(アシメ)の赤い髪がぱたぱた揺れている。これでも狙った獲物()は逃さないさながら都会の肉食獣(クーガー)

「あーほらそこ。“めんどくさい”って顔をしないの!」

 リンが吠える。

「年相応に落ち着いたらどうなの、ちびっこ隊長」

「そんなに落ち着いているとっていわれちゃうぞー。あ、デコちゃんは四捨五入したら30歳だしね」

「まだそんな歳じゃないです!」

 カナはきっぱりと断った/早生まれの24歳。

 リンは空いているオフィスチェアに勝手に座るとキィーキィー金属音を立ててゆっくり回転する。

「で、何の用なの?」

 カナは回転する 左右非対称(アシメ)を目で追いなが問い詰めた。

「暇だから来た」

「なにそれ。私への当て付け?」

「そーんな女々しいことをするはずないでしょ。でもデコちゃんはぜんぜん忙しそうには見えないけど」

 カナは顎で壁に貼ったホワイトボードを示した/左右半分ずつ、半月のスケジュールを書き込むタイプ/今どきローテクなスケジュール管理/To doアプリよりもこちらのほうが直感的で使いやすい&忘れにくい。

「こんど常磐と防衛省との審議会が新東京の第一ビルであるの。その資料を作んなきゃいけない。広瀬所長が出席するんだけど私も一緒に出席しなきゃいけない」

「ふーん」リンは天井を見てやや考えた「すごいじゃん。政府のお偉方と話すんでしょ」

「話すのは広瀬所長。私はその補佐。資料と言ってもまあ社内SNS(スカッシュ)のデータを引用するだけだから」

 リンは人差し指と親指で銃の形を作ると今日の日付を狙った。

「今日の潰瘍の監視ポスト交換作業。C型怪異がうろうろしてるから魔法使いの力が必要なんだけど」

魔導士(・・・)ですが」

「ニシは休みを取ってるんでしょ。デコちゃんが来てくれるの?」

 仕事はシフト制/休みを取ると言うより2週間分の仕事をずらしただけ。

「ええ」

「忙しいんでしょ」

別に(・・・)私は天才ですから。C型怪異なんて雑魚だし」

「大好きな男のため一肌脱ぐってわけね」

 リンが言うといちいち艶やかな物言いに聞こえる/一見すると耳年増な中学生/しかしアラサーなので年相応。

「ニシは入社してから全然、休暇らしい休暇を取ってないの。いいでしょそのくらい。それに実家に帰省するっていう話だったし許可するしか無いでしょ」

「ふーん」リンは天井を見ながら両足を宙に浮かせる=魔導式機械義肢が本物の足のように駆動している。「寂しいね」

別に(・・)、私はそんなことないし」

「バカね、あたしが寂しいの」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ