46 連続誘拐犯(7)
前回までのあらすじ アリスはリンがとらわれている牢屋へ突入した。
この空間にはいくつかの牢屋があり、さらわれた子たちが一人ずつ入れられていました。あっちと同じようにここもぼんやりとした光に照らされています。隊員さんは近くの牢屋の前に立って、鉄格子を眺めながら言いました。
「これ、魔法でかなり強化されてるわね。んー、どうやってこの子たちを助けたらいいのかしら」
その言葉で空気が変わります。捕まってしまった子たちの間に希望が生まれたようで、「よかった……」「私たち、やっと出られるのね」という会話や、すすり泣く声が聞こえてきました。
「強化されてるんだったら、さっきの魔法使えばいいんじゃないですか?」
「そうしたら、私たちみんな埋もれて、あっという間に集団墓地が一つ出来上がっちゃうわ。あれだと強すぎるのよ」
「じゃあ弱くすればいいんじゃ」
「それじゃ、これを壊せないわ」
「うーん。あ、そうだ! あれを使えば!」
少し考えて、思いつきました。「なにを?」と首をかしげて問いかけてくる隊員さんに私は言います。
「隊員さん、私の本気を見ててください!」
「え?」
私は隊員さんを連れて、リンの牢屋の前まで来ました。サザンカもついてきています。リンは眠っているのかぐったりとしています。
「リン! 大丈夫!? 今助けるからね!」
「んん、アリス? 馬車にひかれたって聞いたんだけど、なんでここに」
私の声で目を覚ましたリンは、起き上がりながら言いました。
「ひかれてなんかないよ。私はリンが誘拐されたって聞いたから助けにきたの。私たち、友達でしょ?」
「そうか、アリス、無事だったんだな……よかった」
「ばか……リンは私の心配する前に自分の心配しなよ」
言いながら、私は鉄格子を両手でつかみ外側に押し開きま……あれ、びくともしません。え、なんで?私、本気出してるんだけど。
「ん~~!」
悪戦苦闘をはじめた私の肩をたたき、「あなたの本気は見せてもらったわ」と隊員さんは言います。
「いやこれは違くて……その、『本気を出したいときに使う魔法』っていうのがあってですね」
「それも知ってる。さっき読んだわ。いったん落ち着いて冷静に考えなさい。いくら本気を出したからって、強化された鉄格子が曲がるわけ……サザンカ、どうしたの?」
サザンカのほうを振り返ると、落ち着かない様子で動き回りはじめ、やがて「ふせ」の体勢を取りました。
「……分かったわ。アリスちゃん、いったん上に戻るわよ。あいつらがこっちに来たみたい」
「はい……ごめんね、リン。助けられると思ったんだけど、なんもできなかった」
「あたしは、アリスが来てくれただけでうれしいよ。そうだ、あたしがここから出たら宿題見せてくれよ。今日、先生に会ったときに約束しただろ」
「うん、いいよ。好きなだけ見せる。だから、もうちょっとだけ待ってて。またすぐに帰ってくるから」
隊員さんに手伝ってもらい上に出ると、だんだんあいつらの声が近づいてくるのが分かりました。