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おつかい魔法使い~お師匠さまなんてもの運ばせるんですか!~  作者: ダイニング
2章 まともなおつかいじゃないですか!
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11 人助け助け(4)

前回までのあらすじ ローズはフライドポテトを食べた。


 探してみた結果、「犬がいなくなったときに使う魔法」はなかったんですけど、「飼っている動物がいなくなったときに使う魔法」はありました。


 ただ、これを使うには探す動物がよく使っていたものが必要みたいです。ローズの家に行かないとだめそうです。


「君の犬がよく使ってたおもちゃとか持ってない?」


 念のため聞いておきます。もし持ってたらすぐに探しにいけますしね。


「タイムが使ってたおもちゃ? いったん家に戻らないとないわね」


「それが魔法に必要みたい」


「え? 本当にあったの、その魔法」


 驚いたような声で、ローズは言いました。さっきより、表情が明るくなった気がします。


「『飼っている動物がいなくなったときに使う魔法』だから、犬限定じゃないんだけどね」


「ふーん、ま、タイムが帰ってきてくれるなら何でもいいわ。わたくしの家に行くわよ。あなたたちもついてきなさい」


 ローズは立ち上がりました。もちろん私たちはついていきます。今度は、「ついてこいなんて言ってないんだけど」とは言わせません。


「あ、そうだ。ローズ、これ飲む?」


 私は、手さげかばんから瓶を一本取り出して言いました。


「なによ、水?」


「うん。汗かいてのどかわいたでしょ?」


「気が利くのね。もらっておいてあげるわ。貧乏人だと思ってたけど意外と余裕あるのね」


 余裕……? 何を言ってるんでしょうこの子は。水なんてそんなに高いものじゃないと思いますけど。


「この量だと八百ゴールドくらいかしら?」


「いや、五十ゴールドだったけど」


「まあ! もしかしてこれ、貧乏人の水!? でも、もらったからには飲んであげるわよ。『ノブレス・オブリージュ』ってやつね」


 そう言うとローズは、瓶をくわえて真上を向き水をがぶ飲みしはじめました。私みたいな「貧乏人」でもこんな飲み方しません。


「ふう。仕方ないから飲んであげたわよ」


 瓶の中身が空になると、ローズは腕で口元をぬぐい、言いました。


「うわ、なにそのきったない飲み方。よっぽどのど渇いてたくせに、まだ上から目線でそういうこと言ってるんだ。人に言われないと『ありがとう』のひとことも言えないの?」


「さっきからあなたのそういう上から目線でお説教してくるところが鼻につくのよ。ありがとう! これで満足?」


「ふん、どういたしまして!」


 私たちは体を向け合っていましたが、顔はお互いから背けていました。駄菓子屋のおじいさんが椅子に座り、机の上で足を組んで昼寝をしているのがガラス越しに見えます。


 さっきから私たちの間から少し離れて様子を見ていたリンがにやにやして口を開きました。


「なんか、お前らって仲いいよな」


「仲良くないし!」


「仲がいいわけないでしょう!」


 私たちは同時に反論しました。




 詰め所の前を通って東のほうへまっすぐ進み、川にかかる橋を越えてしばらく歩くと、ローズのお家に着きました。大きなお家です。


 でも、門のところから見ていると、あまりにも庭が広いせいでかえって小さく見えます。


 先生のお家も大きかったですけど、それを三つ、つなげたぐらいの大きさだと思います。だから、私のお家でたとえるとだいたい六個分ぐらいになるんですかね。


 それに、さっき私たちがここに着いたときには、汗だくの召使いらしき人が、息を切らして出てきて、「お嬢様がご無事でよかったです。家の中にも外にもいらっしゃらなかったので、てっきり誘拐されてしまったのかと心配で心配で、今、警備隊に通報しようかと思ってたんですよ」って早口で言ってました。


 召使いなんて初めて見ましたよ、私。あと、門も。タイムを探すときには必要ないので、とりあえず足元に荷物を置こうとするとローズは言いました。


「そんなところに置いたら捨てられちゃうわよ。置くんだったらこっちに置きなさいよ、全く」


 ローズは庭の中に入り、私たちにも来るようにうながしました。


「あ、ありがとう」


「いいわよ別に。タイムのことを探してくれるわけだしね」


 あ、杖はちゃんと持っていかないとね。




 ローズは、タイムがよく遊んでいたというおもちゃを持ってきました。


「これで大丈夫かしら?」


「たぶん大丈夫じゃないかな」


 私は、破り取ったページを握りしめて、そこに魔力を流します。大気中に散らかってる魔力を取り込んで紙に移す作業です。あんまり慣れてないので、しっかりきっちり力を込めてやらないといけません。かなり体力を使います。


「もういいんじゃないか?」


「いや、もうちょっと」


 念には念を入れて、しっかりと魔力を通します。ここまでやれば大丈夫、なはず。目を閉じてみると、ちゃんと黒くて大きい犬の様子が見えました。一心不乱に穴を掘っています。これがタイムかな?


 見る限り、周りは完全に壊れてしまったり、九割方破壊されてしまったりしている倉庫や建物ばかりで、あまり復旧も進んでいないようです。


 恐らく数日前に触手が大暴れしたあたりにいるのでしょう。私は手さげかばんから地図を取り出しました。


「よし、見えた。じゃあ行こうか」


「おー、なんか気配が変わったな、アリス」


「確かに、今までのあなたとは違うわね」


 二人は同じようなことを言いました。特に何にも変わってないような気がするんですけどね。


「で、どこにいるの? 早く案内してちょうだい」


 ローズにせかされて、私たち三人は静かな住宅街を早足で進んでいきました。


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