98.開門
私は竜王子カイルーンを磁石化させて動けなくした。
「すごいでござる! びったんてくっついてるでござるなぁ!」
私たちの前には雷を帯びた竜がもだえている。
下半身を電磁石、上半身を鉄に変性させたのだ。
てゆーか、動けないのによく宙に浮いてるわね。これも電気使ってるのかしら。
『なんて強力な力……貴様! さては地上の魔女だな!』
「いえ、ただの錬金術師よ」
『錬金術師だと!? 石を金に変えるという、あの!』
「そう、その」
なんだ天上で暮らしてるけど結構地上の情報も知ってるのね。
『なるほど……地上の錬金術師は今、貴殿のように進歩しておるのだな!』
前言撤回なんか常識知らずのあほっぽいぞこいつ。
「マスター。この竜からはマスターと同じ匂いがします」
「馬鹿って言いたいのか? お? ロボメイドさんよぉ」
「いえいえ、ただちょっとばかり頭が足りないかと」
「よしバトルしようぜ。おまえサンドバッグな」
私とシェルジュが取っ組み合いをする。
一方でカイルーンが頑張って頭を下げる。
『すまなかった、地上の気高く美しい錬金術師殿よ! 非礼をわびよう』
「ふ、ふぅん……ま、まあ? 謝るなら、許してやるか」
別に気高く美しいと言われたから、コロッと心代わりしたわけじゃないんだからね。
勘違いしないでよね!
私は鉄化を解いてあげる。するとすぐに竜が動けるようになった。
私たちの前までやってくると、改めて、頭を下げてくる。
『申し訳なかった。貴女を来訪者として認めよう』
「なんかずいぶんあっさり認めるのね」
『神竜は戦いを通して相手の魂の真価を見極めるのだ』
なるほど、とシェルジュがうなずく。
「ヤンキーがけんかを通して仲良くなる、あれですね」
「どれだよ」
しかし戦っただけで相手認めるとか、どんだけ脳筋なのよ……。
『門を開こう』
がば! とカイルーンが口を開く。
魔法陣が出現したと思った、そこに巨大な門が現れる。
ごごご……と扉が開く。
『ようこそ、竜王国スカイ・フォシワへ。心から歓迎しよう』




