72.海! 水着! 美少女!
……フォティヤトゥヤァでの騒動から、数日後。
「「「海だー!!!!」」」
奴隷ちゃんズが、海に向かって走り出している。
そこは白い砂浜、輝く太陽、そして椰子の木……。
そう、ここは南国の島。
正真正銘の無人島……。
「わぁ! 見て見てスィちゃん! 海が緑色なのです!」
「……!」
空色髪の可愛いうさ耳奴隷ちゃん、ダフネちゃん。
ワンピースタイプの水着をみにつけている。
お尻にウサギのまんまるな尻尾があってそれがまたキュート。
ダフネちゃんと手をつないでるのは、水精霊のスィちゃん。
こちらは身体が水でできてるということで、自分の肉体を変形し、こちらもワンピースタイプ水着。ふりふりはない。
胸には【すぃー】とネームタグが貼ってある。きゃわいい。
「うぉー! ゼニス! すごい、魚があんなに泳いでるぞ! せっしゃちょっと獲ってくる~!」
「…………」
火竜人のトーカちゃんは真っ黒なビキニだ。
スタイルがいいので、ビキニが似合う。
で、ゼニスちゃんはというと……。
「あら、どうしたのタオルなんて巻いて」
「……だって、セイ様にこんな、貧相な身体を見せられません」
おやまぁ。
別に気にしないのに。
しかし……どんな水着なのか。気になる。気になるなぁ……。
「見せて?」
「……はい」
「いいの?」
「……セイ様が、みたいとおっしゃるのなら」
ゆっくりとゼニスちゃんがタオルを取り払って、私の前に素肌をさらす。
シミ一つない、真っ白な、きれいな肌。
くびれた腰にきゅっと引き締まった太もも。
「めっちゃきれいじゃん! どこに隠す要素あるのよ」
「……だって、胸が」
「はぁ? 胸なんてステータスの一種でしかないでしょ? きれいよほんとに」
「…………」
エルフ耳が真っ赤に染まってしまい……。
彼女は海に向かって走って行った。
「ジゴロマスター」
「……なによ、シェルジュ」
ロボメイドもまた水着姿だ。
青いツーピース水着に、腰にはパレオを巻いてる。
麦わら帽子にサングラスという、なかなかパンクなファッションだ。
皮膚パーツは人間の材質に近いよう作ってあるし、水は弾くようになってる。
だから、海に普通に入れる。
「どうでしょう?」
「どうって?」
「だから……ゼニスのように、ほら。感想を」
「まー……普通?」
ぷくっ、とシェルジュが頬を膨らませると、そっぽ向いてしまう。
「普通にきれいよ」
「…………そゆとこですよ」
「は? どういうとこよ……」
人間に進化したシェルジュは、めんどくささが加速していた。
「マスターは、なんですかその格好」
「え? なに?」
水着に上から防水パーカーを着て、頭にスカーフを巻いて、サングラス。
「そのもっさい服装はなんだというのです」
「日焼け対策」
「魔法の日焼け止め作ってたじゃないですか」
「あれは奴隷ちゃんズの柔肌を守るためのお薬。まあ私も塗ってるけど。日差しって……あ、こら! 取るな!」
シェルジュに上着を取っ払われる。
「「「おおー!」」」
ダフネちゃんたちが近づいてきて、目をキラキラさせる。
う、注目されると恥ずかしくなるわね……。
「おねえちゃん、きれー!」
「…………」こくん!
「主殿は頭が良いだけでなく、見た目も麗しいなんてすごいですな!」
「……お美しい、です。天使様……です」
やーはずかしいわー。
一方シェルジュはじとーっと私を見つめている。
「なによ?」
「……研究ばかりしてるのに、どうしてそんな美肌なんですか?」
「いちおう肌ケアしてるからね。化粧水で」
錬金術師の私は、ちょちょいと、肌を守るお薬まで作れちゃうのよね。
「チートやチート薬師や」
「薬師じゃないわ、錬金術師」
「はいはい」
……さて。
そんなこんなで私たちは、無人島にバカンスに来てる。
ここがどこかというと……。
「セイぃいいいいいいいいいいいい!」
アホ師匠が私に向かって突っ走ってくる。
私はそれをひょいっと避ける。
そのまま海に突っ込んで、激しい水音を立てる。
「……そのまま窒息して死ね」
「相変わらず師匠には辛辣ね」
ここがどこか?
師匠……ニコラス・フラメルの工房のひとつだ。
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