68.魔神を完璧に撃破する
炎の魔神を氷漬けにした私。さ、早く奴隷ちゃんズを追わないと……!
『ぬぅううん! きっかーーーーーーーーーーーーーーん!』
ばりんっ、と氷の塊をぶち破ると、魔神が自由になる。
うげ、まだ生きてるの……だるぅい……。
『残念だったな! 我の命は7つある……! 一度殺したくらいでいい気になるなよ小娘ぇ……!』
「一回死んだんかい」「バリバリ効いてますやん、以上」
『やかまっしぃいいいいいいいいいいいいいいいいいい!』
魔神が拳を振り上げて、地面に思い切りパンチを食らわせる。
凍り付いていた周囲の大地が、一気にマグマ地獄へと変化した。
私もシェルジュも空を飛べるので焼け死ぬことはなかったけど……。
「まあ、やっかいね」
「やつを完全に殺しきるためには、氷獄ポーションが足りません。以上」
めちゃくちゃに投げまくった結果、一度しか殺せなかったものね。
「シェルジュ、残りの氷獄ポーションは?」
「残り1つです。以上」
「あらら。錬金術師の弱いとこよね。強さがポーションに依存するとこ」
魔神が私を見て不敵に笑う。
『くはは! もう終わりか錬金術師ぃ!』
やつが地面をだんっと! と踏みならす。
その瞬間、私たちを狙って、地面のマグマが吹き出る。
左右に回避する私たち。
次に飛んできたのはマグマのつぶて。
人間の身長くらいの塊が、ものすごいスピードで、すごい数飛んでくる。
『ふははは! 潰れて焼け死ねええ!』
「ほいほいほいっと」
ひょいひょいひょいっと。
『なにぃい!? なぜよけられる!?』
「動体視力も強化されてるんだよ。シェルジュ! 時間稼げ」
「了解」
両手に魔法機関銃を取り出して、一斉掃射する。
ずだだだ! と銃弾が連射されるも、魔神の体にぶつかる前に蒸発する。
『こんなちゃちなおもちゃで我が輩の炎を攻略できると思ったかぁ!?』
「いーやまったく」
だから、これは時間稼ぎなのだ。
シェルジュが馬鹿魔神の気を引いてる間に、私が活路を見いだす。
外部から冷やすが駄目だった。
ならば攻略法は一つ。
私は錬金工房を展開する。
どこでも持ち歩ける、錬金術工房。
透明な立方体のなかに、ついさっきシェルジュから受け取っておいた、ストレージされていた素材をぶち込む。
新たなる魔法薬を即興で作り上げ、私はその手の中に新しいポーションを完成させる。
「おっけーシェルジュ。完成したわ」
シェルジュがうなずいて射撃を中止する。
ふふん、と魔神が得意げに笑っていた。
『何が完成したというのだ? この全身が魔の炎でできた魔神を、どうやって殺す? 氷であと6度殺す必要があるが?』
「そんなの必要ないわ。食らいなさい!」
私はシェルジュに目配せしつつ、ポーション瓶を炎の魔神めがけて投げる。
炎のつぶてを飛ばしてくる。
ぱりん……!
私の投げた瓶が壊れる……。
『馬鹿が、何かしてくるとわかっていて、易々と浴びるものがどこにいる?』
「ええ、まったく」
『なっ!? 貴様いつの間に背後に!?』
シェルジュが接近して、ポーション瓶をランチャーにセット。
そのまま瓶を照射する。
私が気を引いてる間に、あの子はやつの背後に回っていた。
瓶はこっそりと渡しておいてね。
ちなみにさっき投げたのはただの水だ。
あとはランチャーからポーション瓶が射出。
それが魔神にぶつかる。
ぱりん……!
『ふん! 何をすると思えば、単なる瓶をぶつけただけか!』
「まさかでしょ」
その瞬間……。
『う、ぐ、あああああああああああああああああああ!』
魔神の体が赤く輝きだし、溶け出したのだ。
それは赤い液体といえば良いか、とにかく体の形を保てていないようだ。
『なんだこれは!? 体から力が抜けるぅうううううう!』
「冥土の土産に教えてあげておこう。それは魔力変換ポーション」
『魔力変換だと!?』
「そう。魔法を魔力に変換するポーションだよ。あの液体をぶっかけられたあんたは、体が魔力に分解される。魔法の炎でできた体だって、自分から明かしてたわよね?」
魔神の体がどんどんと溶けていく。
魔法をいくら使っても、全部魔力になってしまうんだから。
あとはドロドロに溶けた液体(魔力を水に溶かしたもの)に、ポーション瓶の口を向ける。
大量にあった中身が瓶の中へと吸収されていった。
魔神の体はすべて魔力へ変換されて、あとはポーション瓶の中に封印完了。
「よし、魔神撃破&高密度の魔力ポーションげっとだぜ!」
飲めば魔力を回復する薬にへと、魔神は変換させられたって訳だ。
「さすがマスター。魔神すら完璧に倒してしまうとは以上」




