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06.奴隷、ゲットだぜ!×3



 私、セイ・ファートはサンジョーの町へと到着。


 信頼できる情報収集源が欲しいってことで、奴隷を購入することにした。


 若くていいから、怪我病気してる子をちょうだいな! と奴隷商人の主に注文したんだけど……。


「どーしてこうなった……」


 私が居るのは近くの安宿。


 その部屋には、【3人】の奴隷がいる。

 3人よ、3人。いや、そんなに要らないから……! 1人で十分だから!


 って思ったんだけど、どうやら訳ありらしい。


 この3人は同じ主の元にいて、まあその……そこの主がひっどいひとだったらしい。


 まず、一人目。一番年齢が高い。たぶん十代後半かな。


「えっと……あなたがトーカちゃん……ね」

「…………」


 こくり、とうなずくトーカちゃん。


 蜥蜴人リザードマン……だと思う。

 二足歩行する、大きな赤いトカゲ……だと思う。


 なんであやふやかって?

 部位が大分ないからだよ!


 蜥蜴人なのに、うろこが全部ひきはがされてる。うろこを取った魚みたいで痛々しい。


 また、右目が潰れてるのか、眼帯をしている。尻尾も切断されて、右手と左足がない。


「おうふ……トーカちゃん、よく生きてるねそれで……」


「…………」


 またもこくりとうなずく。あんまりしゃべるのが得意じゃないのかな。まあ……初対面だし、ひどい目にあってきただろうしなぁ。


「で、後の2人は……【ゼニス】ちゃんと、【ダフネ】ちゃんね」


「……はい、ご主人様。ゼニスです」「……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 ゼニスちゃんは、青い髪をした小さな女の子。人間……だよね。多分。


 きちんと私を見て挨拶をしてきたあたり、知能は高いのかも。


 ただ、体のあちこちにあざがあった。また……。


「あなた、目が見えてないわね」

「その通りです、ご主人様。申し訳ございません、こんな役立たずで」


 さっきから私の顔ではなく、見当違いの方を見ているから、そうじゃないかなって思ってた。


「で、最後はダフネちゃんね」

「ひぐう! ごめんなさいごめんなさいぶたないでぇ……!」


 ダフネちゃんは、たぶん獣人だ。ラビ族だと思う。


 たぶん、とか思う、となってしまうのは……トーカちゃんと一緒で、パーツを切断されているから。


 緑色のふわふわとした髪の毛からは、白い2本のうさ耳が生えてる。


 ……でも、片方がじょきんと、明らかにハサミで斬られた痕があった。


「さて……と」


 蜥蜴人リザードマンのトーカちゃん。全身うろこ強制剥離。右腕左足欠損。右目欠損。


 人間のゼニスちゃん。後天性の盲目(火傷痕あり)。


 ラビ族のダフネちゃん。右耳欠損。心的外傷あり。


 どの子も女の子で、心も体もボロボロだ。


「3人セットじゃないとうらないなんて、あの館のじじいめ」


「ご主人様、申し訳ありません。ダフネは私たちから離れるとおそらく死んでしまいます。トーカは多分、私たちから離すと主人を殺すかと」


 こわっ! え、思った以上にトーカちゃん……バーサーカーじゃーん。


「うん、離さないから殺さないでね、トーカちゃん」


「…………」こくん。


「ねえ、ゼニスちゃん。トーカちゃんはしゃべれないの? それとも、しゃべりたくないの?」


「前者です。喉を潰されてます」


「あらまぁ……トーカちゃんが一番ひどいわね、症状が」


「はい。我々の代わりに、前のご主人様からの折檻をうけておりましたゆえ」


 なるほどねえ……。


「しかしゼニスちゃんは小さい割に、ずいぶんとハキハキ話すのね」


「前は本が好きだったので」


 前は……か。今は目を潰されて、見えなくなって。さぞ困ってることだろう。


「うん。状況はわかった。トーカちゃん、ゼニスちゃん、ダフネちゃん。今日からよろしくね。私はセイ・ファート。セイでいいわ」


「…………」「よろしくお願いします、セイ・ファート様」「ぶたないでぶたないでぶたないでぇ……」


 う、うーん……前途多難!


 私うまくやってけるかしら。


「セイ・ファート様」

「ゼニスちゃん、フルネーム言わなくていいから」



「では、セイ様。まずは何をなさりますか?」


 ゼニスちゃん、一番まともにコミュニケーション取れるから便利。


「えーと、それじゃあまずは治療からかな」


「「「……?」」」


 私は空中に工房を出現させる。


「ひぅうう! ぜにすちゃーん! 空中になにかできたのです! こわいのです! なんなんです!?」


「ダフネ。揺すらないで。見えてないから、わたし」


 工房の中に薬草を入れて、ほいっとお手軽ポーションゲッツ。


「さ、みんな。これ飲んで」


 てきとーに作った下級ポーションだ。


 トーカちゃんたち全員に手渡しする。


「…………」


 あぐあぐ、とトーカちゃん、瓶ごと咥えてる。


「ウェイウェイ、トーカちゃん。それ蓋開けて飲むの」


「…………」こくん。


 ゼニスちゃんには、私が蓋を開けて、直接口に入れた。


「で、最後はダフネちゃんだけど……」

「飲みますです! だからぶたないで! ぶたないでー!」


「ぶたないわよ……」


 3人ともが下級ポーションを飲む。

 すると……。


 ぱぁ……! と3人の体が光り出す。


 なくなった腕やら足が、にょきっと生える。


 失っていたものが元に戻っていく……。

「す、すごいでござる! 主殿!」


「ござる……? トーカちゃん?」


 蜥蜴人リザードマンだったトーカちゃん。


 だが今の彼女は……見た目人間だ。


「なんかビジュアル変わってない?」


「はい! 主殿のおかげで、拙者、存在進化したのでござる!!」


「存在進化……魔物が進化するあれ?」


「はいでござる!! なんか元気もりもりで、今まで以上にパワーあふれる感じになりました! どうでしょうか、お2人ともっ?」 


 ゼニスちゃんは火傷の痕がなおって、目が見えるようになってる……って。


「ゼニスちゃん、なんか耳がとがってない?」


「は、はい……私、実はエルフなんです。耳を切られてましたが……」


 ああ、エルフなんだ。だから見た目の割にかしこそうなしゃべり方してたのね。

「すごいです……セイ様。トーカが、蜥蜴人リザードマンから、火竜人に進化してます……」


 ゼニスちゃん、トーカちゃんの進化した姿を一発で見抜いた。


 これは頭の善し悪しだけじゃなくて、何か特別なものもってるかも。目とか?


「す、すごいのですー! だふねのお耳が生えてきたのですっ!」


 ぴこぴことダフネちゃんのうさ耳が動く。うむ、あとで触らせておくれ。


「ありがとうございます! 主殿! いや、聖女殿!」


「感謝しますセイ様。もしかして、天導教会てんどうきょうかいの聖女さまでしょうか?」


「ありがとー聖女のお姉ちゃんっ!」


 情報量多くてついてけないけど……まあ、一言だけ。


「いや、聖女じゃなくて、ただの錬金術師ですから、私」


 きょとんとする奴隷達。

 ゼニスちゃんだけが、突っ込む。


「いえ、ご主人様。それはあり得ません。どこの世界に、種族を進化させ、欠損を治すポーションを作れる、錬金術師がいるのですか?」


「ここにいるけど?」


「………………」


 まあなにはともあれ、これで安くて可愛い奴隷×3ゲットだぜ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 以前、大変素晴らしい小説で、スタンピードを仮死状態で逃れた錬金術師が数百年後に目を覚まして・・・と言う物語がありましたが、それを超える楽しい物語を期待しています。
[一言] うーむ、読み違えた。 てっきりイケメン少年~青年3人を買ってポーションで細マッチョ(あそこはでかい)になり、末永くくんずほぐれつ生活を送ると思ってたのにww とりあえず、治療後は元の主人を…
[一言] あー!これ狙われるよね(^_^;) 足手まとい(実は自分がいちばん足手まとい?) を連れて、どこを目指してどんな道中になるのか? 楽しみにしてます(^O^)/
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