表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/215

02.目覚めたら、未来?

「ううむぅ……むにゃあ……はっ! 今何時!?」


 私、セイ・ファートは目を覚ます。そこは私の家のなかだった。


 壁掛けの時計は9時を指している。


「しまった寝過ごした……! どうしよ着替えてメイクして……ああもう! 遅刻したら所長のBBAにいびられるじゃーん!」


 私はドタバタと身支度を調えて、木戸に手をかける。


 バキィ……!


「ばきぃい……?」


 ドアノブがぶっ壊れた!? なんで!?

 そのまま木戸が倒れる……。


「え、なに……これ……?」


 私の目の前には、廃墟が広がっていた。

「王都は……どうしたの……? なんで一夜にして廃墟に……どうしてこうなった……?」


 確か昨日は……そうだ。


 所長のパワハラを受けて、家に帰ろうとしたそのとき。


 モンスターの大群が、王都へと襲いかかってきたのだ。


 スタンピードと呼ばれる現象だ。師匠から聞いたことがある。


 モンスターたちの食料が、何らかの原因で少なくなったとき、大群となって人里に降りてくるって。


 王都を襲うモンスター達の群れ。


 私は自分の工房に引きこもって、外に出ないようにした。


 ……私には戦う力がほとんどない。外に出て勇敢にモンスターと戦うことはできない。


 自分の命が一番大事。だから魔物よけのポーションを即興で作って、家の周りにぶっかけ、自宅の中にこもった。


 残念だけど、王都のみんなを守るだけの量のポーションを作るには、素材と、何より時間が足りなかった。


 残酷だと言われようが、私は自分の身を一番に考える。


 けれど自宅にはほとんど食料がなかった。何日目かには食糧が尽きた。それなのにモンスターはまだまだ王都から消える気配がない。


 そこで私は考えた。食糧が尽きる前に、仮死状態になろうと。


 私は師匠ニコラス・フラメルから、様々な効果を発揮するポーションの製造方法を教わった。


 その中の一つ、【仮死のポーション】。飲めば一定期間、仮死状態となる魔法の薬だ。


 飲めば体が一瞬で凍りついて細胞が凍結、栄養状態を保ったまま、仮死状態となれるもの。


 いつかはスタンピードも収まるだろう、と考えて仮死のポーションを飲んで……。

「目が覚めたのが今ってこと、ね」


 廃墟の町に私はひとりぼっちだった。


 おそらくは嵐は去ったのだろう。


「……状況を、まずは把握しとかないと」


 仮死状態になってから今目覚めるまで、どれくらいの時間が経過してるのかわからない。


 一ヶ月二ヶ月ってレベルではないように見える。


「あの栄えていた王都が、こんなボロボロになるわけないし……それに、こけやば……」


 建物の劣化具合から、年単位であることがうかがえた。仮死秘薬の効果って、どんなものだっけ……?


 師匠から作り方を教わって、実際に自分でのんだの初めてだったしなぁ。


「…………」


 廃墟を前に、胸に去来するのは、罪悪感……だろうか。私だけ生き残った感っていうのかしらね。


 他の人はどうなったのだろう。助かったのだろうか……。


「あー、うん! やめやめ! 難しく考えるのやめ! 王都には騎士もいたし、モンスター達を倒したでしょう! ボロボロになった町を捨てて新しいとこでみんな生きてるさ!」


 ってことにしておこう。うん……シリアスダメダメ。


 だってここで過去を嘆いたところで、結果は変えられないしね!


「とりあえずは町を目指しながら状況把握ね。人に会って話せば、どれくらい私が仮死状態だったのかわかるだろうし」


 そうと決まれば、さっそく移動だ。


 といっても、なんの準備もなく外をうろつくことなんてできない。


 最低でも、魔物よけの薬と、回復薬くらいは作っとかないとね。移動中にモンスターに襲われて死ぬとか勘弁して欲しいし。


 私は一度工房に戻って、素材を探す。


「うん……ほぼなんもない!」


 乾燥してる薬草はあるけれど、素材はほぼほぼ劣化していた。うわ、サイアク……。


「まあポーションだけ作っときますかね」


 私はポケットから指輪を取り出す。


 右手につけて、前に向かって手のひらを前に向ける。


「錬成工房……展開!」


 人の顔くらいの大きさの、立方体が出現する。


 これは錬成工房。


 この小さな箱の中には、錬金術に必要な道具が、魔法で再現されて存在する。


 フラスコとか、破砕機とかね。


 この箱の中は外とは時間の流れが異なる。

 つまり錬金に必要となる時間を、大分圧縮することが出来るのだ。


「この箱の中に薬草を突っ込むと……」


 立方体のなかで、錬成が行われる。

 薬草は分解され、抽出され、水とともに混ざり合い……。


 箱の中に手を突っ込むと、中からポーション瓶が出てくる。


 これぞ、フラメル式錬金術。

 空間魔法と錬金術とを組み合わせることで、素早く、高品質のポーションが作れるのだ。


 ……まあとはいえ、素材が手元にないとポーションは作れない。


 それに、この魔法の箱は手順をカットできるだけ。


 時間を短縮してるだけなので、ポーションの質は作り手の技量に左右される。


 ようするに、この錬金工房を展開したとしても、作り手がへぼければ低品質のポーションになってしまうってわけ。


「乾燥した薬草、あるだけ全部回復ポーションにしとこ。あとは道中で魔除けのポーション作っとかないとなぁ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ