182.緊張ほぐしメイド
私は災厄の波を止めるべく、ロボメイド・シェルジュとともに、天を目指す。
護神像の運転はロボに任せ、私はひとり黄昏れていた。
「どうしてこうなった……」
護神像の中はちょっとしたホテルのようになっている。
ソファに深く腰を下ろした状態で、私は窓の外を見やる。
護神像からはポーションが常に散布されている。
魔除けのポーション(強化)だ。
それに触れた瞬間、魔物は一瞬で消える。
「凄いポーションですね、あれ」
シェルジュがナチュラルに、私の隣に座り、首の後に腕を回してきた。
私は距離を取る。
「なんで距離取るんですか?」
「近いのよ……恋人でもあるまいし……」
「二人きりですね♡」
「うざ……」
このロボ、周りに誰もいないのをいいことに、からんできやがった。
距離を取ったのに、またくっついてきた。うざぁ……。
「好きなくせに。わかってるんですからね、ワタシは」
「はいはい……。で、あのポーション? 魔除けを強化したのよ」
「もはや魔除けって言って良いかわからないレベルですね。兵器ですよあれ」
「そう?」
錬成工房(持ち歩き可能)で作るポーションと違い、きちんと、工房で作ったポーション。
その効果は、普段使っている上級ポーションの比ではない。
魔除けポーション(強化)もそのひとつだ。
他にもいくつか、凄いポーションを作ってきてる。
「これがあれば師匠も……」
とはいうものの、本当に師匠を助け出せるかは未知数だ。
私はあの人の弟子であって、あの人では無い。
今のあの人で対処できない難題を、はたして、弟子が解決できるだろうか……。
「大丈夫ですよ、マスター」
にこっ、とシェルジュが笑う。
「マスターは強いです。だから……大丈夫です」
「…………」
ったく、このロボめ。
普段ウザいくせに……。慰めてきやがってさぁ。
うん……そうだ。
このロボの言うとおりだ。
「私は強い! だから勝つ! 奴隷ちゃんズのために……!」
波をどうにかしないと、奴隷ちゃんズとの気ままな旅を再開できないからね!
さっさと波を破壊してやるぜ!
「その意気です」
「ふん……えらっそうに……メイドの分際で、上から目線やめてよね」
まあ、気持ちはラクニなったけども。
絶対に言わないけども。
「マスターからツンデレ粒子を検知! マスターはシェルジュのことが大好きレベルマックスと!」
「な、なーにいってんだか。あんたのこと好きなわけないでしょ……」
まあ嫌いでもないけどさ。
するとシェルジュがまたうざメイド顔になると、絡んでくる。
ええい、緊張感のないやつめ。
……まあ、おかげで緊張がほぐれたけどさ。




