175.救ったろう、世界!
私はこの世界の現状を把握した。
どうやら厄災の波ってやつのせいで、世界がヤバいらいし(語彙力)
「それで、マスター。これからどうなさるおつもりですか?」
場所は聖王国。
ロボメイド・シェルジュからそんなことを聞かれる。
「これから……とは?」
「この状況でマスターは、どうしますかという話です」
「いやどうって……」
別に……。
ん?
あれ、周りの奴隷ちゃんズから、キラキラした目を向けられてるぞ?
あれれ、なんだ?
「おねえちゃん……世界を救うんだよね!」
「だ、ダフネちゃん……?」
末っ子担当ダフネちゃんが、そんなことをおっしゃる!
私が!? 世界を!? 救うぅう!?
「そのために、今日まで準備なさってたのでござろう?」
「いやあ……」
単にものづくりに没頭してただけなんですが……。
あ、アレ……?
これもしかして、奴隷ちゃんズは、私はこの厄災の波に対抗するために、ずっと準備していたって思ってる感じ……?
「……セイ様。頑張ってくださいっ」
え、ええ~……すごいやなんですけどぉ。
てゆーか!
私は単なるか弱い錬金術師なんですけど!?
どうして私が世界を救うの?
他にもっと凄い人とかいるじゃん!
多分……勇者とかさ!
あとほら、いるじゃん!
もっと凄い、私の師匠。ろくでなしのニコラス・フラメル師匠がさ!
と、そのときである。
「あ、とりさーん!」
私たちの上空に、いつの間にか鳥がいた。
くるくると旋回してるそれを見て、私は気づく。
「師匠の人工生命体だ……」
「……あれが、作られた存在なんですか? あんな風に、本物そっくりの鳥なのに」
ゼニスちゃんが驚いてる。
「並の錬金術師が作る人工生命体は、どこかいびつだけど、師匠のはマジで本物そっくりの命作るのよ」
だからこそ、あれが師匠が作ったってわかるのだけど。
……てゆーか、師匠の人工生命体が、このタイミングでくることに、私すごーく嫌な予感を覚えるのですが……。
鳥はダフネちゃんの頭の上に乗っかる。
そして、口を開く。
『わたしのきゃわいいセイ・ファートちゃん♡ ちょぉっとお願いがあるんだけど、聞いてくれる?』
「しゃ、しゃべった~~~~~!?」
ダフネちゃんがびっくり仰天してる。
鳥が動物の言葉ではなく、人間の言葉を使ってたからだろう。
まあこれ鳥じゃなくて、人工生命体だから、人の言葉を喋らせることもできるんだわ。
「久しぶりね師匠。答えはNOよ」
『ああん、つめたーい。お願いだよぉ、セイちゃん。今回はマジのお願い』
今までのはマジのやつじゃなかったんかい……。
『ほんとお願い、これで最後でもいいからさ。ね、ね? 話だけでもいいから聞いてちょうだいな』
……ちっ。
仕方ないなぁ。
「なに?」
『おーせんくす!』
「手短にね」
『うむ……。実はね、セイちゃんに……わたしを助けて欲しいんだ』
……はい?
師匠を助ける……?
「何を言ってるの?」
『実はさー、わたし今、厄災の波のど真ん中にいるのよ』
さらっととんでもないこと言ってないこのひと!?
波の中心!?
魔物が大量発生してる、その中心部にいるってことでしょ!?
……まあ、師匠ならそこに居ても生きてられるか。
「なんでそんなとこに?」
『波の拡大を水際で食い止めてるのよん』
……なるほど、とゼニスちゃんが神妙な顔つきでうなずく。
「……厄災の波は、驚くべきスピードで世界を飲み込むと文献に書いてありました。セイ様がおこもりになられていた間、波に世界が蹂躙されなかったのは、フラメル様が食い止めててくれたからなのですね」
この波は前にもあったらしい。
そんときは、凄い人がなんとかしてくれたんだってさ。
……てゆーか、師匠がとめてたのか。
「なんであんたが解決できないのよ。最強の錬金術師のくせに」
『ま、わたしも老いたからね。前回のように解決できないのよん』
……ん?
前回……?
って、まさか!
文献に書いてある、前回波をどうにかしたひとって、師匠なのかよ!
まあこの人、凄い長生きだからね。
できなくはないだろうけど……まじか。
『前みたいに一人で何とか出来ると思ったんだけどね。どーにも今回は、前回よりも規模がでかそうなのよ。わたしも老いたこともあって、自分じゃどうにもできなくてね』
……で、私に泣きついてきたのか。
……つーか、老いた、か。
だから、私を弟子にとったのかも……。
自分が死んでも、自分のあとを継がせるために。
『頑張ってとめてるけど、そろそろ限界が近いんだ。お願いよ、セイちゃん。波をとめて』
……はぁ。
まったく、なんでこんなことに……。
別に世界がどうなろうと、ワタシには関係ない……で、今までは良かった。
聖女じゃないし。
……でも。
今波の中心には師匠がいて、世界の破滅を防いでくれている。
このまま傍観していたら、師匠は……私を拾ってくれた親は、死んでしまうだろう。
……しかたない。
師匠は、いちおう、私に力を授けて、ここまで育ててくれた、恩人なのだ。
恩人をみすみす見殺しには、できないぜ。
「わーったわよ! 救ってやろうじゃない、世界!」
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