4日目
「……何だよ、君。一昨日来るんじゃなかったのか……?」
あー、ごめんごめん。
昨日と一昨日は雨だったから来たくなかったの。
「……ったく勝手な女だ」
3日ぶりに会ったルークはさすがに憔悴していた。
無理もないだろう。
磔にされた状態で水分の1滴すら口にしていないのだから。
「はっ……雨が降ってくれたおかげで喉は乾いてないよ」
「そう。この海も雨が降ったのね」
この状況に諦念しているかと思えば、しかし、そうではないようだ。
なるほど。もしかしたら会いに来る私に望みをかけているのかもしれない。
からかいがいがあるってものだ。
「何、私に会いたかったの? 話相手もいないし、寂しいもんねえ」
「馬鹿言うな……、前も言ったが僕は君に会いたくなかったし、出会いたくもなかったね」
「ふーん。じゃあ、船を漕ぐ私を見たときの明るい顔は何だったのかしら?」
「……チッ」
ルークが力なく舌打ちをした。
「……見てたのかよ」
「やっぱり私が好きだったの?」
「しつこいなあ……こんな状況でそんな風に浮わつけるわけないだろう」
あら。それは残念。
私としては婚約破棄されて女のプライドが砕け散ってしまったから、私に惚れ直させて癒されようと思っていたのに。
まあ、惚れさせたところで助けてはあげないけれどね。
1度捨てられて、他の女を選んだ男に興味なんてないもの。
「……はあ」
ルークが深くため息を吐いた。
何かを諦めたようだった。
「こんなこと言うのは癪だけど、僕は君に助けてもらおうとしていた」
悔しそうなルークの表情。
弱った可愛い美男子の弱々しい顔。
嗚呼、堪らない。
イキそうになる。
そうそう。その顔を見るために私はあなたに会いに来ているの。
「でも、君に助けてもらうのは無理みたいだな。考えた僕が馬鹿だったよ……っておい、人の話は最後まで聞けっ」
へ?
もういいよ、興味なくなった。
あの顔見れただけで満足だもん。
「じゃあね~」
今日はもう帰る。
明日も晴れてたら会いに来てあげるよ。