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35.剣ノ聖女


「状況は!? って聞くまでも無い・・・よねぇ」



 ミレスが陸艦から出てくるなり見た光景は口が開いてしまうくらいには中々迫力のある物だった。

 目の前には見たことのない黒い岩の化け物、ゴーレムがこちらへ物量に物を言わせるような攻撃を永遠と続け、こちらはそれをダッドとプンの二人で陸艦を覆うほどのシールドを展開し防いでいた。


 リュルとムーは攻撃部隊として動き回りゴーレムの死角から攻撃している光景だった。



「だぁあああ! 疲れたー!!」


「何個コア壊せばいいんだよ」


「多分一気にやらないと駄目」


「どうゆう事プリエちゃん?」



 ミレスがプンの変わりをやるかのようにプンの隣でバリヤを張る。それが見えたリュルとムーも一度陸艦へ戻り全員が集合した。


 目の前のゴーレムに対して各自の思うところを口にしていた。



「コア複数?」


「しかもすぐに再生する。プンの話だと頭部にあるのが"マザーコア"とかいうらしいんだけどさぁ・・・」


「それを攻撃する為に他のコアを破壊するのが前提。さっきからリュルと一緒に同時破壊試みてるんだけど、無理無理。手が足りない」



 それで早く来るように叫んでいたのかとミレスは納得した。

 メインのコア、プンが勝手に名付けたらしいマザーコアを壊すには小型コアを破壊しなくてはいけない。

 だが、その小型コアもマザーコアの力によってすぐに再生されてしまう。互いが互いのコアを補っている。


 その為考えられるのは小型コアを全て破壊し即座にマザーコアを破壊しなくてはいけないようだった。



「再生で小型の位置も変わる」


「プンが居るから位置はすぐにわかるんだが。どうしても俺とムーだけじゃ足りないんだ」



 リュルは剣のストックを使いゴーレムから永遠と撃ち続けられるビームを弾きながら会話をする。

 ムーも同じようにビームを撃ち抜きながら会話に参加している。

 彼等の余裕さを見るにこちらに足りないのは、決定打。第3班が全滅するような事は恐らく無いが、ゴーレムを倒す事が出来ない状況。


 ここでミレスが加われば、攻撃陣営が更に増える。ひとまずこれで対応するしかない。



「わかった、私とリュル君で左右から挟撃。ムー君はそのフォロー、ダッド君は引き続きシールドで艦を守って。プリエちゃんは防御支援をしながら小型コアの位置の特定をお願い」


「わかった」


「あいよー」


「助かるー、前線はやっぱ懲り懲り」


「もし防壁が必要なら言ってくださいね」



 ミレスはふと違和感が無い事に違和感を感じた。本来なら切迫した空気に包まれるはずが考えてしまった、それはただ一つの返事に対してだった。

 普通ならばイエス・リッター。とう返答が返ってくるのにも関わらず彼等と接する時間が長くなるにつれてこれが普通になってしまっていた。最初の頃は返事を注意、主にリュルだが、注意していたがプリエもリュルと同じように妹として接する機会が増えた事から言わなくなり、そしてダッドとムーも空気を読んでしまったのか何事も無いかのようにリュルと同じように返事を返してくる。


 ミレスにとってこの第3班にいると今まで積み重ねてきた物を良い意味で壊されていた。最初は自分に班をまとめ上げられるのか不安でしかなかった。

 だが実際は違った。


 今も本来ならばアーシャを回収し撤退するはずだったと、最初は頭の中で考えていたのにも関わらず、今はもうその思考は一切無くなってしまっていた。

 それは彼等がもうゴーレム、情報にあったマザー型を倒す気でいるからだった。

 自分達リベリィはアンダーズを倒す事が仕事、使命。


 そんな当たり前の事を損なってしまう程にミレスは多くの事を積み重ねてしまっていた。ヘリオエールの三凛華の一人なんて呼ばれ始めた時から彼女の中にはリベリィとしての使命以外にも背負う物がたくさんできてしまっていた。


 そんな多くの事を彼等、第3班という居場所は思い出させてくれた場所だと。ミレスは笑みを浮かべていた。



「みんな・・・怪我しないようにね!!」


「あ? ふっ・・・あいよー」



 ミレスが一番に言いたかった言葉。それは他愛のない言葉。

 だが、その一言で第3班全員の顔に笑みが浮かんだ。


 それだけで十分だった。



「コア位置特定」


「ブレイク!!!」



 そしてミレスの指示で反撃が始まった。

 ゴーレムの左側面にリュル、そして右側面にはミレスが散開する。正面にはムーが常にストックを構え続けダッドのシールド防御の恩恵を受け狙撃に専念する。



「まず二つ!!」


「こっちは三つ!!」


「正面は少ないから、僕に任せて」



 攻撃班が声を掛け合いながらゴーレムの小型コアを次々と破壊していく。

 ミレスは光弾で、ムーは狙撃で、リュルは剣で直接小型コアを叩き割っていく。


 ゴーレムがリュルとミレス相手に迎撃の構え直す。

 変形した右腕の砲身のみならず左腕も同じように砲身に変形し、膝部からはリベリィの光弾に似た大型の球体を出現させ二人目掛けて全身から出るビームと合わせて一斉に撃ち込む。


 だが全ての攻撃は、二人には届かなかった。



「よし! 上手く作動した!」


「ナイスダッド!!」


「ありがとうダッド君!」



 ゴーレムの攻撃は全てダッドが二人へ送った大型のシールド、自らがチシィと共に開発したキマイラユニットのシールドによって完全に防がれていた。

 ダッドのブレイカーに搭載された新機能。指定したポイントに自らのシールドを形成させる機能だった。

 数も今ダッドが行ったように二枚のシールドが限界で距離もそう遠くまで送る事が出来ない。まだまだ課題が山住だとダッドは常にデータを取り続けるのだった。



「六つ目!!」


「もう何個かわからん!! プン!」


「うん、ペース良い」



 先ほどリュルとムー二人よりも圧倒的に早い速度で小型コアが破壊されていく。小型コアが破壊されていくに連れてゴーレムの動きも遅くなっているようにも感じた。

 確実に弱り始めた、ミレスもリュルも共に速度を上げていく。


 だが、これは弱っているわけでは無かった。



「固っ! 嘘っ!」


「くそっ、鋒が折れた!」



 ゴーレムは弱った訳ではない。ここに来てゴーレムは攻撃よりも防御に専念し始めたのだった。

 黒いゴーレムの装甲が赤黒く覆われ、変わっていくのが全員の目でも明らか。


 リュルはすぐさま鋒を魔方陣へストックを突っ込み復活させ魔力を込めて小型コアを破壊するが、明らかにさっきまでの勢いが衰え、破壊速度が低下していた。

 それは当然、ミレスも同じだった。

 撃ち込む光弾が全て弾かれてしまい、強力に魔力を込めて撃ち込む攻撃でも装甲を剥がせる程度。小型コアを破壊するまでには至らなくなる。



「再生が・・・」



 プンが二人に知らせた。破壊した小型コアの再生が始まった事を。

 完全にゴーレムは攻撃を止め縮こまるかのような格好になり始めた。


 持久戦。


 リベリィの事をよく熟知していると誰もが思った。

 アンダーズに比べてこちらにはリミットがある程度課せられている。古典的な戦法ではあるが、少なくとも今の戦力ではこのゴーレムを突破できないかもしれない。


 リュルもまた苦い顔をし考えた。

 黒い手袋をした左手を握りしめる。このゴーレムを倒すには、多少の無理は必要になる。この王城を瓦礫の山にするかもしれないと。


 誰もが思考を巡らせてこの状況を打開する方法を考えていた。

 再生を良しとして体勢を立て直すか?

 今の流れを殺して、次に繋げるのが賢明なのか。


 みながここへ来て初めて額に汗をかいた時だった・・・。




「おまたせ・・・みんな」









 それは、俺が左腕の力を使おうとした時だった。


 声がした方向、陸艦に目を向けた瞬間何かが目の前を過った。

 過ぎった刃のようなそれはドリルのように回転しながらゴーレム目掛けて襲いかかっていった。


 ガリガリガリとゴーレムのくそ固い装甲を削り始め、小型のコアを露出させた。



「私が小型コアを剥き出しにする。それでいいですかミレス班長」


「アーシャ様・・・!!」



 次々と剥き出しになった小型コアを破壊し俺は陸艦の上を見上げる。


 するとそこにはマイスター・アーシャがドヤ顔をして立っていた。

 ゴーレムの装甲を削り取った物がブーメランのようにマイスターの方へ戻って行きブレイカーに装着されていった。

 6枚の板が全て装着され、まるでロングスカートのような形状をした姿に一変した。



「チシィありがとう。おかげでリベンジ出来るよ!」



 あれってたしか、チシィが密かに作ってた物だったか。

 暇さえあればちまちまと何やってるのか気になって一度聞いたことがあることを俺は思い出していた。



『初めてのお客さん、大切なお客さんの注文品』



 それだけ言ってシッシッと追い出された事を思い出した。

 なるほど、そうゆう事か。


 なんだ。

 チシィの夢を応援していたのは、俺達だけじゃなかったって事か。



「一斉に行きます! アーシャ様、お手伝いお願いします!」


「イエス・リッ・・・って言わない方がいいんだよね! 行くよ、レングスビット!!」



 再びレングスビットと呼ばれる刃がマイスターのブレイカーから射出され変則的に動きゴーレムへと襲い掛かる。

 同時に恐らくこれも特注なのだろうストックを片手に小型コアを俺と同じように叩き割っている。


 もはや作業だった。

 レングスビットが固まってあまり動かないゴーレムの装甲を、プンが教える小型コアの位置を次々と削り取り剥き出しにし、それを俺とリッター・ミレス、ムー。そしてマイスター・アーシャが破壊していく。


 俺はチラリとマイスターの顔を見たが少し後悔してしまった。



「ふふふ・・・!」



 目が合った。怖い、最悪だ。


 リベンジ、そうこの人は言った。普通に悔しかったんだろうが、俺達はここへある意味反則的な方法で来たのに対してこの人は正面からアンダーズの群れを相手しながら城内付近まで来たと思うと。



「欲張りに見える?」


「えぇ、まあ。変に心を読まれるのはやめて欲しいくらいには。あと顔近いです死んでしまいます」


「図が高いぞ貴様ぁああああああー!!!」


「僕もう必要なくない?」


「自分なんてさっきから何もしてないですよ」


「休憩」



 小型コアを破壊しながら一体どんな会話を繰り広げているんだろうか。

 一応今俺達はフリッズ王国奪還の重要な戦いをしているはずなのに、一体全体何ががどうなっているんだが。



「あ、マザー・・・出た」



 最後の小型コアをマイスター・アーシャが破壊したと同時にポツンとプンが呟いた。

 マザーコアが光り輝き出した・・・。



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