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12.トリオ終了のお知らせ


 近隣小国からのアンダーズ迎撃戦は無事に俺達の勝利で幕を閉じた。

 俺はブレイカーをまた壊してしまった結果、共にミサイル型を撃墜させた二人と仲良く急降下した。

 が、そこを助けてくれたのは俺達の3班の班長。リッター・ミレスだった。

 何やらマイスターの指示で俺達の居た後方へと向かわせたらしく、丁度、俺達が声を上げながら頭上から降ってくるのを間一髪で受け止めてくれた。


 二人はブレイカーを寸前で稼働させ難なく着地したのだが・・・。



 右頬の強烈に痛い。きっと真っ赤な紅葉が俺の頬に浮かび上がっている。



 まさか俺の希望が叶うなんて思っても居なかった。落下の恐怖で揉んだ感覚を覚えだせないのが、悔やまれる。



「では、私は負傷者の治療に入りますので」


「うい~」


「返事は!!!!?」


「イエスおっぱ・・・イエスリッター!!!」



 すっごい眼で睨まれた。顔を真っ赤にしながら目の前の陸艦の中へと乗艦していった。



「リュルさん流石に」


「僕は好きだよ、それ」


「俺も好きだ!」


「それはまあ、自分もあった方がいいと思いますけど」



 俺達もリッター・ミレスと同じように艦の中へと足を運ぶのだった。

 リッターと違う所としては、それはもうやり切ったという達成感と純粋な笑いだった。


 本当につまらないような事で笑い合いながら俺達3班も休息に付く。

 そう、思っていたが。



「こんな事態で笑っていられるなんてな」



 俺達が乗艦しようとした時、入口に4人の男達、リベリィが俺達を見下すように立っていた。

 良く見ると、少し掠り傷程度の負傷で顔に絆創膏やガーゼが付けられてる。はっきり言ってその格好は凄く滑稽だけどな。


 俺は舌打ちをして一歩前に出ようとしたが、二人に止められた。



「何か、用ですか?」


「何ぃ!!?」


「僕達、これから作戦成功の祝賀会なんですが」



 四人に啖呵を切った事に俺はただ驚くことしか出来なかった。

 二人の背中に目線を向ける。なんだこいつ等・・・俺はこいつ等と出会って数日しか経っていないから詳しい事なんて何一つ知らない。


 けれど、目の前にいる人間の背中の大きさは、出会った頃、ブレイカーを隠されて涙目になっていたような二人とは違うものだった。



「作戦成功だと!? 功労者はマイスターとオウギフ様だろうが!」


「そうだよ、僕達は"後処理"をしたに過ぎない」


「称賛されたいなんて、自分達はこれっぽっちも思ってないです」



 ヤバい笑いそうになる。

 二人の言葉と、二人に圧倒され出したいじめっ子の顔がみるみる内に変わっているこの状況に手を口で抑え塞ぎ止めるしか出来ない。



「ま、まるで、自分達の力で成し遂げた様な面構えだが―――」」


「ん? 俺?」


「その者が居たからこそなんだろう!? どんな魔術を使ったのか知らないが。彼が居たから貴様等はあのミサイル型を撃墜する事が出来た!! そうなんだろう!」



 え。

 まさか俺に飛び火が来るなんて思ってもなくて素っ頓狂な顔を晒した。

 目の前にいる顔中絆創膏で臭そうな彼は、俺を褒めてたりしてる訳?



「その通り」


「リュールジスさんが居たから、出来たのは間違いないです」


「ほれ見ろ!! 所詮貴様等二人はローユース!! 何も出来ない癖にデカイ顔して、彼に迷惑を掛けていると思わないのか!!?」



 俺は彼の言葉が耳に一切入ってこなかった。

 本当に彼は一体何を言い出しているのか?



「彼の今後の為にも、君等は手を引くべきでは無いのかね!? オウギフ様の下で存分にその力を発揮すれば、もはや将来は約束されたも同然だと。そう思わないか?」


「「・・・・・・」」



 両者の睨み合いが続いていた。正確には先方が一方的に睨んでるだけであって、二人は恐らく緊張も無いすました顔で応対しているだろう。

 なんだこの空気。

 俺の経験には全くない体験を今させられているのか。



「そう・・・ですね」


「うん、正しい」


「は?」



 状況が全く理解出来ない内に、目の前の二人が道を開けるように退いた。

 ついその行動がわからず、俺は二人の顔を何度もキョロキョロと見返してしまった。



「悔しいけど、リュルの事を考えたら正論だ」


「えぇ、行って下さい。自分達は、リュルさんにとても大事な物を頂きましたから」



 こいつ等・・・。



「ハハハハハッ!!! 聞き訳がいいじゃないか! そうだ、貴様等は何をしようとローユースのままなんだよ! 生まれも!才能も! 何も無いただの無能!! オウギフ様や我々のような有能者に、全てを捧げればいいのだよ!!」



 無能・・・有能。


 生まれ・・・才能。


 何も・・・無い。



「・・・・・・」



 俺は一歩踏み出した。

 その俺の姿を二人を満面の笑みで見送った。


 この二人は・・・本当に、本当に心の底から俺の為だと思って。

 悪気なんてきっと一切ない。本当にそれが俺の為になるのだと、あいつ等の下で暴れた方が、俺の未来にきっと繋がると・・・そう信じて。



「フフフッ、オウギフ様には私から事伝えます。ご安心ください」


「あーっはははははははは!!!」


「出る杭は打たれるってことも知らないで! おかしな奴等だ!!」



 俺が二人から離れた事に大変ご満悦のようだった。

 それはそれは・・・非常に・・・。


 非常に・・・。



「あっ、リッター・ミレスが転んだ」


「「「「何っ!!??」」」」


「それーーーいっ!!」



 四人が一斉に俺が指さす方に振り向いた瞬間、俺は全員を魔力で吹き飛ばし、地面へと放り出した。


 幸いにも地面は芝生だ。そんな怪我するなんて事はないだろう。



「な、何をする貴様!!」


「ふっ、名声? 後ろ盾? 力? 悪いけどそんなの興味ないんだよ」


「なんだと!!!」



 そんな物あったって何も無いって事を・・・俺は知ってる。


 そして一番今欲しい物、それは。



「お前等、何やってるんだよ。"パフェ"奢ってくれるんだろ?」


「ふふ・・・」


「ぷっ!」



 静かに微笑むダッド、そして吹き込むムー。


 そう、俺が今無性に欲しくて止まない物は、糖分だ。

 あそこまでハードル上げたんだから、不味かったら承知しないがな!



「気持悪い笑み浮かべやがって」


「それはリュルさんもでしょう」


「二人ともにやけてるって、気持ち悪い絵面」


「「「がぁあーっはははははは!!!」」」



 嘘偽りは無い。どれだけ取り繕っても今の俺にはそれしかないんだから。


 二人の仲間と、こうして笑い合えるのがこんなに楽しいなんてな。


 これならもしかしたら、俺が旅で見つけることの出来なかった"探し物"も、見つかるのも時間の問題なのかも知れない。



「そう言えばリュル。気になってた事あるんだけど」



 唐突にムーが俺に質問をしてきた。



「ブレイカー、調整できたの?」


「まさか、全く出来ないからあのチビ助を縛り上げて勝手に飛んできたんだよ」


「・・・っえ」


「え・・・?」




 あっ。


 忘れてた・・・。



 それから俺達三人は、縛り上げて放置していたチシィを解放したのだったが。

 あまりの大号泣に、俺は全力で謝ったのだが、「オヤジに言いつけてやる!うわぁああぁあああっっんー!!!!」と何度も何度も同じ様な言葉を口にし俺はヘリオエールに帰還した際、いろんな意味での覚悟を決めたのだった。






―――   ―――   ―――






「「「かんぱーーい!!!」」」



 俺がおやっさん、チシィのオヤジから解放されたのはもう、日が落ちた頃だった。

 それはもうとんでもない剣幕で俺を睨み殺そうとしてきた。もはや抵抗の無意味さを知っていた俺は今この瞬間に一生を終える覚悟で土下座をしながら走馬灯を垣間見ていた。


 が、ブレイカーの整備班達が全力で止めてくれた。今回の任務で負傷したブレイカーの修理が最優先だと、俺を殺すのは明日でも出来るという理由で・・・悲し過ぎるだろ。



「はぁ、炭酸が体に染みる」


「これが最後の晩餐になるかもだけどね」


「明日また一緒に謝りましょうよ、チシィさんだってきっとわかってくれますよ」



 そうだといいんだけどなぁー・

 今の内に言い訳と考えるのと土下座の練習でもしておくか。



「うぅぅっ飲み過ぎた、ちょっと僕トイレ」


「本当だ、自分飲み物取ってきますよ」


「あ~~い」



 二人が立ち上がり俺は一人伸び伸びと寛いでいた。

 んーー素晴らしい時間だ。

 任務で適度に汗を流し、仲間と無駄にお菓子を頬張りながらジュースを飲めるなんて最高以外の何ものでも無いな。


 こんなことならリベリィになるのも悪くないかも。

 寮長も俺達を労って今日はもう休むように言ってたし、このままダラダラと返答を長引かせるのもありだよなぁー・・・。




ピンポーーンッ・・・!




 来客か。また変な輩共じゃないとありがたいんだが。



「ちょっと待ってくださーい」


「あーダッド、俺が出るよ。ムーのエロ本の速達だろどうせ」


「残念だが僕は、妄想派だ。物体に頼らない」



 いらねぇー情報だなおい。


 よいしょと立ち上がり、二回目のインターホンが鳴ったので返事をしながら俺は扉を開けた。



「届け物」


「・・・・・・」



バタンッ・・・。



 あれ?

 知っている顔でつい閉めてしまった。いや正確には知らないんだけど、一度だけ見たって意味で知っている顔があった。もっともっと正確に言えば体の素晴らしい素敵なラインと綺麗な銀髪、今日は結んでるのね、うん非常に似合ってたと思うよ。



ピンポーーンッ・・・!



 何かの間違えだろうと、再び俺は扉を開ける。

 当然目が合う。



「届け物、あなたに」


「・・・?」


「・・・届け物」



 首を傾げる俺に同じ言葉を投げ掛けてきた。

 いや、そうじゃないんだよ。俺が疑問に思っているのは、夢で見たであろう彼女の存在だ。


 俺はそんなに疲れているのだろうか、夢で出来た方が今目の前に俺と目を合わせ言葉を投げ掛けてくる。



「届け物」


「うん」


「・・・うん」



 俺の返事をそのまま返された。

 おぉー意思疎通が出来た。これは人類の進歩なのか魔力の技術はそこまで来ているのか。

 俺はあの時のように知らない間に夢の世界に迷いこんで―――



「ここ、置いておくから」



 一つの段ボールを入口横に置き去りにして、夢に出てきた女は部屋の中へと消えていった。

 消えていった・・・俺の部屋だと、紹介された部屋の中へと。



「リュル、何してんの?」


「いや・・・いや、俺もわかんねぇーわ」



 俺はただ、一人その現象を見届けるしか出来なかった。


 あれは素晴らしい素敵な夢だった・・・それが悪夢にならない事を俺は節に願ったのだった・・・。

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