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10.ラストアタック


 マイスターアーシャの力でモース型一体を撃破することが出来た。

 けれど、戦況は好ましくない。本丸である新種が徐々に3班が避難誘導している町に着々と近付いている。



「マイスター・アーシャ・・・」



 聞こえるか聞こえないか程度の声でリッター・ミレスは呟いた。

 インカム越しに聞こえてるんですけどーって言ってやりたい。


 彼女の様子を見るにマイスター・アーシャとは長い付き合いだったかと思われる。

 心配なら行けばいいのになんて、無責任に思ったりしちゃうな。口には出さないけど。



「リッター・ミレス! 進言致します」



 インカムから声が更に聞こえる。今度はハッキリと。

 ダッドとムー、二人の声だった。



「住民の避難誘導は8割を終えてます」


「残りは自分達が行います、リッター・ミレスはマイスター達の下へ向って下さい!」


「あなた達・・・ですが」



 住民の避難も重要な任務。

 確かにその通りだし、ここの人達を守るのが俺達の使命でもあるのは重々承知。

 けれど、それ以上に大切な物もきっとあるはず・・・なんてな。

 しゃーない。



「行ってきたらどうですかリッター・ミレス。何にせよ、敵の攻撃がこの町に及んだら戦いになる訳だし、早いに越したことはないでしょう」


「ですが、私には・・・」


「大丈夫大丈夫。ダッドは硬いバリアを張れるだろうし、長距離狙撃で魔力減衰干渉もムーが居ればほぼ補える。 もちろんリッター・ミレスがそれ以上の何かを持っているなら話は別だけど」



 ぶっちゃけた話し、前回の戦いでこの二人じゃなかったら陸艦を守り切るのは本当に不可能だった。

 二人は防衛迎撃に長けている。どれだけ優秀でリッターのグレードを持っていたとしても、あの時の戦いだけを見たら並のリベリィでは太刀打ち出来なかっただろう。


 俺がこの二人を持ち上げているのはそういう点だ。もちろんそれ以外もあるが。



「じゃ、もっと簡単に言うは。あんたがここに居てもきっと何も出来ないだろう?」


「なっ・・・!」


「さっさとしゅきしゅき大好きなマイスター・アーシャのケツを追いかけている方が有意義だって」


「ケ、ケツ・・・!?」



 そこに反応する辺りやっぱそっちの毛があるのか怖いわぁ。



「・・・っ! わかりました! ですが、それはあなたがブレイカーを使えるようになってから」


「もうなってまーす」



 俺は上空からリッター・ミレスの目の前に風を帯びながら着地した。

 あっ・・・シルクでフリルで緑色。



「きゃぁああああ!!! 馬鹿あぁああああー!!!」



 涙目でめっちゃ睨んで来る。これは指示に逆らったから睨んでるのかそれとも。



「大丈夫ですリッター・ミレス! マイスターの下へ向ってください!」


「うん! ここは引き受けます! 必ず守り通します!」


「俺達三人に任せろ!!」



 俺達三人は揃って親指を立て心配はいらないとリッター・ミレスの心配を解いてあげた。



 全員鼻血を出しながら。




「ぅぅうぅう!!! あなた達!! 戻ってきたら説教ですからね!!!」



 頭に血がのぼったのか、この場から居なくなりたいって奴なのか。猛スピードで駆け抜けていった。

 何故かスカートをしっかりと抑えながら、何故だろう・・・。



「リュルさん、あの・・・」


「僕のせいで・・・」



 ったくしをらしい顔しちゃって。

 それよりも優先すべきことがある。



「話しは後だ、ちょっと二人に頼みたい事。俺達三人にしか出来ない事があるんだ」



 俺はすぐに二人へ思い付きの作戦を伝える。

 名付けて【ジェットストリームガード】だ!!






―――   ―――   ―――




「くっ!! スフィアレイビット!」



 アーシャ達の戦いは激化していた。モース型一体を撃破した途端に新種のアンダーズの標的が損傷を受けている2班、そしてモース型の迎撃をしている1班へと集中し始めた。

 進行速度は低下させているが、強大な砲撃相手には全ての防御術が意味を為さなかった。


 密集すれば一撃で吹き飛ばされ、味方の救援に向かおう物なら進路を絶ち分断を図ってくる。

 


「い、いやだぁぁああああー!!」


「走れぇえええええー!!」



 負傷者への回復魔術が追いつかない。

 どれだけ回復しても次々と撃ち込まれる砲撃のビームで吹き飛ばされる。

 新種の猛攻が激しくなった途端に全体の魔力消耗が増していっていた。



(このままじゃ、ブレイカーの魔力が尽きた子から・・・)



 アーシャ再びビットとファングビットを同時に展開し新種へと攻撃を仕掛ける。

 当然のようにタンクのアンダーズがそれを邪魔する。更に新種のアンダーズも迎撃用のビームを放ち続け接近を許さなかった。



「マイスター・アーシャ! 自分がおとりになります、その隙に!!」


「駄目! 迂闊に行っちゃ!!」



 オウギフはアーシャの静止を聞かず単身で新種へと飛び込んだ。

 タンクの妨害、直線的に走るオウギフに対しビームと共にバリア破壊の球体型の砲撃を開始した。



「ぐぅう! この程度!」


 妨害は防ぎつつ前進する。

 だが、タンクは一体だけではない。更に地中から新たなタンクが出現しオウギフに対して集中砲火を浴びせる。


 正面へ集中させたバリアはすぐに破壊され、オウギフの防御手段が無くなる。

 アンダーズはその瞬間を見逃さなかった。バリア再形成の時間を与える前に無数のビームをオウギフへと撃ち込んでいく。



 声を上げる暇も無くオウギフは高く吹き飛んだ。

 その姿を目の当たりにしてしまったアーシャは動きを止めてしまった。



 また・・・リベリィが―――。




「清き純真な涼風 ノーブルエアヒール!!」



 後方からの支援魔術。

 吹き飛んだオウギフの身体が光り輝く。負傷した体が見る見る内に回復していった。そしてそのオウギフを空中でキャッチしたのは・・・。




ミレスだった。




「アーシャ様!!!」


「っ!!!」



 止まってしまった動きを取り戻すかのようにアーシャは高速で動き出す。

 オウギフを狙い続けていたタンク達がアーシャに向く前に新種へと空高く飛び上がった。



「こんのぉぉぉおぉおおおおぉぉお!!!!」



 男顔負けの雄叫びを上げ、ストックから今までに無い輝きを見せながら新種へと取り付き、ファングビットと共に魔力強化したストックを本体に全力で突き刺す。



「ぬぅぅううあああぁああああ!!!!」


 

 ガリガリガリと激しい音を上げながらアーシャは新種へと取り付き壁走りをするように駆け抜けた。

 螺旋状に巨体の新種の本体を削りつつコアを探し出す。

 アーシャの飛距離は高く、他のリベリィ、少なくてもこの場にいる者は真似することは出来ない距離を飛び新種へと取り付いた。


 だが、アーシャにとってこれは賭けでもあった。

 今もなお螺旋状に全力で本体を削りながら降下しているが、自分が飛んだ距離よりも上にコアが有る場合、アーシャは賭けに負ける。



「っ!」



 降下中のアーシャの進路先にビームが撃ち込まれ様としていた。

 機動を読まれない為にも螺旋に、ジグザグに動いていたのにも関わらず、アンダーズはその動きを読んだ。


 だが、アーシャが速度を緩める事はなかった。



「清き純真な弾風 ノーブルエアフリップ!」



 アーシャがアンダーズのビームを浴びる瞬間、ミレスの魔術がアーシャの前方に展開しアーシャへ傷一つ付けること無く全てのビームを弾き飛ばした。


 ミレスの援護、言葉を交わすまでも無くアーシャはこの魔術が来る事をわかっていた。



(何処だ、何処にある! コイツのコアは!!!)



 取り付いてから地上までの距離が残り半分を切った。

 このままコアを破壊すること無く消耗だけして戦い続ける事が出来るのか。

 ミレスが加わって出来たチャンス。これを外してしまったら・・・。


 そう頭に過ぎり始めた時。



「っ・・・み―――」



 通り過ぎた一瞬の光。

 削り続けた新種の本体から、微かに見た物。



「見つけたっ!!!」



 ストックを持ち変え体勢を180度回転させる。

 紛れも無く、アーシャは、賭けに・・・勝った。



「フルビット収束!! ブレイカー最大出力!!」



 ストックの先に全てのビットを纏わせ、魔力を惜しまずブレイカーの稼働域を一気に上昇させ、今持てる力の全てを捧げ込み突撃する。

 彼女が見間違えるはずもない。その形、光。リベリィなら誰もが敏感になる物体。


 新種のアンダーズのコアが、そこにある。



「いっけぇええええー!!!」



 アーシャのストックが今、新種のコアを射抜いた。



「はぁあああああああー!!!!」



 射抜いたストックへと魔力を注ぎ込み両手で押し込む。

 この一撃で、この戦いを終わらせる為に・・・。



バギッ・・・!!!



 両手で抑え込んでいたストックが折れてしまった。入れ続けた力の余りアーシャはそのまま地面へと急降下を始めた。




(届いて・・・お願い・・・!)



 もう祈る事しか彼女には出来なかった、自分がそのまま地面へと叩きつけられることよりも、ただ・・・コアに自分の全てが届くことを。




ビギッ・・・!




 アーシャの力、魔力・・・そして想いが、届いた瞬間だった。


 コアにヒビが入りヒビは瞬く間にコア全体へ広がり・・・破壊した。






「止まった・・・」


「や、やったのか・・・!?」


 最後のモース型を撃破したリベリィ達が見上げる。消滅しながら崩れ行く新種のアンダーズを。


 その光景に腰を抜かす者が後を絶たない中。



 アーシャは崩れていく、アンダーズから目を離さないでいた。



「アーシャ様!!」



 地面に不時着する寸前にミレスがアーシャの身体を抱きかかえる。

 それでもなおアーシャは、目線を変えなかった。


 それだけでは無く、アーシャの表情は徐々に険しくなり出し、それを見たミレスもゆっくりと振り向いた。



「まさか・・・」



 今自分の目の前に起きている事が本当なのか疑いを感じた。

 ミレスの目には崩れゆくアンダーズの中から聳え立つ存在。



「ミサイル・・・!?」



 そう言い表すことしか出来ない形状の物がそこにあった。

 ただ一つ言えることは、そこにある物は。


 間違い無く・・・アンダーズだった。



「総員集結!! 防御バリア展開!!」



 アーシャの声がこだました瞬間、ミサイルの姿をしたアンダーズが動き出す。

 上空に飛び立とうと地表へ向け火炎噴射を開始した。


 とてつもない轟音を響かせながら辺り一面を火の海にしながら上昇を続ける。アーシャの指示が遅れていたらこの場に居た全てのリベリィが巻き込まれていた。


 だが永遠にも感じる噴射の炎で全員が身動きを取ることが出来ないでいた。



「ぐぅぅう!!」



 ストックを失い、魔力も底を尽き始めたアーシャはただ歯を食いしばり、持てる魔力を炎から守るバリアに集中し続けるしかなかった。


 新種のアンダーズが倒されたら自動的に出現するミサイル型のアンダーズ。

 これが敵の作戦、最後の切り札を止める出来ず、ただ優雅に上昇していくそれを黙って見過ごすしか出来ないでいた・・・。



「誰かお願い、あれを・・・止めて!!!」




 もはや藁にも縋る思いで、叫んだ・・・。












「あぁ~あーあ~、聞こえますか~~誰か~~応答してくださーーい。入ってますかーー。コンコン、入ってますかーー」



 インカム越しに聞こえる声に言葉を失い目を見開いた。






 産毛が逆立つって奴だ。



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