夕暮れ街道
明日には、蠍星から星が落ちてきて、
新しい神社ができるでしょう。
旅人は、山の上から、宿場町を見下ろして、
ここも神宵の街になったと、嘯くのです。
夕暮れ街道。
足をひっぱるナニカがいて背後を振り返ると、自分の影法師が足を引っ張っている。
宿場町には、黒い影。
後ろには、狐面の女の子もいて、りんご飴を舐めている。
声をかけると、「死ぬぞ」と答えて、郵便ポストの裏に隠れてしまいました。
冷たい風が吹いている。
冬ぞ来りて。
懐かしさの街道。
宿場町に冬が来ました。
人の魂を取って食べてしまうゆきふらしが跋扈する宿場町。
どこからか、笛の音がします。
紅い椿の落ち首。
宿場町のガラス戸に人の顔が映っています。
幽霊の顔。
懐かしい、故郷の同級生の顔。
私はすでに、この世の者ではないのかもしれません。
夢追い人、彷徨い人。
宿場町の街角に、懐古という名の雪が降ります。
さすらい人がやがて闇の者になったころ、お寺の蓮池に白い花が咲きます。
やがて、すべては想い出に…お酒の美味しい季節がやってきました。
懐古の街、宿場町。
片腕を、落としてしまったんです。
探しても見つからないんです。
いずれ、夢追い人は彷徨い人となって、宿場町の影に消えてゆくでしょう
つわものどもが夢の跡。
あ、そこの竹藪の影から、狐が飛び出してきた。
夏の音連れを告げる者。
夢の街、宿場町。
夢見の辻占に、明日は西にゆくといいと、聞きました。
明日はそちらに旅立つ予定です。
コードを抜いたはず黒電話が、故郷へ旅立てと命令し、
あめふらしが、ちらちらとビオトープの表面にできた雪の結晶で遊んでいる頃、
りんご飴の狐面の少女が「死ぬぞ」と言いふらしながら、あちこちにお札を張ってゆきます。
ここは宿場町。
不思議なことが起こる場所。
影法師が嗤っている。
お前も地獄へつれていくよと、
お気をつけ召されよ。
辻占の婆が云う。