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第二章 小説の書き方が分からない

1.言いたいことは最初に言ってしまう


 おおざっぱなあらすじでいいので、結末までバーッと書き下してしまいましょう(連載ものであれば、プロットができているところまででいいです)。そうしたら、あらすじ全体を見渡して考えます。()()()()()()()()()()()()()()()?小説の要点をひとことで表せたら、冒頭に戻って要約文をそのまま書いてしまいます。もうすこし膨らませて、その小説のテーマを象徴するようなミニエピソードにしてもいいですね。

 例を挙げましょう。勇者が魔王を倒す話だったら、冒頭で勇者に魔王の手下の雑魚モンスターを倒させます。恋する主人公くんがヒロインちゃんに告白する話なら、冒頭で主人公の恋心を白状させます。そうしておけば、そのあとどんなに寄り道エピソードを挟もうとも、読者は「最終的に魔王を倒すんだな」「最終的に告白するんだな」と念頭に置いて読み進めてくれます。



2.読者は猫である


 小説の根本は“あなた自身にとって面白い小説”ですが、他人に理解してもらうためには工夫が必要です。猫にでも読ませるつもりで執筆しましょう。たとえば、あなたはド◯クエが好きで、ドラ◯エみたいな小説を書いたとします。が、猫はドラ◯エをプレイしたことがありません。「この魔法はド◯クエでいうところのホ◯ミ」とか書かれたって、猫にとっては「なんのこっちゃ?」ですよ。「回復魔法」でもまだ分からない猫がいるかもしれません(それぐらい常識だろ!とお思いかもしれませんが、RPGに触れたことのない一般人なんてそんなものです)。猫の興味を引くような言い換えの猫じゃらしを駆使して説明してあげましょう。

 当たり前だと思ってサラッと書いた一文が自分にしか通用しなかったりするので、他人に伝える工夫というのは本当に面倒くさいですが、文法も書式も、あなたの頭の中などなにも知らない大勢の読者に、あなたの言い分を理解してもらうためにあるルールなんです。ルールを無視して書き殴れば“読みづらい文章”と思われてしまいます。名作といわれているようなプロの小説をたくさん読んで勉強しましょう。本当に本当に面倒くさいですね。



3.読点を打つタイミング


 作品を音読してみましょう。そのとき無意識に小さく息継ぎを挟んでいますね?息を吸うタイミングが読点を打つべきところです。読点が少なければ一気にまくし立てる感じやスピード感を表現できますし、読点が、多ければ、呼吸が、荒く、疲れ、果てた、様子や、瀕死、の、状態を、描写、でき、ます。書いたあと声に出してみて「日常会話でこんな喋り方はしないな」と思ってしまうような違和感があるなら、その文章の読点は多すぎるか不足しています。

 読み方によっては誤解されるかもしれない文章にも読点を打っておくほうが無難です。「鍛え上げられたこの足」は「鍛え上げられた、この足」としておかないと「鍛え上げられ蛸の足」とも読めてしまいますし、「ここではきものをぬげ」は、適切な読点なしでは「ここで履き物を脱げ」とも「ここでは着物を脱げ」とも読めてしまいます。



4.地の文の膨らませ方


 登場人物が何か喋ったときの様子は、漫画なら大抵そのセリフと同じコマに収まっていますし、アニメなら声優さんの演技を聴きながら画面を見ていれば分かりますが、小説には読者への手がかりが文章しかないので、いちいち説明してあげないと伝わりません。


「そうだね、プロテインだね」


とマックスが言ったとしましょう。このときあなたの脳内にマックスの爽やかな笑顔のイメージがありありと浮かんでいたとしても、


「そうだね、プロテインだね」

 マックスは笑った。


こう書かなければいけません。さもないと、読者が無表情のマックスを想像してしまうかもしれないからです(読者の脳内にあらわれるマックスが笑顔でも無表情でも差し支えないなら表情については説明しなくてもいい、ということでもあります)。

 この一文によって、セリフの主がマックスであることと、マックスが笑っていることを同時に説明できました。さらに地の文を膨らませたければ、マックスの表情を細かく描写します。


「そうだね、プロテインだね」

 マックスの口元に白い歯がのぞいた。


これでも笑っていることが分かりますが、もうひと押し描写を加えて、


「そうだね、プロテインだね」

 マックスの口元に白い歯がのぞき、午後の陽差しを反射してキラリと光った。


こうするほうが長いです。この調子で「時計の針が×時を指した」とか「そのとき一陣の涼やかな風が吹いて窓の外の並木の葉を揺らした」とか、マックスの周囲にあるはずのものをどんどん巻き込んで描写を連ねてゆけば、あなたの想像力次第でいくらでも地の文を長くできます。

 セリフにくっついている地の文は、状況を説明し、セリフの主が誰かを明らかにするためのものなので、誰が喋ってるのか分かりづらくなってきたな、と思ったら、こだわりがなくても直近の話者の表情や仕草をこまめに描写しましょう(セリフにくっついていない地の文は、小説を書いているあなたのセリフとお考え下さい)。


 地の文による長めの状況描写

「AくんのBくんに向けたセリフ」

 Aくんについての描写

「BくんのAくんに向けたセリフ」

 Bくんについての描写

 地の文による長めの状況描写

「AくんのBくんに向けたセリフ」

 Aくんについての描写

「BくんのAくんに向けたセリフ」

 Bくんについての描写

 地の文による長めの状況描写


基本的にはこんな感じが望ましいですね。


 想像しながら執筆するのはけっこうですが、セリフ以外描写せずに想像のみで話を書き進めてしまうのはおすすめできません。あなたの想像力がどんなにたくましくても、あとに残るのはセリフの羅列だけだからです。書かれていないことは読者が想像するしかありませんが、本当に読者の想像に任せてしまっていいんですか?読者は、あなたが作った世界の広さや、あなたが作ったキャラクターの容姿・性格などなにも知りませんし、説明してもすぐ忘れてしまいます。せっかく想像したなら、思い描いたことは書き漏らさず描写しておきましょう。セリフとセリフのあいだに何度も描写を重ね、読者を小説の世界へ引きずり込むんです。



5.段落の意味


 文章と文章のあいだに空行を設けるタイプの書式なら、段落はいらないと思います。段落とは、ぎゅうぎゅうに詰まった文章の頭がどこかを見つけやすくするためのものだからです。しかし、段落が持つもうひとつの意味を考えると、文頭を一字ぶん下げず空行のみによって文章を読みやすくする書式はいささか不利です。

 いま、段落を変えました。なぜでしょうか?話題が変わったからです。1.の最初の段落は概論ですが、そのあと実例の列挙に移ったため段落を変えました。2.の最初の段落はホ◯ミを知らない猫のたとえ話ですが、次の段落は別の話題です。1.は二つの段落を含んでいても、全体としてはひとつの話題を形成しているので、この大枠の話題が終わって2.へ切り替わるとき、筆者は初めて空行を挟みました。7.で述べるように、段落を使って文章を話題ごとの塊に区切っておくと、あとから小説全体のバランスを調整するとき便利です。



6.具体例から始めて抽象的なテーマを語る


 1.と矛盾しますが、読者はいきなり難しいことを言われても理解できません。なので、言いたい気持ちはグッとこらえて、なるべく簡単なたとえ話から始めます。「自然は美しい」と百回繰り返すよりも、「山の空気はおいしい」とか、「海は青い」とか、大自然の美しいさまをひとつひとつ描写していったあとで、「だから自然は美しい」と締めるほうがわかりやすいです。「この世界は腐っている」と言いたいなら、どう腐っているか、腐った人物の例を重ねて説明してあげましょう。共感を得ること請け合いです。具体的に詳しく説明したあとなら、読者も多少の哲学にはついてきてくれます。



7.全体のバランスをみる


 筆者は「巨大ロボットものの小説であっても、ロボットの活躍しないエピソードが必要だ」と考えています。“閑話休題”というやつですね。そしてロボットの活躍しないエピソードは、だいたい小説全体の真ん中に置きます。こうしておくと前半が終わって後半が始まることを読者に伝えられますし、前半と後半のボリュームがアンバランスになっていないかどうかをチェックしやすくなります。

 超能力バトルものだからといってバトル、バトル、バトルばかりだと読者は飽きます。しかしバトルがわずか一行で決着してしまい、そのあと延々と駄弁り続けるようでは拍子抜けです。壮大な舞台設定の披露にこだわるあまり、登場人物がセリフをもらえず無口になりすぎていませんか?序盤の長さに対して、盛り上げたい終盤がボリューム不足ではありませんか?そのエピソードを俯瞰したとき、ひとつのテーマを的確に示していると思いますか?

 小説(あるいは、連載もののいちエピソード)が完成したら、文章の量が()()()()過不足ないか確認してみて、足りないところには描写を増やし、冗長すぎるところは大胆に要約してしまいましょう。そのとき、文章を空行でブツ切りにするのではなく、段落を使ってまとめてあれば、話題と話題、場面と場面の転換点を掴みやすく、意味的な塊の個数を数えやすいです。



8.書いたら寝ろ!


 小説が完成しても、すぐ投稿してはいけません。絶対に投稿してはダメです。ウオオ俺は宇宙最強の作家様だぜー!!とノリノリで書き上げた渾身の作品でも、ひと晩寝かせれば粗が見えてくるものだからです。では、おやすみなさい。


 ……おはようございます。どうですか?序盤とか全然つまらないでしょう?誤字脱字もたくさん見つかったでしょう?昨日のあなたは執筆しながら何度も読み返しているので、あなたの作品をよく理解した気でいましたが、今のあなたのようにフレッシュな頭で、予備知識がなにもない読者にとっては説明不足かもしれません。

 書き進めながら細かい部分を忘れていっている危険性もあります。序盤と終盤で描写に矛盾がありませんか?設定忘れがありませんか?あせらず、おちついて、できれば一旦寝るか、なにか執筆とは別の用事をこなしましょう。

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