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理由

作者: 海野音
掲載日:2019/07/30

目的は、特にない。

だけど、それがいい。

歌いながら、目配せながら、秘密を持て余しながら。

しかし、いつもいいところで照らされる。

あと少しのところで邪魔される。

綺麗な目を吊り上げて、眼光を凌駕する。

引き締まった体を奮わせて、動揺を凌駕する。

きっと目的など、どうでもいい。

私の背中に近づくのは、時限爆弾に成り損ねた君。

なんの勝利か分からないが、高揚の笑顔を見せられる。

叫びか嘆きか分からないが、恍惚の声を聞かされる。

今日も目的などないのに。

時間の感覚を縮めるなら、命の速度を上げればいい。

これでも全速力だったのに。

あと少しで、君に会わずに済んだのに。

時の流れを伸ばすなら、踏ん張る足を曲げればいい。

これでも今まで生きてこれたのに。

あと少しだったのに。

目的も約束もない、漂うだけの私。

綺麗な吊り上がった目が、自慢気にウィンクしている。

屈辱と恐怖を引きちぎるため、私は走る理由を歌にする。


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