5月 第1週 (1)
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5月の空気は独特で嫌いじゃない
さわやかな天気と、緊張のほぐれた雰囲気が合わさって無気力感がそこら中に溢れてる
月初めの朝礼で、自販機のラインナップについて学校側から規制が入った
これじゃ緩んだ気持ちを炭酸で引き締めるのができない
新聞部の先輩は、「ここ数年でもっとも気の抜けている時期になりそうだ」と評価してた
...ボージョレ・ヌーボーかよ
アレはそんなに悪いこと書かないけどさ
でも僕自身やる気が出なくなってきてしまった
取材なんてホラ吹いて校舎周りの散歩中だ
ちらほら同じようにサボってるらしい人が居る あれは先生か やっぱり皆だらけるんだな、この時期は
ふらふら歩いていたら、サボりのたまり場として人気な校舎のはずれに来ていた
ボーッとして立ち止まっていると、後ろから来ていた人とぶつかってしまった
女の子だ 確か二つ隣のクラスだったかな
四月の人気部活アンケートで同学年を回った時に見かけた気がする
あんまり目立つ娘じゃない感じだなー
「す、すみません!」
そう言いながら彼女は駆け足で走り去っていった
ふと足元を見ると、缶ジュースとレシートが落ちていた
彼女の物だと思ったけど、返そうにももう姿は見えないし、走るのもめんどいから、貰ってしまおう
五月病の空気を吹き飛ばすような強烈な違和感が、レシートからやってきた
あの娘、昨日の放課後に近所のスーパーでこのジュースを買ってるらしいけど...
さすがに50本は多過ぎるって!
スーパーのオリジナルブランドで、多少安くはなってるけど!
あの娘わりと小柄だったぞ!そんなに飲めねぇだろ!
あの娘確か文化部だし!
業者じゃあるまいし!
頭の中でツッコミを入れてる内に、だらけた脳みそが回ってきた。
あの娘はおかしい
絶対ウラがある!
気づいた時には、ジュースとレシートを握りしめて走り出していた