雨宿り
赤信号で立ち止まり、通勤快速が来るのを
待ち、評判の店の前に並び、俺はただ目の前
で目減りしていく時間を眺めていた。
人生はつかの間の雨宿りみたいなものだと
古い詩人が言った。人々は狭い軒下に立ち止
まっては去り、またやってくる。実のところ
俺はこの軒下から一歩踏み出してしまいたい
という欲求を抱きつつあった。もう待つのに
は飽きた。雨の中に姿形が消えてしまうとし
ても、もう構わない。
気に入っていた近所のラーメン屋はいつの
間にか潰れて空きテナントとなり、そしてコ
インランドリーになった。俺は目の前で渦を
巻く衣服を眺めながら椅子に腰掛けていた。
砂時計の砂が確実に溜まっていくのを感じな
がら。
衣服の乾燥が終わっても俺はコインランド
リーに残っていた。激しい雨が窓に打ち付け
ている。だから俺は待った。それからしばら
くして雨が止んでも、俺は待ち続けた。




