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Ep.77 センスと趣味と判断力

  あのソフィアさんとゼオン君の姉弟ゲンカを見た日から二日後、今日はお祭り本番の前日。

  ここ数日間、毎朝毎晩……いや、毎夕方かな?まぁどっちでもいいか。とにかく、毎日レインと二人でたっぷりお水をあげた甲斐があって、例の薔薇(ばら)は無事開花寸前まで来たと思う。

  あの日からちょくちょく顔を出してくれてるゼオン君も、今朝大きく膨らんだ(つぼみ)を見て『立派に育ったねー』って評価をくれたしね。


  そんな訳で、今日も今日とて朝の水やりを終えた後。いつもならそのまま一度別荘に帰って皆でランチとかになるんだけど、この日だけは私達は徒歩でマーケット通りの門の前へと向かった。


「悪いな、待ったか?」


「お待たせして申し訳ありません、フローラお姉様、レイン様。」


「ライト様、ルビー様、お足元にお気をつけ下さい。」


  と、そこでしばらく待っていれば、ガラガラと車輪の音をさせながら、豪奢な馬車が私達の目の前に止まる。

  その中から降りてきたのは、いつもよりずっとラフな格好をしたライトとルビー、そしてハイネの三人だ。


「いえいえ。じゃあ、私は先に失礼しますね。フローラ、また後でね。」


「うん!気を付けて帰ってね。」


  そんな三人と入れ違うように馬車に乗り込んだレインは、軽く手を振りながら去っていった。それに手を振り返えして見送ってから、三人の方へと向き直る。


「三人共、付き合ってくれてありがとう。」


「私はお姉様のお頼みとあらば全力で勤めを果たしますわ!」


「ま、どうせ退屈してたし構わねーよ。フライの足止めはクォーツがしてるしな。」


  そう、今日はライトとルビーに付き合ってもらって、初日に買えなかったフライへのプレゼント選びにやって来ました!

  クォーツはフライを別荘に足止めする為にこっちには来てないけど。あと、『僕自分のセンスに自信無いし、贈り物を選ぶならライトに頼んだ方がいいと思うよ。』とのこと。

  そんなわけで、お言葉に甘えてフライについてはクォーツに任せて、アドバイザーのライトと、マーケット通りに興味津々なルビー。そして、保護者のハイネと一緒に今からお買い物に行く訳です。

  レインも関心はありそうだったけど、ここ数日間毎日のように来てたゼオン君の距離感の近さに当てられて気疲れしちゃってるみたいなので、今日は先に帰りました。ゆっくり休んでね。


「それで、早速なんだけど……フライってどんな物が好きなのかな?」


「そうだな……、アイツもなかなか変わった趣味してるし……。」


  背中にハイネの視線を感じつつ並んで歩きながらそう聞けば、ライトは首を捻って考え込んでしまった。そ、そんなに変わった趣味なの……?


「あの、フローラお姉様。」


「ん?どうかしたの、ルビー。」


「今更なのですが……、ライトお兄様のプレゼント選びはおふざけが凄まじかったのではありませんか?」


「ーっ!!」


  わ、忘れてたぁぁぁぁぁっ!!!


  ルビーからの指摘に、以前ライトと二人でフェザー皇子の誕生日プレゼントを選んだ時のドタバタ劇が脳裏を過る。

  あー、あの後のエドガー君襲来事件の印象に上書きされてすっかり忘れてたよ……!


「何してんだ?行くぞー!」


  この場で頭を抱えたくなる私を他所に、少し先で立ち止まったライトが片手を上げて私達を呼んでる。とりあえず、この人混みではぐれたら大変だし駆け寄るけど……。


  ま、まぁ、ライトだっていつもいつもふざけてる訳じゃないだろうし、大丈夫だよ……ね?











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  大丈夫じゃなかった……!


  ライトがお勧めしてくれるのは、レンズを通して見たものが全てお化けに見えるオペラグラスや、被って喋ると自分の声がゾンビみたいな声になるゾンビの頭のマスクとか、そんなものばかりだった。


  しかも、呼ばれて近づいた所に不意打ちでそんなものばっかり出してくるから、私もルビーもビクビクだ。


「ライト……、付き合ってくれるのは嬉しいしありがたいんだけど、私は“相手が喜んでくれる”プレゼントにしたいんだよね。」


「何だよ、喜ぶかも知れないだろ?」


  いや、まぁ、私もルビーもフライの好みを把握してる訳じゃないから、ホラー系が好きなのかどうかなんてわかんないけど……。でも、仮に喜んでくれるにしてもプレゼントボックス開けていきなり生首(ゾンビマスク)ってどうかなぁ……。


  それをそれとなくライトに言ったら、『贈り物と言うのは自分の感性じゃなく、贈る相手の立場に立って考えて選ぶものだ』なる名言が返ってきた。


  いやまぁ、私も贈られる(フライ)の立場に立って考えて言ったんだけどね……。


「とにかく、ホラー系以外にも見たいんだ。何か無いかな?」


「はいはい、じゃー物色するかぁ。」


  ゾンビマスクを棚に戻して別のものを見始めたライトを確認して、私も他の棚を見ようと(きびす)を返す。


「……?」


  と、すぐに後ろから誰かに肩を叩かれる。そちら側を振り返ると、そこには……


「きっ……、きゃぁぁぁぁぁっ!」


  すごい間近で私の顔を見ているゾンビが!!


  ……って、驚いて腰抜かしてから気づいたけど、これさっきライトが持ってたゾンビマスクじゃ……!


「ら、ライト……?」


「ん?何だよ、俺はこっちに居るぜ?」


「え……!?」


  恐る恐る呼んでみたら、目の前に立つゾンビの向こう側からライトがひょっこり顔を出した。


  じ、じゃあこのゾンビさんは誰!!?


  ~Ep.77 センスと趣味と判断力~ 


『ねぇクォーツ、皆は何処に行ったんだい?』


『え?いや、お買い物、かなぁ……。』


『ルビーも?』


『う、うん……。』


『君がルビーから目を離すなんて、珍しいね?』


『うっ……!い、いや、まぁルビーにも自由が必要かなぁ、なんて?』


『そんなに視線を頑なに逸らしつつ言われてもね。しかも語尾上がってるし。』


『……っ!』


『僕、自分の知らないとこでこそこそ動かれるのが一番嫌いなんだよね……。』


『こ、こそこそって、そんな言い方しなくても!』


『…ってことは、やっぱり何か企んでるんだね?』


『あっ、しまった……!』


『さぁ、白状してもらおうか……。言い逃れは許さないよ?』


『……~~っ!じ、実は……』



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