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Ep.75 姉と弟・前編


『やっぱ姉弟だったんだ!私、昨日ウソついちゃったよ!!』


「わーっ、本当に大きいね!」


「でしょ?私も昨日見てビックリしたよー。」


  翌日、私は朝から皆と一緒に薔薇(ばら)の水やりにやって来ました。……って言っても、私と一緒に水やりをするのはミストラル出身のレインだけで、他の皆は司会のお仕事の説明を受けに別行動してるけど。皆昨日私がこの薔薇の話したら一回見てみたいって言ってたから、もしかしたら後からこっちに来るかもね。

  そして私と一緒に(つぼみ)の前に来たレインは今、そのあまりの大きさに感嘆の溜め息を漏らしている。


「これだけ大きいんだから、咲いたらすっごい迫力だろうねぇ……。」


「そうだね!じゃあ、早速始めようか!!」


  レインと二人で『おーっ!』と手を上げて気合いを入れる。なんだか懐かしいな、この感じ。


  よし、気合い十分になった所で、張り切って雨雲出しますか!












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……意外と早く済んじゃったね。」


「まだ蕾で花が開いてないから、水やりもやりやすかったもんね。」


「そうだねー。で、ライト達は……っと。」


  折角の水やりですが、花よりも土に全体的に魔力で生み出した水をたっぷり含ませるという目的は僅か30分ちょっとで達成してしまいました。

  とは言っても、あげる範囲が広いのと、あの薔薇があげる側から吸い込んでしまうのか最初の10分位はあげてもあげてもすぐに土が乾いちゃってたりしたけどね。


  そんなわけで、早く終わってしまった私達はライト達を探しにお祭り会場の方に来てみた……んだけど。


「ステージが広い上に人がいっぱいで、全然見つからないや。」


「本当ね……、困ったなぁ。」


「周りが大人ばっかだから姿も隠れちゃってるんだよ、きっと。」


  私のその言葉に、レインが忙しそうに行き交う大人達の波を見て『なるほど……』なををて呟く。

  そんなレインは、前にあまり大勢の人が集まる場所に慣れてないって言っていた。なんだか疲れた顔をしてるように見えるのは気のせいじゃないはずだ。


  動いている人の中に誰か知り合いでも見つかれば、その人に手掛かりが聞けるんだけど、今日は唯一の顔見知りのソフィアさんが実家の方に戻ってて居ないし……。他にスプリングに知り合いなんて……


「あっ!あの人……!」


「フローラ、どうしたの?」


  居たよ、知り合い……って程じゃないけど知ってる人!


「レイン、話が出来そうな人見つけたから行ってみよう!」


「う、うん、わかった!」


  何かステージの配置を見て話し合ってる大人達に混ざっても目立つ、綺麗なピンクブラウンの髪。

  太陽の光を反射して宝石みたいに輝くそれは、周りより頭ひとつ分低い彼の居る場所を見つける十分な目印になった。


  ちょっと戸惑った様子のレインの手を引いて駆け寄ると、たまたまこっちを振り返った男の子が私達に気づいて一瞬驚いた表情(かお)をする。


「あれっ、君昨日マーケット通りで会った子だよね。観光客じゃなかったんだ?」


  『この場に居るってことは、ひょっとして祭りの関係者?』と言いながら、彼はわざわざ大人達の輪から抜けて私とレインの方まで歩いてきてくれた。


  私とレインは、その問いに肯定の意味を込めて頷いて『そうなんです』と笑う。 歳の近い、優しそうな男の子の登場で、固かったレインの表情もちょっと和らいだ。良かった……。


「じゃあ、改めて自己紹介が要るかな!俺はゼオン、よろしくな!!」


「は、はじめまして、レインです。」


「改めまして、私はフローラです。よろしくね!」


  ゼオン君が気さくに話してくれるので、私達も普通に挨拶を返す。レインはちょっと緊張してそうな感じだったけど、笑っては居るし大丈夫かな……?


「で、フローラとレインは何をしにここに?てか、いきなり現れるからビックリしたよー。」


「任されてたお仕事が終わったから、こっちに居る友達を探しに来たんです。でも、まるで見つからないから困り果てちゃって……。そんな時に貴方を見つけたから、話が出来ないかと思って来たんですが……驚かせちゃいました?」


「そりゃ驚いたよ~。昨日名前聞きそびれた金髪の天使が、こんな可愛いお友達連れて現れたんだから。」


  ゼオン君はあっけらかんとした感じでそう言って、然り気無くレインの頭をぽんぽんと叩いた。

  うーん、同い年かなと思ってたけど、この女の子慣れした雰囲気的に中学生くらいかな?でも、あくまで冗談っぽい軽口だから、あんまり嫌な感じはしない。

  しないけど……レインが真っ赤になってふらつき出したから、とりあえず然り気無く二人の間に入って保護する。


「ところで、昨日はお姉さんに会えたんですか?」


「敬語じゃなくていいよ。姉貴ねー、見つけたけど男といい感じだったから気を使って声かけなかったんだ。」


  そう言ったゼオン君は、今度は私の肩に手を回しながら『大人の気遣いが出来るっていい男だと思わない?』と笑った。しかもウインクのオマケ付きで。

  か、軽いなぁ……。悪い人では無さそうだけど。とりあえず、肩に回された腕だけは外して本題に入ろう。


「あ、あの……、本題なんだけど、この辺りで金髪に紅い瞳の男の子と、緑髪に水色の瞳の男の子と、茶髪で黄色い瞳の男の子と、明るい茶髪で赤い瞳の女の子の四人組を見なかった?」


「四人組……?いや、見てないなぁ。その子達が友達?」


「は、はい!そうです……。」


  私の肩から外された腕を体の前で組ながらそう言ったゼオン君に、私の背に隠れてる内にちょっと復活したレインが声を一瞬上ずらせながらそう答えた。


「……よし、わかった。俺も探すの手伝うよ!」


「え!?いいの?」


「流石にご迷惑じゃ……」


  思わぬ提案に私達は顔を見合わせたけど、ゼオン君は明るく『可愛い女の子の為ならこれくらい全然平気だって!』と私達の背中を押す。でも、ゼオン君だってやることあるよね?しかもさっきお互い自己紹介したばかりの仲で……、ここまで甘えちゃうのは流石に気が引ける。


「ホントに遠慮しなくて良いって!俺は花の配達に来ただけだからこのあとは暇だしさ。それに、人探しならこの場所に詳しい奴が居た方が楽なんじゃん?」


「それは確かに助かるけど……」


「じゃあ決まり!さぁ、行こう!」


  結局、ごもっともな意見とゼオン君の明るさに押し切られて、三人でライト達を探すことになった。

  ゼオン君を真ん中にして話しながら歩く間に、彼がこの街の一番人気のお花屋さんの息子さんだと言うことや、年齢は私達のひとつ上で中学生だってことを聞いた。

  内容自体は至ってシンプルなのに、話の合間合間にちょっとしたおもしろエピソードを折り込みながら話してくれるからとっても面白い。話上手なんだなー……。

  感心しながら聞いてる内にも話題は流れて、いつの間には今度は家族の話になっていた。


「あぁ、そうそう。うちの姉貴なんだけどさ、何年か前にいきなり魔力発動させちゃったんだよ。庶民なのに珍しいよな!」


「ーっ!」


  え、魔力……!?



「でもさぁ、その覚醒したタイミングが笑えるのなんの。シャワー浴びてるときに飛び込んできた(はち)にビビって吹っ飛ばそうとして、風呂場の壁と屋根までぶっ飛ばしちゃってさぁ……」


「ゼオン!!貴方何ペラペラ話してんのよ!?」


「げっ!マズイ……!」


  と、その魔力の下りの話を聞いていた私達に不意に投げつけられる鋭い声。


  少しだけばつが悪そうに笑いながら振り返るゼオン君と一緒に振り返れば、そこに居たのは私が今頭に思い浮かべていたその人で。


「全く、なかなか帰ってこないから見に来てみれば貴方って子は……!」


  顔を赤くしながら仁王立ちになるソフィアさんを見て、ゼオン君は私達に『これがうちのアホ姉貴ね』と呑気に笑いかけた……。



   ~Ep.75 姉と弟・前編~


『やっぱ姉弟だったんだ!私、昨日ウソついちゃったよ!!』 






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