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Ep.72 女の敵は……




『やっぱり、気に入らないのは異性より同性なのかなぁ……。』





  さて、頑張って練習を重ねていくうちに日々はあっという間に流れて音楽祭当日。


  フライの熱心な指導のお陰で課題曲を弾けるようになった私は、何とかボロを出さずに発表を終わらせる事が出来まして。公正を期す為にと生徒会メンバーはクラスの出し物に出なかったこともあり、なんやかんやでうちのクラスが優勝となりました。


「フローラ様、とても素敵な演奏でしたわ!」


「本当に!心が洗われるような澄み切った音色で、演奏中なのにうっとりしてしまいました……。」


  表彰を貰って解散した後、廊下を歩いてたらクラスの女の子達が私の隣に歩み寄って来ながら口々に褒めてくれた。よかった、一応期待外れにはならずに済んだみたい。


「ありがとう、ベリーさん、アミーさん。(わたくし)達のクラスが優勝を果たすことが出来て、本当に嬉しいわ。」


「そうですわね!これもフローラ様のお陰ですわ!!」


「……それは少し違うのでは無いかしら?この優勝は、皆さんが心と力を合わせた結果だと思いますわよ。」


  私の言葉に、二人が私の両隣を歩きながら『フローラ様は人格者ですわね』なんて笑う。いや、だって絶対私より断然上手い子達居たしね。私の力だなんて、そんなおこがましいこと……おだてられたって思えない。


「あら、フローラ様。本日はご苦労様でした。」


「ーっ!バーバラさん……、えぇ、お疲れ様でした。」


  と、並んで歩く私達の背後から不意にかけられた少し大人っぽい声。

  三人揃って振り向けば、そこには同じクラスの女の子達三人が並んで私達を見ていた。


「フローラ様は流石にクラス代表に選ばれるだけありますわねぇ、大変素晴らしいご演奏でしたよ。」


「まぁ……、ありがとうございます。」


  紫色のウェーブヘアに口の端にほくろ。小学生にしては背丈も高いバーバラさんは、私に歩み寄ってきてそう言いながら微笑んだ。

  バーバラさんの少し後ろに立っている女の子二人も、『本当に素敵でしたわぁ』なんて笑っている。


  褒めてくれるのは良いんだけど、三人とも目は笑ってない。この感じ……、前世でよく見た覚えがあるよ。


「ちょっと貴方達、フローラ様に失礼なのではなくて?」


「あら、私は普通にお話に来ただけよ?不躾なのは貴女方の方なのではなくて?」


  ベリーちゃんの言葉にそう反論して、『慕う相手を間違えたのね……』と小さく呟く。その、聞こえるか聞こえないか位の小声で呟かれた言葉を、私はしっかりと聞き止めた。自分に対する悪口って、なんでか普通に話す言葉よりハッキリ聞こえちゃうんだよね……。

  幸い今の言葉はベリーちゃんとアミーちゃんには聞こえなかったみたいだけど、バーバラさん達の高圧的な態度に二人も反発体勢だ。このままだとケンカになっちゃいそうだし……、なんとか切り上げないと。でも、一体どうしたら……?


「あの……申し訳ございませんが、この後人と会う約束がございますの。お話ならまた明日にして頂けませんか?」


  出来るだけこの場の空気を逆立てないように笑って、上から目線にならないように話を切り上げようと試みる。


  でも、その言葉に私を見下ろすバーバラさんの眉がぐっと寄った。気に触っちゃったみたい……。


「以前から思っていましたけど、フローラ様はクラスの方々とあまり親交を深めていらっしゃいませんね。私共のような下々の者とは関わりたく無いのかしら?」


「まぁ、そんなことはございませんわ。お恥ずかしながら、人付き合いが得意では無いだけです。」


  こう言う相手は、下手に煽るとこちらを人前で攻撃してこようとすることがある。私だけならまだ良いけど、低学年の頃から私を慕ってくれるベリーちゃんとアミーちゃんを巻き込みたくは無いし……ここは逃げるが勝ちだ。


「では、私達は失礼致しますわね。ごきげんよう、バーバラさん、ブレンダさん、ニコラさん。ベリーさん、アミーさん、参りましょう?」


「「は、はい。フローラ様……。」」


  嫌味にならないように微笑んで会釈をして、三人に背を向けて歩き出す。まだちょっと不満げなベリーちゃん達もついてきてくれるけど、その足はすぐに止まることになった。

  足の長いバーバラさんが、歩き出した私達の前に回り込んだのだ。


「あら、まだお話は終わってなくてよ?」


  うーん、しつこいなぁ……。波風立てたくないけど、ちょっと強気に出るしかないかな。

  ……身体の内側から感じる不安感を抑えるように両手を身体の前でぎゅっと握りながら、小さく深呼吸をして。私が口を開こうとしたその時……


「あらあら……、こんな所でどうなさいました?」


「……っ、貴方は……!」


「高等科から用があって来たのですが……、あぁ、こちらにいらしたのですね、フローラ様。」


  廊下のど真ん中で対峙している私達を見ながらそう言って微笑むのは、以前運動会で演劇の主役を勤め、更に中庭で一度私とお話してくれた、特待生のお姉さんだった。











ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「全く、あの人達の態度はなんなのでしょう!」


「まるで礼儀がなってませんわ!『ご苦労様』だなんて……、上の者が下の者にかける言葉じゃありませんか!!」


「お二人とも、落ち着いてください。まだ幼いのですから、言葉遣いの多少の間違い位は良いではありませんか。」


  結局、高等科のお姉さんの登場に驚いたバーバラさん達はそそくさと撤退して、それを見送った私達はお姉さんと一緒に初等科の校舎を後にした。

  ……のは良いんだけど、どうやらベリーちゃんとアミーちゃんはまだ怒りが収まらないみたい。私がなだめるように背中を擦りながらそう言えば、『フローラ様がそう仰るなら』と少しは落ち着いてくれたみたいだけどね。


「ですがフローラ様、バーバラさん達は最近、殿下方の周りに居る女や、人目を引く才能や美貌を持つ女を潰しにかかっていると聞きますわ。」


「くれぐれもお気をつけ下さい。何かございましたら、私達が駆けつけますから!」


「ありがとう、ベリーさん、アミーさん。では、また明日ね。」


「はい、ではお疲れ様でした。」


「お先に失礼致します。」


  私は高等科のお姉さんからお話があるとの事なので、二人には先に帰ってもらった。

  それにしても、あの二人は本当に私に良くしてくれるなぁ……。なんだか、レインやルビーとの関係とはまた違うけど、こう言うのもすっごく嬉しい!


「さて……、では、お話しましょうか?」


「ーっ!は、はい、お待たせいたしました!それで、お話とはなんでしょう?」


  と、考え込んでいた私をお姉さんの鈴を転がすような可愛い声が呼び戻した。

  振り返れば、お姉さんは中庭のベンチに腰かけて隣をポンポンと叩いている。

  私はそのご厚意に甘えて、いつかのときみたいにお姉さんの隣に座った。


  前から可愛かったけど、高等科に上がってすごく綺麗になったなぁ……。


  でも、高等科からわざわざこっちに来てまでのお話ってなんだろう??


「実はね……、フローラ様達にちょっとお願いがあるの。」


  私の疑問に答えるように、お姉さんはにこにこと笑いながらそう話を切り出した。



    ~Ep.72 女の敵は……~


『やっぱり、気に入らないのは異性より同性なのかなぁ……。』



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