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Ep.65 私、とっつきにくいですか……?




『別に恐い顔はしてないと思うんだけどなぁ……、たれ目だし。』




  六年生になってからと言うもの、ライト達が何だかんだで新生徒会の始動で忙しいので、自然とレインとルビーと女の子三人で過ごすことが増えた。


「じゃあ、最近はルビーもあんまりクォーツと会えてないんだ。」


「そうなんです、やはり引き継ぎなどが忙しいようで……。」


  『仕方のないことだとわかってはいるのですが』なんて苦笑いを浮かべながら、寂しそうにうつ向く。

  大分成長してきたとは言え、まだ小学五年生だ。寂しいんだろうなぁ……。


「ーー……。」


  そんなルビーの姿に、私とレインは顔を見合わせる。

  実は、このひと月クォーツにあまりに会えなくて寂しがっているルビーに、今日は私達から提案があるのだ!


「ねぇルビー、実はちょっとお話があるんだけど……。」


「お話ですか?」


「えぇ。ねっ、レイン。」


  私が話を振ると、レインが優しく微笑んでルビーにその内容を話し出した。


「あのね、私達、一年生の頃からクォーツさ……クォーツ君と、毎朝花壇の手入れをしてるの。」


「はい、それはもちろん存じておりますが、それが何か……?」


「だからね、今も私達は朝だけはクォーツに会うんだよね。」


  私のその言葉に、ルビーのその宝石みたいな瞳が輝く。うん、意図は伝わったみたいね。


「ルビーも、よかったらその花壇の手入れをお手伝いしてくれない?」


「します!ぜひともお手伝いさせてくださいませ!!」


  予想通りの満面の笑みで喜んでくれたルビーに、私達も顔を見合わせて笑う。

  久しぶりに皆で笑いあいながら食べるランチは、なんだか優しい味がした。







 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  そんな和やかなランチを終えて、それぞれの教室へと戻る。ルビーは下級生で階が違うし、私とレインはクラスが遠いから、いっつも一人で歩くことになるんだよね。仕方ないことだけど……。

  それにしても、ルビーが喜んでくれてよかった。クォーツには内緒にしといて、明日の朝びっくりさせちゃおうかな?


「ん……?」


  そんなことを考えながら歩いていたら、少し前をフラフラしながら歩いてる女の子を見つけた。

  着ている制服は薄いエメラルドみたいな緑。スプリング出身の子みたい。うちのクラスの子じゃ無いけど、あまりに足元がおぼつかないのでちょっと心配になって、早歩きで近づいてみる。


「大変そうね……、日直ですか?」


「えっ……?ふ、フローラ様!」


  隣まで追い付いてみて、その原因がわかった。

  女の子は、その小さな両手で束にした教材を運んでいたみたい。その高さは、抱えている女の子の顔に被るほどだ。

  しかも……こんなお金持ちの学園の教材だから紙質が良く、一枚一枚が厚めな訳で……これ、一人で運ぶには重いでしょう!!


「……半分貸してください。」


「えっ?で、ですが……」


  戸惑う女の子の手の上から、重なった教材を半分より少し多めに持ち上げる。

  うわっ、半分でも結構重い!しかも、カバーがつるつる素材だから滑るし……。運ぶの大変だっただろうな。


「こちらは、貴方のクラスまでお運びすれば良いのかしら?」


「は、はい。職員室で先生からお預かりしまして……。で、ですから、クラスも違いますしフローラ様に助けて頂くわけには……!」


「私はAクラスですから、教室は向こうの一番端ですの。どうせ通り道なのですから、気にしないで下さいな。」


  そう言って、出来るだけ恐がらせないように微笑んでみる。


「……っ、では、お言葉に甘えさせて頂きます……。ありがとうございます。」


  笑顔で無事安心して貰えたのか、女の子はちょっと赤くなりながらそう答えてくれた。

  この子が何組かは知らないけど、現在地はレインとフライの居るDクラスと、ライトの居るCクラスの間だ。……けど、この学園無駄に教室が広いのに扉は一ヶ所しか無いから、入るまでにはまだちょっと歩くもんね。

  こちらが無理に圧し切った面もあるけど、やっぱ辛かったんだろうなぁ……。


「…………。」


「……?あ、あの、私が何か……?」


「あら、ごめんなさい。何でもありませんわ。」


  もうフラフラしてないから大丈夫かなと思いつつ、私より少し背の低いその子を見ていたら警戒されてしまった。じっと無言で見られるってなんか恐いよね……、ごめんね。

  ただ、肌は白くてすべすべだし、髪が白銀の絹糸みたいで綺麗だから見とれてただけなの。だからそんなに怯えないでーっ!取って食べたりはしないから!!


「あ、私のクラスはここなので……。あ、ありがとうございました。」


  と、内心で弁解しまくっていた私を、女の子のか細い声が呼び戻した。

  ふと目の前を見てみれば、ドアの上のクラスプレートはB。クォーツと一緒のクラスだね。


「ここじゃ半端ですし、中まで運びますわよ?」


「いえ、もうチャイムが鳴りますし……。本当に大丈夫ですから。」


「……わかりました。では、乗せますね。」


  本当に大丈夫かなとは思うけど、確かにもう午後の授業が始まっちゃうし……。ここは仕方ないか。

  なので、重ねやすいように自分の持つ教材をこちらに向けてくれた女の子に私が持っていた分の教材を渡し、せめて入りやすいようにとドアを押さえる。


「……?」


  すると、私と女の子の姿を見た教室の中の生徒たちが一気に静まり返った。な、何……?


「本当に、ありがとうございました。」


  しかし、そんな空気など気にせずに、女の子は最後にもう一度そう言って教室に戻っていった。ずっとドアを開けとくのも何なので、Bクラスの子達に軽く一礼してその場を離れる。

  教室自体が防音なので、その後教室の中がどんな様子になったのかは私にはわからなかったけれど。

  

  それをちょっと気がかりに思いながら自分のクラスの教室に戻ると、早めに教室に来ていたらしい担任の先生が、私を見てすごく良い笑顔を浮かべていた。

  何だろう、私、何かしたかな……?



   ~Ep.65  私、とっつきにくいですか……?~


『別に恐い顔はしてないと思うんだけどなぁ……、たれ目だし。』






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