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Ep. 59.5 新たな企み(マリンside)



 

  『来年には中学に上がるし……丁度いいわ。』

  炎の国“フェニックス”での展覧会より数日後。

  城下町のとある屋敷の一室で、一人の少女が癇癪(かんしゃく)を起こしていた。


「一体どうなってるのよ!!何であの日のことに王室からの調査が入るわけ!?」


  そんな中、少女が叩きつけるように放り投げたガラス瓶を避けながら、『落ち着いてください、マリン様。』と(いさ)める一人の男。

  他の使用人は彼女が恐いのか、触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに距離を置いている。


「落ち着けるもんですか!!あの程度、事故で済まされそうな些細なことじゃない!それが何でこんなことに……!!」


「……恐れながら、今回ばかりはお嬢様の失策ではないかと存じます。」


  小さな主人に気づかれないように深いため息を溢した男は、至って冷静な声色でそう言った。

  自分を否定するかのような事を言われたマリンは激昂し、『なんですって!?』と声を更に荒げる。


  その姿に、最早幼い少女特有の可愛らしさなどは皆無であった。


「どこが失策だって言うのよ!あの悪役姫には私の顔は見せてないし、馬に嗅がせた薬はあの日に港に届いた貨物に含まれていたものなのよ!何処に不審な点があるって言うの!?」


「策自体のことではなく、無闇に他国の姫君に手を出したことが問題なのです。」


「……どういう意味よ。今回あの子が街に下りたのは偶然のことだし、その中で起きたトラブルのことなんか両親(国王夫妻)には話せないはずよ。」


  男はそう不満を口にした主人に一歩(いっぽ)(あゆ)みより、『確かにその通りでございましょう。』と恭しく答える。

 年若きその執事の肯定の言葉に、僅かに落ち着きを取り戻した少女が反論の姿勢を見せた。


「だったら……」


「しかしながら、それはあくまでもフローラ皇女お一人を相手にした場合のお話でございます。」


「はぁ?ワケわかんない、ハッキリ言いなさいよ。」


  やり場のない怒りをぶつけるように乱暴に椅子を引き腰掛けた主人に『お行儀が悪いですよ』と注意しながら、男はさも簡単な事だと言わんばかりに説明を始める。


「まず、今回調査に派遣された兵士たちは我が国の王家の騎士団の一部でありました。しかしながら、規模は十人にも満たない少人数……。この事から、彼等を動かしたのは陛下や王妃様ではないと推察されます。」


  淡々と語る執事を睨み付けながら、『じゃあ誰の仕業だって言うのよ』とマリンは頬を膨らませる。そんな表情をした彼女に、男は躊躇(ためら)いなく『ライト殿下のご指示でしょう』と答えた。


「なっ……!なんでライト皇子が!?」


「お嬢様がお気に召さないと度々おっしゃるので、私共もフローラ皇女について探らせて頂きました。その結果、彼女は各国の皇子や皇女と子供ながらに信頼関係を築いているようでした。なので……」


  『今回は、彼女から事情を聞いたライト殿下が友のために動かれたのでしょう。』と言われ、一瞬二人の間に沈黙が流れる。


「そうか……、わかったわ。とりあえず、今回の件は上手く処理して!出来るわよね?」


「もちろんです、お嬢様の仰せの通りに致します。」


「そう……、貴方は他の役立たずどもより比較的忠実で良いわ。とりあえず行って良いわよ。」


  『ありがたき幸せにございます。』とわざとらしく頭を垂れてから、男は足音のひとつも立てずに静かにその場を後にした。


「やっぱり、近くで一緒に過ごせないのがいけないのよ……。ーー……なんとかしなきゃね。」


  もう夕刻だと言うのに明かりもつけぬまま、少女の呟いた企みは薄暗い部屋に溶けていった……。



      ~Ep.59.5  新たな企み(マリンsaid)~


     『来年には中学に上がるし……丁度いいわ。』

  今回で暗い話は一旦終わりになります(^-^ゞ


次回はフェザー皇子のお祝いと天体観測話になります!




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