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Ep.45 サプライズって難しい 前編



『誕生会まであと一時間……、でもこのペースなら間に合う!……私の胃が恐怖でやられちゃいそうだけど。』


「よーし、会場の準備するぞーっ!」


「「「「おーっっ!」」」」


「……元気だね、皆。」


  ライトの掛け声に私、レイン、ルビー、クォーツが応え、そんな私たちを見てフライ皇子が淡々と呟く。と、ふと

そちらを見ればそんな冷めたフライ皇子の肩に手を回し、ライトがバシバシと背中を叩いていた。


「なんだフライ、お前の兄貴の誕生会だろ!やる気出せよ!!」


「祝う気は勿論あるけど、何でわざわざこんな……。」


  嫌そうに肩に回されたライトの手を外しながら、フライ皇子は反対の開いた手でテーブルに乗っている色とりどりの紙で出来た輪飾りを指先でつついた。


「って言うか、何なのこれ。」


「何って、お誕生会の飾りですわ。私とレインとルビーでお手本用に作りましたの。」


「これが飾り……?」


  私の返答に、フライ皇子が少しだけ怪訝そうに眉を寄せた。まぁ、生まれながらの王族、貴族の皆からしたら馴染みが無いかもだけど、やっぱ手作りの誕生会の飾りって言ったらこれだよね!

  お料理はシェフに頼んだけど、ケーキと会場は自分達で準備しようって皆で決めたんだから、飾り付けも自分達でやらないと。


  ……と、言うわけで。


「まずはこの色紙で、同じ幅の(おび)をたくさん作ろうか。」


「全員でか?」


「うん、会場広いからたくさん必要だし。あ、帯切る人と輪を繋げる人でペアに別れても良いかもね。」


「ペアか……。じゃあ、男女で分けた方が良いかもね。女の子達は一回これ作ったんでしょ?」


  ライトと私の話を聞いてクォーツがそう提案し、確かにそうだと皆も同意した。

  でも男女ペアか……、どう分けよう?


「別に適当で良いだろ。えーと……あぁ、このリボンでも使うか。」


「リボン?どうするの??」


「まず、どのリボンがどこに繋がってるかわからないよう軽く絡ませて、片方の端を俺たち男子が持つ。」


  ライトが同じ色のリボンを三本手に取って絡ませ、一本を自分が握り、あとの二本をそれぞれクォーツとフライ皇子に持たせた。

  そして、反対側のリボンの端を私達の方に差し出して、握らせた。


「ほら、こっちはお前らが掴め。で、引っ張って見て同じリボンを掴んでた相手がパートナーだ。」


「なるほど、シンプルでいいね。じゃあ、引くよー!せーのっ!」














「……えーと、さっきは藍色だったから次は紫色を……、あ、帯が足りない。」


「あっ、紫ですね。すぐ切ります!」


  即興リボンくじ引きの結果、ライトがルビーと、クォーツがレインとペアになり、私の相手はフライ皇子だった。


  まぁ、それは良いんだけど……


「あ、あの、フライ様?」


「……何です?」


  そっと呼び掛けると、手は止めないまま声が返ってくる。フライ皇子は普段から話すときに目が合うことは少ないので(まぁそもそも普段からそんな話してないけど)、気にせずそのまま話し続ける。


「確かに(わたくし)は先程、『色を考えるのが難しければ虹色とかをイメージするとやりやすいですよ』とは言いました。」


「そうだね、だからこうしてちゃんとやっているんだけど?」


「そうですね、そうなんですけど、何もそこまでこだわらなくても良いんですよ?」


  私の言葉に、フライ皇子が首を傾げながら自分の手にある作りかけの輪飾りを見つめた。

  あぁ、これは真意が伝わってないな……。


「色紙にも限りがありますし、お部屋が広いから結構な長さが必要になりますから……。足りなくなった色は似た色で代用するとかしていきませんと。」


  『時間までに終わらなくなってしまいますわ。』と続ければ、フライ皇子は目の前にあるたくさんの紙の帯を見比べ出した。


  そして、赤系(赤、朱色、濃いオレンジ、薄オレンジ、ピンク)の帯を一本ずつ手に取り、良い笑顔で私の目の前に突きつけてくるとこう言った。


「では、フローラ様にはこれらがすべて同じ色に見えると?」


「いや、見えませんよ!見えませんけど、ある程度妥協しながら進めてかないと終わりませんよ?」


  私が未だ15センチにも届いてない短い輪飾りを手に持って軽く振れば、黒い笑顔は崩さないままフライ皇子は眉を一瞬動かした。


「……。」


「大事なお兄様の誕生会に使う飾りですから、こだわりたい気持ちもわかりますけど……、フェザー様とのお約束は午後の三時でしょう?このペースでは間に合いませんわ。」


  黙ってしまったフライ皇子にそう進言すれば、完全に勢いを削がれたのか持っていた色紙の帯をテーブルに戻してうつ向いてしまった。


「……あ、あの、フライ様?」


「ーー……。」


  あー……、拗ねさせちゃったかな……。

  こちらに背を向けて椅子に座り直し、黙り込んだまま作業を再開させたフライ皇子を見ながらその後ろでうろうろ。どうしよう、なんかフォローするべきかな……。

  ……って!


「はやっ!!」


  とにかく表情を確かめようと横から正面側を覗き込んで、そのまま目を見開いて固まった。

  今、私の目の前ではフライ皇子の綺麗な手が大量生産の工場とかで使う機械並みの早さで輪飾りを量産している!しかも、結局色はこだわったまま……。


「……何ぼんやりしてるんです?」


「えっ?」


  驚いて手元を見ながら固まっていた私にフライ皇子が振り返り、さっき以上に良い笑顔でニコッと微笑んだ。


「貴方がこのままじゃ間に合わないと言うからスピードを上げたんです。それなのに、貴方の方の作業が追い付かないなんて言いませんよね?」


「すっ、すぐ切ります!」


「お願いします。」


  見るだけで背筋がゾクッとなりそうな笑顔を向けられ、ダッシュで自分の位置に戻り色紙を切る作業に戻る。


  寒くもないのに震える手でハサミを握る私に、『僕の作業が滞らないようにしてくださいね。』の一言はかなり重かった……。


    ~Ep.45 サプライズって難しい 前編~


『誕生会まであと一時間……、でもこのペースなら間に合う!……私の胃が恐怖でやられちゃいそうだけど。』


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