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いじめられっ子の悪役転生記 ~『って、国ごと転覆!?冗談じゃないです!』~  作者: 弥生真由
第一章 穏やかな始まり

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Ep.381 荘厳の滝の向こうで


 これまで、明確な意思を持ってーー且つ自らの正体を開示して私達に接触してきた魔族は居なかった。


 初等科の時や聖霊の森ではあくまで正体を隠しての裏工作。

 リヴァーレ島では魔族絡みと言うよりかはキャロルちゃん個人で引き起こされた神獣の暴走。


 

 あとは、ここ半年で学院内に出回ったこの世界の元ゲームをテーマにした『ロマンス小説』の流出。並びに使い魔失踪事件が怪しいところだった訳だけど……結局、用心していた割にはブランをあっさり奪われてしまって。


 ーー……ただ、ただ、心臓が冷たくて。


 ずっと頭に霧がかかったみたいに役立たずになってる私を、ライトは一切急かしも、慰めもしないまま。

 帰りの船に揺られる間、黙って隣に居てくれた。



 そして、船が無事にミストラルの港に到着した直後。防衛を担っている騎士たちが俄に慌て出す。



「王国騎士団に連絡して王城と港の警備を強化しろ!」 


「陛下にも報告さしあげねば……!」


「殿下方は急ぎ王宮へ!道中は我々がお守り致しますっ」



 先に降りたライトとフライ、クォーツが順々に騎士団に情報の共有をしてくれている中、幾人かは下がったまま突っ立っている私を見ていた。

 自分達の国の皇女がだんまりじゃ困るよね、と船から降りようとして足元がふらつく。


 3人が振り返って、駆け戻ってきたライトに支えられた。


 ーー本当、情けない。


 誰も、何も言わないまま、目を一度伏せてゆっくりと息を吐き出すライトとフライ。



「……救出された3人の付き添いは僕が行く。医師を呼んでもらえるかい?」


「無論です!ではフライ殿下と御三方はこちらへ」


「ありがとう。ーーライト、任せたよ」


「……あぁ」


 ライトと頷きあって、ちらっと私とクォーツを見てから。フライがフェザー先輩たちを連れて先に馬車に乗り込む。

 クォーツは、何かを考え込んでいるのか何も発さない。

 そんな中、次はライトが口を開いた。



「此度の件、ミストラルの国王陛下に直接報告させて頂きたい。フローラ皇女も度重なる戦闘で疲弊しているので、婚姻前で不躾かと思うが……このまま王宮に向かわせて貰う。異論はあるか?」


「ーっ!それは……」



 幾人かが困惑した様子で私と自分達の隊長を交互に見る。

 そして、隊長がこちらに近づき真っ直ぐに私を見た。一度ライトの手を外してもらい、私も背筋を伸ばす。



「……殿下、ご判断を」


「ーー緊急事態です、委細は後ほど伝達しますから今は従ってください」



 隊長が頷き、バッと腕を払う。途端両脇にはけて礼を取った騎士隊のサポートで私達は王宮へと移動した。

 












ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 話を通しておいたお陰で、到着するなり私達はそのまま謁見の間に通された。いつもよりずっと仰々しいそこに踏み入るなり、飛び出してきたのは娘を案ずる母だった。



「フローラ……っ!」 



 私の顔を見て玉座から降りてまで駆け寄ってきたお母様の姿を見て、ライトがすっと隣から下がる。気を遣ってくれたのだろう。



「怪我はないのね?あぁ、良かったわ……本当に」 


「……ご心配をおかけして申し訳ありません、ただいま戻りました」



 公的な場なので娘を抱きしめるわけにはいかないお母様と、距離を保ったまま頭を下げる私。そんな妻と娘に、玉座から見下ろすお父様は何をお思いだろうか。

 見上げた先の水の国王(お父様)が、重々しく口を開く。



「此度の聖霊の巫女の護衛、心より感謝申し上げる」



 その言葉に礼を取るライトとクォーツを見て、お父様もふっと少しだけ口角を緩めた。お母様も私から離れ、椅子に掛け直して王妃の顔に戻る。

 この感謝は、魔導省と言う国家から手を出しづらい組織に目をつけられた"私"が彼等を巻き込んだ事への謝罪の意も含まれているだろう。


 ーー……結局、何もかもの火種は全部、 私だった。


 ぎゅっとスカートを握りかけて、やめる。まだ駄目だ、崩れるな……。

 兵達も見ている、王族の崩れを見せたら、国が弱る……!



「風の国の皇子への感謝も、後程私から直接伝えよう。それから、フローラ」


「 はい、《《陛下》》」


「現在、先に到着したフェザー皇子達の精密検査を行なっているが、その治療に巫女の力が必要とのことだ。

……わかるな」



 お父様の言葉に侍女と兵が私の背後に立ち、扉に手をかける。

 私は小さく息をつき、膝を折った。



「勿論です、お任せください」



 カーテシーから顔を上げた時、ライトと視線が重なって……ぎゅっと、胸が詰まる。

 姫様、と促されるまま、紅い双眸から逃げるように背を向けた。



 私の退出を以て、謁見の間が再び閉じられる。



 扉の閉じきる音と共に、向こう側の音が総て……消えた。



「……陛下が結界を張ったのね」



 つい呟いた声が、酷く震えていた。少しでも気を抜いたら、この場で膝をついてしまいそうだ。

 不在のハイネに代わって私の専属を務めている侍女が、不安そうな様子で私を見ていることもわかっていたけど……『大丈夫よ』って、取り繕う事さえ出来ない。


 いつもは皆から締まりがない、ぽやぽやだって言われる私の顔なのに、筋肉が凍りついてるみたいに……表情が、動かないのだ。



 能面みたいな顔してるんだろうな、と思いながら、真後ろの扉を振り返る。



 ミストラルの王宮は国内の水を魔力循環する装置の要にもなっていて、城の周りを囲う用に巨大な滝が流れている。

 なので、謁見の間ですら涼やかな水音が響き、無音など本来……あり得ない。




 その圧巻の滝による水音を掻き消すほどの厚さの結界。

 内側でライト達がお父様達に何を伝えてるのか、私には……何も聞こえなかった。


 


    〜Ep.381 荘厳の滝の向こうで〜



 『聞こえない、わからない。私は今から、どうすれば』







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― 新着の感想 ―
もうこれからどうなっていくのかが気になって気になって仕方がないです!! 本当に今回も最高でした…!! 家族愛がすごく感じられて優しい王妃様達だなと感激です(*´˘`*)♡ 頑張ってください(๑•̀ㅂ•…
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